教えて、リリス先生! その弐



猫 「こニャニャちわ!教えてリリス先生の第二回を始めるのニャ!」


リ 「あら、二回目があったのね。仕事とはいえ、本当に面倒くさいわね。」


猫 「やる気の欠片もないお言葉、頂きましたのニャ。さすが怠惰は美徳と言い切る先生なのニャ!」


リ 「怠惰ってそんなに悪い事かしら? しんどくて毎日が辛ければ、仕事を辞めればいいのよ。過労死する前にね。努力を否定はしないけど、人間は頑張り過ぎない程度に頑張ればいい。人生は楽しんだ者勝ちなんだから。家族や自分の為に頑張るのはいい事だけど、程度はあるでしょ。」


猫 「そして暴言へのコンボも頂きましたのニャ!極論だけどボクもそう思うのニャ。」


リ 「グリムも猫だけに怠惰が美徳なの?」


猫 「他の猫は知らないけど、ボクはゴロゴロしてるのが好きなのニャ。」


リ 「じゃあ特別に膝を貸してあげるからゴロゴロしてなさい。」


猫 「やったのニャ!ゴロゴロニャ~ンなのニャ!」




猫 「ハッ!ボ、ボクはなにをやってるのニャ!お仕事を忘れるところだったのニャ!」


リ 「思い出しちゃったのね、このクソ猫が……」


猫 「そのお顔は確信犯なのニャ!油断も隙もないのニャ!と、とにかくお題にいくのニャ!」




※惑星テラの地理について


リ 「地球そっくり、以上。」


猫 「待ってなのニャ!解説になってないのニャ!」


リ 「はいはい。ちゃんと解説すればいいんでしょ。惑星テラの地形や大陸分布は地球に酷似してるわ。大陸分布もよく似てる。地球と違うのは中心領域インナーサイド化外アウトサイドに分かれてるって事かしら。」


猫 「化外?」


リ 「少尉が落っことされた魔女の森みたいなトコよ。BC兵器の影響で強烈な酸性雨や、有毒の霧が発生し、変異しちゃった危険生物がウロつく人外魔境。化外全域が魔女の森ほど危険な訳じゃないけど、同レベルの危険度のエリアもある。人間が生きるには過酷すぎる場所ね。風の谷をイメージするといいわ、巨大昆虫はいないけど。」


猫 「メーヴェが飛んでそうなトコなのニャ。でもBC兵器が原因なら、人間の自業自得なのニャ!」


リ 「その通りね。まさに愚か極まれり。化外に住んでるのは、故郷を捨てる事が出来なかった人達か、中心領域を追われた人達よ。政治犯、脱走兵、もちろん、ただの犯罪者もいる。」


猫 「アスラ部隊のカーチスさんも化外出身だって聞いたのニャ!」


リ 「そうみたいね。地球では北米大陸と南米大陸にあたる場所は化外の真っ只中で、カーチスの故郷、アトラス共和国は北米大陸にあるから。んで、カーチスは化外の集落が合同で結成した自警団のリーダーだったんだって。優秀だったらしいけど、戦傷が原因で疫病に罹っちゃって四肢を失い、サイボーグになった。」


猫 「あのカーチスさんにそんな過去があったのニャ……」


リ 「噂を聞いたイスカにスカウトされて、故郷への支援と引き換えにアスラ部隊にやってきたって事らしいわ。」


猫 「男前なのニャ!」


リ 「普段は陽気でおバカなリーゼントだけどね。ま、人に歴史ありって事なんでしょうよ。」




※社会情勢について


猫 「惑星テラの社会情勢ってどうなってるのニャ?」


リ 「特権階級が好き放題やってる、以上。」


猫 「先生はざっくりばっさりすぎなのニャ!」


リ 「そこまで言うなら解説してあげるわ。でも長いわよ?」


猫 「ドンとこいなのニャ!」


リ 「まず、国家形成についてだけど、国土と都市が集まった国家という概念はもうないわ。惑星テラでの国家とは都市国家の事を指すの。汚染され、荒廃した領域が増えすぎて、荒野には無法者がたむろしてるから、街ごとで自治が行われてる。複数の都市で複合体を形成してた時期もあったみたいだけど、じきに各々が勝手な事を言い出して、統制が取れなくなった。んで、都市ごとに独立するという現在の情勢に落ち着いた、と。日本で例えれば東京共和国とか大阪公国とかがあるって思えばいいわ。」


猫 「猫にはワガママってイメージがあるけど、人間には負けるのニャ!」


リ 「その意見には反論出来ないわねえ。都市国家には、大まかに言って3種の人種がいる。特権階級と一般市民と不法移民とよ。一般的には特権階級はA級市民、一般市民はB級、C級市民、不法移民はD級市民と呼ばれているわね。」


猫 「士農工商みたいなものかニャ?」


リ 「職業で分類されてる訳じゃないけど、そんな感じよ。ま、士農工商の実体は最下層のはずの商人が、豪商になって武士とつるんだり、金を貸して脅かしてたりしてたけどね。」


