海辺のホタル

中貝一

第1話

 僕の朝は、同じくらいの学生に比べて少し早い。

いつものようにまず、海に向かっているカーテンを開け、日の光を入れる。

起きてそのままの布団を綺麗に畳み、窓の外を見ながら伸びをして、

まだはっきりしない頭のまま階段を降りる。

仕事に出かける両親だろうか、一回のリビングにはもう明かりがついていた。

部屋に入って、二言三言朝の会話をしてから、僕は洗面所で顔を洗う。

リビングに戻る途中、仕度を済ませた両親に

「行ってらっしゃい」

と声をかけて、朝ご飯を食べるために台所に向かった。

今日の授業は何だったかと考え事をしながら、白ご飯をほおばっていると、

ふと数学の宿題をやっていないことに気づく。

まだ時間があるし大丈夫だろう、と悠長なことを考えるのは情けない話、いつものことである。


 人が少ないこの時間帯の海沿いを通る通学路が僕は好きだ。

この町は海沿いで少し入り組んだ所に位置し、島が多くある、そのせいか波はいつも凪いでいる。

僕の人生、人生というにはそう長くはないがこの17年間、特に僕の人生は大きな波風はたっていない。

何か上げるとすれば、そうだなあ、この町に引っ越してきたことぐらいだろうか。

この海を見るとまるで僕と同じようなものを見ているようで心が落ち着く。

恋なんてものはどんな波音がするのだろうか。

なんて考えながら、海を横目に学校へ向かった。

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海辺のホタル 中貝一 @nishimazyo

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