休暇編12話 悪魔の拳と豊満おっぱい
ガーデンでの用事を全て済ませたオレと三人娘は旅支度を開始する。
予定通りいけば一ヶ月近くガーデンを空けるコトになるな。……頼むから、今度こそ予定通りにいってくれよ。
「トランクスはこれと、これかな? 数は少なくてもいいわよね。照京でオリエンタルなトランクスを買う予定なんだし。」
……リリスは当たり前みたいにオレの下着を選んでやがるな。おい待て、なにしてんだ!
「なんでトランクスを被るんだよ!ナイトキャップじゃねえんだぞ!」
「作業帽を持ってないんだから仕方がないでしょ? 三人分の旅支度ってなかなか大変なのよ?」
「三人分?」
オレとリリスの分はわかるんだが……
「ナツメの分もあるから。」
「なにゆえナツメの分まで……」
「家事全般がバツ技能なんて業を背負って生まれてきたナツメも不幸な女よね。」
「にゃ? 呼んだ?」
壁の穴からず~りずり這ってくる芋虫娘。だが、とにかく、とりあえず、ツッコませろ!
「なんでナツメまでオレのパンツを被ってるんだよ!」
「そうよ!それは私のよ!」
違う!絶対に違う!
「にゃイトキャップの代わりなの……」
パンツの足の穴から飛び出すネコ耳に、不覚にもオレはときめいてしまった。
……ハッ!……い、いかん!気を取り直してお説教しないと!
「可愛いければ全てが免罪されるだなんて思うなよ!」
「そうよ!それが許されるのは私だけなんだからね!」
それも違う!話をややこしくするんじゃない!
「だいじょぶ。ちゃんと洗って返すから。」
「洗ってねえパンツなのかよ!」
「ナツメ!痴女キャラまでパクるつもり!?」
痴女キャラとか言うなよ、10歳児!そんなだからオレがロリコン扱いされんだよ!
「……隊長、これはどういう状況なのか……説明してくださいますよね?」
いつの間に現れたのやら……拳をゴキゴキ鳴らすシオンさんの姿に、オレは戦慄した。
「待ってください、シオンさん。とりあえず落ち着いて話をしませんか?」
「……私は落ち着いてます。」
「ではなぜ前傾姿勢なんでしょう?」
「隙があるからこうなる、という事例を提示する為です!やあっ!」
綺麗にタックルを食らってベッドに押し倒されたオレは、シオンさんに駄々っ子パンチの連打をもらう。
「もうもう!どうして隊長はそんななんですか!」
ポカポカとオレの胸板を叩きながら苦言を呈するシオンさん。その流れに元凶二人までノってきた。
「そうよそうよ!」 「そうなのそうなの!」
「三人がかりでポカポカ殴るなぁ!オレはサンドバッグじゃねえ!そもそもオレがなにをした!」
むしろオレはイタズラネコ2匹の被害者じゃないのか?
いや、ここで正論なんて何の役にも立たない!とにかくマウントをとってるシオンさんを懐柔しないと!
「シオンさんにプレゼントがあります!」
「私にプレゼント……ですか?」
よし!ポカポカラッシュは止まったぞ!
「はい!ですが今、手元にはありません!リグリットにあるんです!」
「私に……なにを贈ってくれるんですか?」
「シオン、タダの言い逃れよ!」 「カナタ得意の口から出任せなの!」
「あっ!た、隊長!」
上半身を起こしたオレはシオンの両脇を掴んで体から降ろした。シオンの体が軽く感じるのは適合率が上がったせいだな。ガーデンに来た頃に比べればパワーも随分上がったぜ。
「それが珍しく出任せじゃないんだな。そろそろ迎えのヘリが来る。旅支度を済ませよう。」
リグリットに用意したプレゼントを気に入ってくれればいいんだけどな。
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三人娘と一緒のヘリの旅は快適だった。なんでだか知らないが、パイロットとコパイロットはえらく緊張していたが。
御堂グループ本社ビルの屋上に着地したパイロットは大きく息を吐いて胸を撫で下ろす。
「……よかった。無事にリグリットに着いたぞ。女房子供にまた会えるんだ。」
「やりましたね、機長!」
パイロットとコパイロットは肩を寄せ合って感動してる。なんだってんだよ、いったい!
