第7転 庭園での友好

風が吹き抜け庭園の草木も落ち着きを取り戻した頃、ケイメンとルルンの間へ、半ば強引にウィルフが割って入った。もっとも二人の視線の間に割って入るだけの背丈はなかったから客観的には間に収まったとでも言うべきだろうか。


「あのゼカ…」


「ちょっ!水くさいじゃない もう私たち友達でしょ!ウィルフって呼んでね 私もルルンって呼ぶからね!」


あまりの移り身の早さにあんぐり口を開き呆気に取られる。すかさずジンユが


「そうそう友達になるのに期間なんて必要なもんじゃないからね!ウィルちゃん!」


ピキッ 一瞬眉間にシワを寄せたウィルフだったが


「そ、そうよね 中々良いこと言うじゃない! えっと…ポンプだったわね」


おい!絶対わざとだろ!っと突っ込みをこらえてジンユが


「あはは~上手いこと言っちゃって~ 俺はバンプ・ジンユだよ ウィルちゃんになら気軽にジンって呼ばれたいかも!?」


おちゃらけた態度で言った後にちらりとウィルフを見るとウィルフは笑顔で返した。


「ははっ 冗談面白い バンプは面白いわねっ!」


ゴーン 完全に流されてる。だがジンユはめげずに


「まぁ今すぐと言わず、仲が深まったら呼んでくれていいしねっ」


「そうね そんな奇跡が起こり得たならそうしましょっ」


と笑顔で返すとケイメンとルルンが同時に笑いだした。ジスは表情ひとつ変えずに見守っている。少しの間を置いてウィルフが


「先程は申し遅れましたクル様 私はゼカ・ウィルフです どうぞこれからよろしくお願いいたしますわ 」


おいおい、さっきまで兄の気持ちのためとかすぐ帰るだとか2度と会うことないとか言ってたじゃないか!とジンユは突っ込みを入れたかったが隣にいるルルンも同様の事を考え、言うべきか迷っていた。そんな迷いを中断させるかのようにケイメンが


「いつの間にそんなに打ち解けていたんだい? 乗り遅れた気持ちとはこのことだな」


そう言って軽く笑いこむケイメンを見てウィルフは引き込まれそうになる自分と戦っていた。

だいたい私のタイプではない…はずなんだけど何故こんなにドキドキするのだ?今までこんなことは一度とて無かった。これが恋と言うものなのか?いや私に限ってそんな簡単に…自問自答するウィルフだが納得する答えが出せず、ケイメンに向かい


「あのクル様 今日は私が最後のお見合いとお聞きしました クル様も疲れが有りますでしょうし後日またお会いしていただけませんか?」


ジンユはウィルフの発言と表情をみて、ほほうと一人納得しつつルルンに気づかれないようにルルンを盗み見る。嫌な顔をしてる訳でもなく笑顔でいる訳でもない。成り行きを見届けるしかない顔とでも言うべきか。


「二人と友達になったゼカさんならそのお人柄も知れます そうですねまたこうして楽しい時間をとれるなら喜んで」


「クル様ありがとうございます!私の事はウィルでもウィルちゃんとでも呼んでくださいね!」


おい!それ俺のネタじゃないか!しかも完全に本気で言ってるよね!ジンユは叫んだ。もちろん心の中でだ。

ルルンは展開の早さに付いていけないのか遠慮しているのか黙り込んでいる。

ケイメンは少し考えた後


「いきなりウィルと呼ぶのにはさすがに抵抗を感じてしまったのでウィルフと呼ばせてもらっていいかな?それと俺の事もケイメンでも構わないですから」


ルルンがそれを聞いて、えー!ちょっと待ってよ!と思った。それを待つわけないじゃんと言うかのような早さでウィルフは


「もちろんです!私も想像で呼んで見たのですが恥ずかしくて今すぐは無理そうなので今はクル様と呼ばせてもらいますねっ!」


ケイメンはせめて様付けはやめてくれとも思ったが、すぐに馴れて名前で呼ぶようになるだろうと考え、あえて言わなかった。小さくうなずいてジスに視線を送ると


「では皆様 本日はこれにて 只今御送りの魔馬車を用意致します」


ジスが言い終わるとウィルフがルルンとジンユを見てから


「少し話しながら帰りたいのでお気持ちだけ頂いておきます 今日はありがとうございました」


「かしこまりました よろしいでしょうか?ケイメン様」


軽く口角を上げ微笑むケイメンは


「また明日 気を付けてな」


短く言って3人を見送った。


庭園から正門に行く間にウィルフは一人ぶつぶつと言ってたが二人には聞き取れなかった。そして正門を出たところでルルンに向かって


「あなたさえよければ少し話さない?」






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