第13転 水の民ホース・ミルミル登場
「水の都ディナから参りました ホース・ミルミルと申します」
そう自己紹介をしてくれた彼女は大きな青い瞳に大きな胸、綺麗な青髪は肩に届く位で後ろに可愛く1本少量の髪を結んでいるように見える。座している為に全体的な服装は見えないが他の参加者に比べ、どちらかと言うと露出は少な目に見えた。
ケイメンが質問をしようとする前に静かにおっとりとした口調でミルミルは
「私も同じく瞑想させて頂きました こちらのお庭は大変気持ち良くて精神集中にとても適した所ですわね ケイメン様がこちらで瞑想を日々なさりますのが良く解る気が致しますわ」
そう言ってから目の前に出されているお茶を飲んで一息ついた後にミルミルは表情を少し変えて
「申し訳ありません いきなりケイメン様とお呼びしてしまいました」
「構いませんよ 様をつけられるような立派な人物でもないのでむしろ呼び捨てでも構いませんよ」
それを聞いたミルミルは大きな目を更に大きく開いて口に手を充てて
「失礼ながら驚きました 今までお会いした事のある名家の方々は呼び名にも大変こだわりを感じましたので」
「名家と仰られますが俺にしてみたら自分が生まれた家と言うだけで友人は勿論の事、周りにある家と何の違いを以て名家と呼ばれるのか実のところあまり理解してないんです 只、父の命に従いこうしてお見合いをしてクル家存続だけはしなければとの思いで望んではいますが 」
そう微笑みながら話すケイメンにミルミルはとても気持ちいい魔力を感じていた。そしてゆっくりと
「それでは本当にケイメンと呼んでも構いませんのですね?」
「もちろんです むしろそう呼ばれることがないので何だか不思議な気分ですよ」
微笑みながら話すケイメン。ミルミルも微笑みながら
「私の事はミルとお呼び下さい 水の都にいる友人も皆その様に呼んでくれます ケイメンにもそう呼ばれたいと思いましたわ」
ケイメンは一瞬躊躇しながらも
「ではそうさせてもらおうかなミル」
ニコリと笑うミルミルを見ながらお茶に手を伸ばした所へジスが近づき言った。
「ケイメン様 レド様とバンプ様が参られてますが如何なさいましょう 暫しお待ち頂きますか?」
ケイメンがお茶を一口飲み置いた所でミルミルが
「来客でしたら私はここらで…」
「あぁ 来客と言っても私の友人でミルさえ良ければ此処に通したいのだが」
ケイメンは恐らくミルは気を遣って帰るだろうと思っていたので返ってきた返答には少し驚いた。
「そう言う事で有れば私もケイメンの友人にお会いしてみたいですわ」
表情声色仕草どれをとっても図々しさや打算など感じさせない一言だった。
ケイメンはミルミルを見て微笑むとジスに視線を移して
「二人に事情説明して、それでも此処へ来るようであれば通してくれ」
「かしこまりましたケイメン様」
ジスが静かに走るような速さでその場を去りルルン達の前へ再び現れるとケイメンの状況と意思を伝えた。
「そうですか…どうしよっかバンプ」
はぁー?気になってるんでしょ?行きたいんだよなぁと言葉に出そうと思ったがルルンの心境を思うと言い出せないのも何となく解ってしまったので
「ほほう水の都からねぇ たまに見かけることあるよな あっちも会いたいって言ってるんだし折角だから行ってみるかー!行こうぜ!」
「どうぞこちらへ」
ジスの案内に付いていく二人だが行き先は庭樹苑だろうなと二人が思っていた。
程なくして庭樹苑に着いた二人は円卓に座る二人が目に入りジスに確認を取るかのように1度ジスを見つめた後、ケイメン達の座る円卓へと歩き始めた。ケイメンが二人に気づき立ち上がり少しばかり二人に歩みより
「良く来てくれたね 紹介するよ こちら水の都から来てくれたミルだ」
「あのケイメンその紹介だとお二人が戸惑うのではないかしら?」
ミルミルの言葉をケイメンは即座に理解して改めて紹介し直そうとしたが、それより先にミルミルが口を開いた。
「ケイメンのご親友とお聞きしました 私先程の紹介通り水の都から参りましたホース・ミルミルと申します 宜しくお願い致しますね」
ルルンもバンプも二人の呼び名に驚いたが会って間もないはずなのに全くそれを感じさせない二人の雰囲気に一番驚かされた。
それほどにミルミルは自然体に感じさせた。ケイメンもそれを感じ取ってるからこその対応なのだろう。
「初めましてレド・ルルンです 宜しくお願いします」
「俺はバンプ・ジンユです 気軽にジンって呼んでくださいね」
そう紹介するとミルミルはニッコリと笑うと
「えぇ わかりましたわジン 私の事もミルと呼んでくださいね」
ジンユはおぃおぃまじかよ初めて綺麗な流れに乗り込んじゃったよ!心の中で喜びよりも驚きの方が強かった。
ミルミルはルルンを見て笑顔で
「宜しければどうぞ私の事はミルと呼んでくださいね」
ルルンも普段なら抵抗感や驚きが強いのだろうが、やはりミルミルが出す雰囲気なのか不思議とすんなり受け入れる事ができた。
「ありがとう 私の事も名前で呼んで下さい」
そう笑顔で返すとすかさずミルミルが
「それでは宜しくねルル」
ルルンは両親以外にルルと呼ばれたことが無かったのでいざ呼ばれると何だか照れくさかったのだが悪い気は全くしなかった。
少しの談話がやり取りされた頃にはすっかり辺りも薄暗くなり庭園の外灯に明かりが点り始めた。
「楽しかったすっかり遅くなってしまったし送りの魔馬車を手配しよう」
そう言いジスへと視線を移すと軽く一礼してジスは足早に庭園を去った。
「私は歩いて帰るから平気だよ」
「あー俺もそうだなぁ」
ルルンとジンユがそう言うとケイメンが
「二人がそんな事言ってしまったらミルが乗って帰りづらくなるんじゃないかな?」
と笑いながら話すと二人が口を開くまえにミルミルが微笑みながら
「そうですよ皆さんでケイメンの好意に甘えましょう」
二人もその言葉で気持ちを変えた。
「じゃあそうしようぜ」
ジンユの言葉に頷き丁度庭園へと着いた魔馬車へと向かい始めた。
乗り際にミルミルが
「ケイメンの都合の合間で会えるときがあればまた来てもいいかしら?」
「もちろんだ 管理は任せっきりにしてあるから すぐに予定を組むことは出来ないのが残念だが」
「そのお気持ちを確認出来ただけで充分ですわ ではまた」
魔馬車はミルミルを乗せて走り去っていった。
「それじゃ私たちも帰るね」
「気を付けてまたな」
短く別れの挨拶をする二人の胸中はお互いに知る由も無かった。
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