第2転 お見合い前夜

「お迎えに参りました 明日から先代の意思と命によりケイメン様のお見合いを開始させて頂きます」


二人はキョトンとしたのも束の間すぐさまルルンが声を張り上げる


「ジスさん!何の冗談ですか!?今日はプーギンスフールじゃないですよ!」


表情ひとつ変えずに執事ジスは


「レド様どうぞ落ち着いて下さい 私ジスは仮に本日がプーギンスフールでありましてもこのようなことを冗談で申し上げません」


ケイメンはもちろんそんな言葉をジスから聞くまでもなく冗談ではないと理解していた。何故ならケイメンが知る限り、執事ことジス・ノマリが一度とてこのような冗談を言ったのを聞いたことがないからだ。だからといってケイメンも、はいそうですかと納得できるはずもなく


「ジスよ 父の…先代の命と言ったな、どのような命なのか説明してくれるな?」


そう落ち着いたような口調でジスに話すケイメンをルルンは心配な瞳で見つめる


「もちろんですケイメン様 私ジスは先代よりこのように命を受けました」


「もし我らが戻らぬ時はケイメンのことを頼む、そしてケイメンが高等部にて安定した実力を発揮するように育ったならばクル家当主として嫁を公募したのち、早急にケイメンの幸せとクル家の安泰を実現させるよう全ての権限を一任する」


それを聞いたケイメンは目をつむり少し首を下ろした。ルルンはその時間がとてつもなく長く感じ、心の中で悲痛な叫びをあげていた。言ってやってよクル!


「そんなことはできないって!今の当主はクルなんだから自分の命に従えって!」


そんな言葉を読み取ってくれたかのようにケイメンが切り出す。


「ジスよ現当主はこのケイメン、そして今の話しは俺としては時期尚早と考えるし俺の気持ちは考慮してもらえないのか?」


顔色ひとつ変えずに執事ジスは


「申し訳ありませんが、この命だけはたとえケイメン様が如何なる反対を起こしても投げ出すことができません。私にとって先代の命はそれだけ重く絶対なのです」


ルルンは二人のやり取りを見守ることしかできず、泣きそうになるのをこらえていた。

ケイメンは再び先程と同じ仕草をとった後ゆっくりと口を開いた。


「わかった先代に全権限を与えられているジスのやり方に従おう」


え!ぇぇぇぇ!!あまりの衝撃にルルンの顔が見たこともない位歪んでいる。それを横目にジスは


「承認頂きまして、このジス安心致しました。実はすでに魔界通信で公募を始めた所です」


さらにルルンの顔が歪みスライムのようになりかけている。


「レドすまない今日は先に帰ることにする。ジスよ俺は考え事をしながら帰りたいのでレドを送ってやってくれ」


顔色ひとつ変えずにジスは


「かしこまりました。ケイメン様」


歩いて立ち去るケイメンを見えなくなるまで見送った後ジスはルルンの元へ歩み寄る。もはや原型を留めてないルルンにジスは


「レド様お送り致します故、参りましょう」


返事がない、返事ができないほどのショックに落ち込んでいるルルンにさらにジスは顔色ひとつ変えずに言った


「レド様もお見合いに参加してみては如何ですか?」

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