第4話 ラッキーカラーはピンク

『みはるくん』の言葉を引き継いで、冷蔵庫の『ユア・セクレタリー』がいささかムッとしたように慇懃に応じる。

さらに、『みはるくん』の「病院で診察」という言葉を受けて、冷蔵庫はさらに続けた。


「マダム・ガミーヌ様、今日は病院にいらっしゃるのですネ。

天気は晴れ。本日の最高気温は18度との予報が出ていまス。

クロウリーハナコの星占いによればマダム・ガミーヌ様の『今日のラッキーカラー』はピンク。

以上の情報を『ラグジュアリークローゼット』に送りましタ。お支度の際のご参考にどうゾ」


うぃーんん。


マダム・ガミーヌの寝室で全自動型の自立思考クローゼット、『ラグジュアリーワン』が起動を始めた。


ぴーっ、ぴーっ。


一方、電子レンジもじれったそうにアラート音を出しはじめた。

マダム・ガミーヌが朝食に飲もうとしていたホットミルクはとうに出来上がっていたのだ。

電子レンジにとっては、今朝ミルクを温めてからこれで5回目のアラートになる。


「マダム・ガミーヌ様ミルクが冷めてしまいましタ。温度を設定し直してもう一度温めなおしてくださイ。」


すると、「温度」という言葉に反応した『みはるくん』がバングルをチカチカさせてマダム・ガミーヌの体温を測った。


「体温は36.3度です。平熱ですが、脈拍と脳波に異常がみられまス。早急に病院で治療することをお勧めしまス。」


しかし呑気な電子レンジはホットミルクのことしか頭にない。


「了解しましタ。36.3度ですネ。お飲み物を温め直しまス。」


待つこと40数秒。


チーン。


温め直されたホットミルクの温度はきっちり36.3度。ややぬるめの、そう、たったいま床で青ざめて気を失っている家主の体温と同じ温度。

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