第14転 仕事補佐実習生へ

ルルンが高等部に入って、いく週か流れた頃にその話しはやって来た。先生から今後を見据えて簡単な仕事をしてみないかと言う事だった。勿論仕事と言っても単独でこなすものではなくて補佐役実習生と言うものだ。

ルルンは特に将来を考えたことは無かったが先生に言われ自分の未来を少し想像してみると如何にこれまで自分がクルの事しか考えて来なかったのか痛感した。

毎日とはいかないがクルと会うとやっぱり好きなんだって気持ちと好きなだけじゃだめなんだって気持ちが日々増長してゆく。

クルの性格だからきっと一目惚れで即結婚何て有り得ないと思っていたが、数多い参加者の中にも1度だけではなく数度会うような方も増えてきたとジスから話しを聞いたルルンは内心で焦燥感を抑えきれずにいた。

そんな時に先生からの仕事補佐紹介だったのでルルンは迷うことなく参加を希望した。


「それじゃ受理しますので手続きは先生に任せていいわ それでは授業後技術室の方へ行ってね」


返事をして頷いたルルンはとにかくじっとしていられない気持ちが溢れていた。それはクルに対する気持ちと向き合いたいが故の葛藤ではあったがルルン自身は漠然とした思いとしか感じる事が出来なかった。


「失礼します」


技術室をノックして入ろうとするルルンは室内を見て思いの外、人数が多いと思った。

高等部上がりたてで面識もほとんどない人ばかりだったが数人ほど中等部で見かけた子が居たことに正直少しばかりホッとした。

ルルンの後からも数名教室に入り込んだ所で先生が


「全員揃ったようですね ではこれから仕事内容を説明させて頂きます」


生徒に資料を手配りして渡し終えた後で


「一つは治安維持のための犯罪抑圧に協力する依頼です もうひとつは少し遠出になりますが森林地帯の別荘で小型人狼の群れに襲われかけたとの報告があり調査と場合によっては掃討してほしいとの依頼です」


先生がそこまで説明すると新たに数名の先生が入室してきた。ルルンはその中にウィルフが居たので思わず二度見してしまった。


「どちらも熟練の引率者がいますから適度な緊張感で望んでくださいね」


ルルンは戦闘経験は授業でしか無いし前者の依頼にしようかなと思っていたところにウィルフが近寄り耳元で


「恋は戦いだぞ 女も強くなくちゃね」


先生が希望を取り終えると他の先生たちを見ながら


「うん人数振り分けも丁度良さげだしこれで決まりで良いでしょう それでは各自先生より良く説明を聞いておくように 私からは以上」


先生が言い終わると同時に皆がそれぞれの担当の所へと向かい真剣な眼差しで資料に目を通していた。

ルルンも資料を受け取り担当先生の名前を見て驚いた。

代表担当 ゼカ・ウィルフ


「おいレド・ルルンこっちこっち」


ウィルフの少し高めの声が良く通り聞こえる。近づくとウィルフが補佐実習生の前で説明を始めた。ルルンはチラリと隣で説明している筋肉質で屈強そうに見える先生を見て担当間違ってるんじゃないの?と思ったが、そうであれば明日にはあの先生が引率として来るだろうと思いながら説明を聞いた。


「いいか~先程の説明でも有ったように基本は調査だが場合によっては戦闘になると思われるから各自自分用の武器やアイテムが有れば必ず持参するようにね~」


私の武器って何だろうと思いながらウィルフを見ていたがウィルフは視線を合わせること無く淡々と説明を終わらせていった。


「では以上ね 質問が無ければ解散にします 明日は時間を忘れずにね」


室内からゾロゾロと会話しながら退出する生徒達。ルルンが考えている間にウィルフの前にはルルン一人だけが残っていた。


「ルルン 明日は可愛くない下着を履いてくるんだぞ」


「えっ?どうして?」


「そりゃ初めてのモンスターを目の前にお漏らししちゃったら台無しだからね」


そう言いながらニヤニヤと笑うウィルフ。


「ちょっ!だれがっ!」


そう言ったルルンのお尻をパンパンと叩いてウィルフは


「緊張しすぎないこと 柔らかいお尻が硬くなってるわよ」


ルルンはウィルフなりの激励なのかなと受け止めて笑顔で


「ありがとうウィルフ 明日はよろしくね」


「学院では先生と呼びなさいね」


微笑むウィルフに手を降り退出して帰宅するルルン。

再度資料を見てウィルフが呟く。


「小型人狼か…何事も無ければ良いのだが」







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