第4転 赤石と魔力変換
「え、ちょっと何がおきたの!?」
クル家の庭園の片隅でルルンを薄い光の膜が覆い隠した。それに気づいたのは共に庭園に向かってきたジスのみだった。
「えっ!?ちょっと!何々!なんなの!?」
光は完全にルルンを包み込むと吸収されたかのように消えた。まだ現状を理解しきれないルルンにジスが
「レド様いつの間にお着替えになられましたのでしょうか?」
言われてみてようやくハッと気づくルルン。あれこの服って…子供の頃によく着てた服に似てるような…どうなっているの?
「レド様そちらのお召し物は空間転移させたものでございますか?」
ルルンは首を横に振りジスに魔力操作は出来ても変換に成功したことはないことを告げた。ジスは表情ひとつ変えずに少し間を置いて
「憑依または変身といった魔力変換をなさったのではと推測致します」
ルルンは一瞬呆気にとられたが、すぐさま正気を取り戻し
「なんでこのタイミングなのよ 今まで変換なんて成功したことなかったのに」
本来であれば魔力変換ができるようになると言うのは成長の証であり、どんな能力であれ喜ばしいものである。だがルルンは目の前で今尚進行しているお見合いに気が気じゃなく素直に喜んではいられない状況だった。
ルルンは他に異常がないのか確かめるように自分の身体を手で払うかのようにさわった。
「うん 特に異常はないし服が変わっただけね ジスさん私クルがお見合い終わるの待ってていいかな?」
ジスは即答した
「もちろんですレド様」
少しホッとしたルルンは再びクルの方に視線を移した。あっ!こっちに向かって歩いてきてる。どうしよう…隠れる?いやいや私別に悪いことしてないし堂々としてて良いはずだよね。
そう思考していたルルンにクルが気づいた素振りで手を振りながら近づいてきた。隣には明らかに年上であろう女性と共に。
「やぁレド遊びに来てくれてたんだね」
ルルンは少し違和感を覚えながらも隣の女性が気になって仕方がなかったが
「うん クルと少し話せないかなって思って来ちゃったけど邪魔しちゃったかな」
そう言ったルルンを女性は見つめて少し口角が上がった。自己の敵ではないと判断した余裕なのか、それともスタイルでも比較したのか。クルはルルンをチラリと見た後で女性の方に振り返り
「今日はありがとうございました 楽しかったです それではお帰りの魔馬車を用意致しますね」
女性はえっ私?みたいな表情で
「お帰りになられるのはそちらのお嬢さんではなくて?私ですか?」
「はい 僕はこのあと幼なじみの中の幼なじみレドと約束がありますので」
女性は先程遊びに来てたんだねって言ってたじゃないと言質を取ろうと思ったが、ケイメンの表情を見てやめた。
「わかりました またお時間あるときに伺わせてもらいますね」
そう言って女性はジスに送られ魔馬車へと乗り込んで二人の前から消えていった。
二人は目を合わせると同時に吹き出すかのように笑いだした。なぜ笑ったのかは言わなくても解り合ってると二人は思っていたが言わずにはいられなかった。
「なーにがボクだよ!可愛い子ぶっちゃって~ それに幼なじみの中の幼なじみってなに?生まれて初めて聞いたわよ」
ルルンは笑い混じりで言った。クルも同じく笑いながら
「我ながら僕って言ったときはどうかと思ったんだけどルルンが笑い出さなかったお陰でやり過ごせたよ 幼なじみの中の幼なじみ…俺も初めて使ったぞ」
ケイメンも内心では、疲れてたのか、もしくはやり過ごすために咄嗟に出たのだろうと考えた。
すっかり魔力変換のことなど忘れクルと笑って過ごすルルンの胸元のペンダントが赤光を増しているかのようだった。
「明日の予定は…エルフですね」
お見合い調整官がジスに告げた。
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