第2話 そして、彼らは動き出す。

一瞬の静寂ののち、まず声をあげたのは掃除機だった。


「床にゴミを発見。直ちに除去しまス」


部屋の異変に一番に気がついた『パワフルジョーズ』は、勝ち誇ったように宣言すると、待機していたダイニングの隅で轟音をたてて床の掃除を始めた。


『パワフルジョーズ』、この最新式の全自動掃除機は、マダム・ガミーヌの周辺に散乱した生ゴミをかたっぱしからアームでかき集てゆく。

最新式の全自動掃除機の機能はそれだけではない、掃除をしたあとは速乾性のワックスを塗布、床をピカピカに磨き上げてゆくのだ。


ついで、マダム・ガミーヌの言葉を捉えてキッチンから冷蔵庫のあたりから声が聞こえた。


「ミズ・コレリック様をお呼びですカ?

ミズ・コレリック様は現在旅行に出かけていらっしゃいまス。

行先は火星でございまス。

おかえりになるのは来週の水曜日ですが、すぐに連絡を取りますカ?」


マダム・ガミーヌがいたく気に入っているキッチンの冷蔵庫には、最新型のインテリジェンス管理システム、『ユア・セクレタリー』が組み込まれている。

食品会社から送られてくる冷蔵庫内の食品の消費期限から住人のスケジュールまで、ありとあらゆる生活のあれこれを一括管理してくれる優れものだ。

ちなみにこの冷蔵庫にはテレビ電話機能もついている。


マダム・ガミーヌの腕にはめたアクティビティーメーター内蔵のバングルがチカチカと光り、ようやく主人の異常に気がついた『みはるくん』が作動して忠告した。


「マダム・ガミーヌ様、体調に異変が起きているようでス。直ちに『健康診断』を開始しまス。」

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