猫 「御奉行様と大黒屋は悪事を働いてナンボなのニャ!」


リ 「どんな時代も金と権力を持ってる奴が強いのよねえ。ちなみに特権階級であるA級市民にも2種類あるの。それがエターナルパスとオーナーパス。」


猫 「どう違うのニャ?」


リ 「オーナーパスは一代限り、能力や功績が認められた人間に与えられる。エターナルパスは世襲制、生まれた時点で与えられる。」


猫 「どんなボンクラにも与えられるのニャ?」


リ 「与えられるわね。ちなみにアスラ部隊では隊長になればオーナーパスが与えられるわ。イスカは言うまでもなくエターナルパスを持ってるけど。」


猫 「司令は名家の出の上に同盟創設者の娘だもんニャ。」


リ 「アスラ元帥は機構軍を倒してから身分制度の撤廃を目指していたらしいけどね。でも甘美な果実よ、特権階級って。税制面でも優遇されてるから蓄財に励めるし、D級市民を殺しても罰金刑で済んじゃったりするし。」


猫 「それ、江戸時代の斬り捨てソーリーなのニャ!」


リ 「斬り捨て御免は無礼打ち。町人が武士に無礼を働かないと成立しない。現状はそれ以下ね。」


猫 「最悪なのニャ!」


リ 「不法移民を殺しても罰金刑なんて制度は、同盟領では禁止されてるわ。アスラ元帥の功績でね。でも機構側の特権階級は制度を廃止したせいで、同盟領の方が犯罪者が多いって喧伝してるみたいね。」


猫 「ニャるほど。物は言い様、でも勝手な言い草なのニャ!」


リ 「ま、賢いA級市民は無闇に人を殺したりしないんだけど。D級市民にはヤバイのもいるから。お義父様みたいなね。」


猫 「お義父様って誰なのニャ?」


リ 「風美光明に決まってんでしょ!少尉のパパは私の義父!」


猫 「カナタパパは容赦しない人だけど、まだ先生の義父じゃニャい……」


リ 「シャラップ!もう私が決めたから決定よ!」


猫 「……(光明さんもとんでもない娘が出来ちゃったものだニャ。)」


リ 「あと、照京みたいな巨大都市国家には、衛星都市コロニーシティって呼ばれる従属都市群が周囲にあるのが一般的。保護料を支払う代わりに街を守ってもらうって建前だけど、大抵はただ搾取されてるだけ。」


猫 「どんだけ腐ってるのニャ!無茶苦茶すぎなのニャ!」


リ 「政治制度は都市国家によって様々よ。市長だったり大統領だったり、国王だったり。」


猫 「国王はともかく、市長や大統領なら選挙はあるのニャ。安心したのニャ!」


リ 「世襲の市長や大統領もいるけど?」


猫 「それ国王と変わんないのニャ!民主主義はどこにいったのニャ!」


リ 「ダストシュートにポイされたんじゃない? リグリットの市長は一応選挙で決めてるみたいだけど。もちろん、選挙権があるのは高額納税者であるB級市民以上に限られてるけどね。」


猫 「それ、選挙って言えるのかニャ?」


リ 「言えるんじゃない? 日本の選挙もCDをまとめ買いして投票するんじゃなかったっけ?」


猫 「それはアイドルの選挙なのニャ!みんながまとめ買いをしてる訳じゃないし、まとめ買いする人も好きでやってるんだから、文句を言われる筋合いじゃないのニャ!」


リ 「それはそうね。むしろいい事だわ。」


猫 「いい事かニャ?」


リ 「経済活動は活発になるでしょ。日本はデフレで苦しんでるんだから。私の私見だけど、趣味に使うお金なんてものは、その趣味を持たない人間にとっては全て無駄金なのよ。でもその趣味の人間には払った額以上の価値がある、だから成立してるのよ。」


猫 「ニャニャ?」


リ 「例えばゴルフが趣味で、いいクラブを持ってるのに、また新しいクラブを買うアマチュアゴルファーがいる。登山が趣味のアマチュア登山家はどう思うかしら?」


猫 「もういいクラブ持ってんじゃん、と言うかもしれないのニャ。」


リ 「その登山家は遠くまで旅行に行って、入山料を払って危険もある雪山に登った。ゴルファーはどう思うかしら?」


猫 「お金を払ってわざわざ危険な山に登るのかい?って言うかもしれないニャ。」


リ 「かようにその趣味を持たない人間には、他人様のやる事が無駄金に見えたりするものよ。」


猫 「そんな了見のせまい人は滅多にいないのニャ!先生の言う事は極論すぎなのニャ!」


リ 「作者の知り合いは愛車のホイールに40万円遣ってお嫁さんと喧嘩になったらしいわよ?」


猫 「家計を圧迫すれば喧嘩にもなるのニャ!それは違う話なのニャ!」


リ 「盛大に話が逸れたところでお開きにしましょうか。」


猫 「読者の皆様、次回のこのコーナーのお時間まで、バイバイなのニャ!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る