「なにか危険があったのか? 敵襲の情報を掴んでいたとか?」
だとしたらオレ達にまで隠すなよ。危険な旅だってんなら、心構えがあんだからさ。
「少尉の行くところトラブルあり。御堂グループの人間ならそのぐらい知ってるわよ。」
「カナタはヘリを落とした前科もあるの。」
……そういうコトかい。
「ふふっ。隊長、ホテルに荷物を置いたら軽く飲みに行きませんか?」
「いいね。海鮮居酒屋のいい店を知ってるんだ。」
「それは楽しみです。トラブルが怖い小娘二人はホテルに置いて、二人っきりで出掛けましょう。」
「怖いなんて言ってないの!」 「私も行くからね!」
はいはい、わかってますよ。みんなで出掛けましょ。
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戦役の報奨金で懐が暖かいオレ達のお宿は、司令の所有するシャングリラホテルだ。
ここに泊まるのは将校カリキュラムの時以来なんだけど、随分時間が経ったような気がするぞ。
考えてみれば、あれから色々あったからなあ……
「少尉、出掛けるわよ。」
おっと、レディを待たせちゃいけねえな。
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地下鉄の入り口ではデジペーパーの号外が配られていた。
「号外!号外です!軍神の娘が将官に昇進されました!詳しい記事はここでダウンロード出来ま~す!」
インターネットの普及した元の世界でも号外の価値は下落してたけど、この世界でもそうらしいな。
なのに駅前でわざわざ配布するのは、気分というか、名残なんだろう。
テーブルの上に置かれたフリーポータルから記事をハンディコムにダウンロードしてみる。
任命式に臨む司令の動画を眺めながら、記事の詳細に目を通す。
「満を持して、って感じなんでしょうね、イスカの昇進は。大衆受けする見事な千両役者振りだわ。」
一瞬で記事を速読したリリスが退屈そうに呟いた。
「大衆は英雄の出現を心待ちにしているものなの。……自分は何もしなくていいから。」
ナツメの言葉は辛辣だ。でも一面の真実だとオレも思う。
「そうなのかもな。自分の抱えている問題を全て解決してくれるスーパーマンに全てを委ねるほど楽な生き方はない。」
目的の店は駅前から少し歩いた裏手通りにある。オレは少し煤けた店構えが懐かしい海鮮居酒屋「海神」の暖簾をくぐった。
「隊長、お酒は楽しい気分で飲みましょう。私が注いで差し上げますから。」
「シオン、少尉にお酌するのは私だって言ったでしょ!」
「カナタは私がお酌する瞬間を待ちわびてるに決まってるの!」
……とりあえず仲良く飲もうよ。
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三人娘に代わる代わるお酌をしてもらって美味い酒を飲んだオレは、ホテルのスーペリアでぐっすり眠り、気持ちのいい朝を迎えた。
今日は結構予定が詰まってる。オレはフロントに電話してタクシーを手配する。
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三人娘とタクシーで向かった先はペンデュラム社のオフィス、ここが最初の目的地だ。
打ち合わせ室ではモモチさんが待っていてくれた。笑顔で握手を交わして席に座る。
「天掛少尉は戦役でもご活躍だったようで、我が社としても鼻が高いですよ。おっと、そちらのお嬢様方とは初顔合わせでしたね。私は百道竹臣と申します。お見知りおきを。」
銀の名刺入れから手際よく名刺を取り出し、両手で三人娘に名刺を配るモモチさん。さっそく営業活動開始ですか。
……あれ?
「モモチさん、課長補佐から課長に昇進されたんですね。」
「ありがとうございます。お世辞ではなく天掛少尉のお陰ですよ。そうそう、頼まれていた物は仕上がっています。」
モモチさんはソファーに置いてあったジュラルミンケースをテーブルに置き、開いて見せてくれた。
ケースの中には中世のガントレットのような排撃拳が二つ、収納されている。
「これは!私にですか!」
「はい。天掛少尉から依頼されて製作してみました。シオン・イグナチェフ少尉専用兵装「ジヤヴォール・クラーク」でございます。」
「
「今日付で少尉だよ。はい、司令から預かった階級章。」
「新しい階級章は隊長の手で付けてください。」
オッケー、お安い御用ですよ。オレがシオンの胸の階級章に手を伸ばした時に、肘を強く押された。
勢いのついた手は、シオンさんの豊満おっぱいを鷲掴みしてしまう。
「………」
「こ、これは不可抗力です!いや、人災なんです!」
あれ!? なんで指がワキワキ動いてるの? おかしいぞ!そんなつもりはなかったのに!
ナツメさん、笑わない!貴方の悪戯でこんなコトになってるんですよ!
「……さっそく「悪魔の拳」の威力を試してみますね!」
「待って待って!火薬パンチは洒落にならねえって!」
「だったら胸から手を離してくだ……あぁん♡ もう!隊長のエッチ!お仕置きです!!」
マグナムスチールの拳で張り倒されたオレは無様に床に這いつくばる羽目になった。
「天掛少尉、幸せですか?」
モモチさん、そんな目でオレを見ないでもらえます?
でもシオンさんの豊満おっぱいの感触は素晴らしかったです。今日は手を洗いません!
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