第11転 学院にて

「おっはよー!」


ルルンがジンユの肩を叩いて挨拶をする。


「あぁレドか」


「どうしたのよ 朝から元気ないけど」


確かにジンユにしては珍しく落ち込んでいるかのような元気のなさだった。


「だってさレドは魔力変換しちゃうし今日で高等部行きかもだし俺は未だに自分の適性わからないしウィルちゃんの連絡先も聞きそびれるし 」


「一応魔通信交換しておいた方が良かったね」


そう話している背後から


「やっ おはよっ!」


ウィルフがいつの間にか現れて二人に挨拶をした。


「ウィ ウィルちゃぁぁぁん~」


駆け寄るジンユを見てウィルフは指先をジンユに向けて小さく詠唱した。


追突通風吹き飛ばせし風


ウィルフの指もとから巻き起こった風がジンユを直撃し数メートルほど吹き飛ばした。


「身の危険を感じたからな 正当防衛よね」


ルルンが吹き飛んだジンユを後ろ目で見た後でウィルフへ


「おはようウィルフ 私たちこれから学院なんだ 良かったら終わった後会わない?」


「ん 私もその学院に用が有っていくとこなのよね 二人の魔力を風越しに感じたからここまで来れたって訳」


いつの間にか起き上がりルルンの横に素早く移動したジンユは


「いやぁ~ウィルちゃんに俺の魔力を感じてもらえるだなんてうっれしいなぁぁ」


「さて 挨拶も済んだことだし学院へと案内を頼むわよルルン」


何事もなかったのように流すウィルフにジンユはクールなウィルちゃんもいいねっ!と言った。無論心の中でだ。


ペロペロ チュチュッいつも道理通過しようとしたところにケルペロチュがウィルフに向かって吠え始めた。


「ケー ケルルルルゥゥゥゥ」


ウィルフは特別慌てることもなく静かにその場でケルペロチュを見つめる。間もなくして学院内部から先生が走り込んできて


「エルフ王国からお越しのゼカ・ウィルフさんでしょうか?」


「そうよ 早いところケルペロチュたちに匂いを許可させて頂ける?」


「少し待ってくださいね」


先生は布を取り出すとウィルフに渡した。ウィルフは布に魔力を流し込み先生へと返した。その布をそっとケルペロチュの鼻先に差し出すといつもの可愛らしいケルペロチュに戻った。そしてウィルフの頬をペロペロと舐めた後、送り出すかのようにチュチュッと鳴いた。


「あーケルペロチュなりてぇぇぇ」


ジンユかポロっと呟くと


「また吹き飛ばされたいの?」


ははっ そう笑うジンユにウィルフは小さくため息をした。


「ではこちらへ」


先生がウィルフを別方向へと誘導した。


「ではまた後でな」


小さく手を上げてウィルフはその場を立ち去った。


「さて俺らも参りますか 麗しの中等部へ」


そんなバンプに、はいはいと言わんばかりの顔で二人は中等部へと向かう。ルルンはお見合いが始まってからクルがまともに学院へと通えないだろうと予想はしてたものの、やはり寂しい思いであった。


「先生!魔力変換できました!みてください!」


中等部にある魔力教室にてルルンが先生の前で変換行為を始めると先日のようにウィルフを基準とした変換に成功した。


「これは非常に素晴らしいですわね あなたその状態で属性魔法使えるかしら?変換からの応用ですわよ」


先生にそう言われてルルンは戸惑いながらもウィルフの言ってた言葉を思いだしながら魔法を想像した。


「えっと 吹き飛ばしたい風?」


次の瞬間ルルンの足元から竜巻状に暴風が巻き起こった。先生は即座に後退して魔力をぶつけ相殺してしまった。


「文句なしの合格です 明日からは高等部へ通ってくださいルルンさん」


「本当ですか!? やったぁぁぁ!」


素直に喜ぶルルンに先生は


「魔力操作の基礎がしっかりとしていたので変換成功してからは問題なく応用に成功でしたね おめでとう」


「ありがとうございます!先生の毎日の教えのお陰です!」


「手続きはしておきますのでもう上がって大丈夫ですよ 」


「はいっ!ありがとうございました!失礼します!」


そう言って笑顔で立ち去るルルンを優しい眼差しで見つめながら先生は


「あの子いつの間にエルフっぽくなったのかしらお化粧かしら」


一方でジンユ


「ぬぉぉぉぉらぁぁぁぁ」


気合いの込められた声が響き渡る。先生は黙って見つめているがこれといった変換は見られない。見かねて先生が


「そこまでだバンプ 気合いも気持ちも大事だが魔力操作が乱れているぞ 只魔力を増幅させればいいんじゃないぞ ゆっくりとイメージすることから始めなさい 今日はここまでとしよう」


毎日同じ所で足踏みして進めずに落ち込み、くそっ!と掌を拳で叩く。そして肩を落としながら教室を出たジンユの横にウィルフが壁に背を預けて立っていた。


「ウィ ウィルちゃん!?」


「どうした?私がそんなに珍しいか?それともエルフがまだ珍しいか?」


「いや そんなことないけど…」


小さくため息をついてウィルフは


「私が知ってるおバカちゃんはこのくらいの壁で落ち込むような器じゃないくらいのおバカちゃんだと思うぞ まぁ知り合って間もないから正直只のおバカちゃんかも知れないけどね」


ジンユは察しがいい ルルンよりもケイメンよりも。ウィルフのセリフが胸に入り込んだのを感じた。


「そのおバカちゃん幸せもんだね 頑張れって伝えておいてやるかな!」


それを聞いたウィルフはくるっとジンユに背を向けて少し振り返り笑顔を向けて手を上げながら立ち去っていった。ジンユは見えなくなるまでウィルフを見送った後で魔力操作イメージを描きながら学院門へとゆっくり向かった。門の外にいたルルンが


「あれバンプ良いことでもあった?魔力変換できちゃった!?」


「いーや相変わらずだけど頑張らなきゃって気持ち大事だなってね」


そう言い笑うジンユに笑顔で


「そりゃそうよ 只でさえ私達に遅れてるんだから早く追い付いてよね!」


「あったり前だ~そのうちまとめて追い越してバンプ様~教えてください~って言わせてやるぜ」


「それは楽しみね 私は明日から高等部だからね」


「うぐ!? ぬぉぉぉぉやる気でてきたぜぇぇぇ」


「あはは さっ クルの所に行こう!」










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る