兵団編14話 最後の兵団
頬を叩く小さな小さな手によってボクは目覚める。
「………おはよう、タッシェ。」
世界最小のボクのトモダチにおはようの挨拶をすると、純白の毛皮を纏ったトモダチは尻尾を振って答えてくれる。
昨日の稽古の疲労がまだ残っているんだろう、全身が気怠い。今までまともに運動なんてした事がないのだから無理もないか。
手に巻かれた包帯を外し、傷を確認。うん、もうほとんど治ってる。
ボクだって五世代型のバイオメタル、少々の傷なら一晩で治るよね。
まずはシャワー、それからジョギングして腹ごしらえをしよう。準備が出来たらお仕事開始だ。
走り込みの為に、ボクはパジャマからジャージに着がえる。
走力を鍛えるのは超大事、危険が迫れば仲間のところまで逃げればいいんだもんね。
剣術うんぬんは逃げられない時の話だ。
ランニングを終えてシャワーを浴び直し、ドレスに着替えたボクは、タッシェを肩に乗せて公館の食堂で朝食を食べる。
運動したおかげか、いつもより朝ごはんが美味しく感じられる。
タッシェも好物のドライフルーツを食べてご満悦、特にスモモがお気に入りみたいだ。
今度からポケットに忍ばせておこうっと。
「美味しい?」
「キキッ♪(最高なの♪)」
楽しい食事を済ませた後はオフィスワークの時間だ。さあ、今日も一日頑張るぞ!
執務室ではクリフォードがもう仕事を始めていた。
スペック社との提携の実務を任せたから、目が回るほど忙しい筈だ。
「おはようございます、ローゼ様。」
「おはよ。スペック社との提携の実務作業は捗ってる?」
「多岐にわたる項目の半分程度は。昼からスペック社の人間と実務者協議を開催する予定です。詰めの作業は協議を終えてからですな。」
「そう。そちらは任せました。ボクは兵団の資料に目を通します。顔と名前だけしか知らない人がいますから。」
「ハッ、こちらはお任せを。」
ボクはパソコンのスイッチを入れ、アマラさんに届けてもらったメモリーチップをスロットに差し込む。
暗証番号と指紋、網膜のチェックをパスし、最後の兵団のデータを立ち上げて目を通す。
………ラストレギオン、最後の兵団。朧月セツナ大佐が立ち上げた機構軍最強の連隊。
兵団の前に兵団はなく、兵団の後にも兵団はいない、それは事実なのだから決して誇張ではない。
当面は手を組む相手の事を知っておくのは当然、全てのデータを
ラストレギオン第1番隊「月光」
部隊長は「煉獄」の異名を持つ
副長は一六九六? にのまえむくろ、って呼ぶんだね。覇国には難しい名前が多いなぁ。
その多大な戦果は兵士達の伝説になりつつある機構軍最強の大隊、か。
輝かしい戦歴は後でチェックしておこう。
ラストレギオン第2番隊「月影」
部隊長は
副長が妹の
常に一番隊に付き添う影のような部隊。
ほとんどの作戦を月光と共にし、月光と月影の隊員は、朧京から付き従ってきた精鋭達だ。
月のエンブレムを掲げる1番隊と2番隊は、両軍からゲッコーパフォーマンスと呼ばれ、畏怖されている。
ラストレギオン第3番隊「テラーサーカス」
部隊長は「魔術師」ことアルハンブラ・ガルシアパーラ大尉。乗艦は「マッドクラウン」
陽動作戦を得意とする工作部隊。だけどまともに戦っても強く、並の部隊が束になろうと歯が立たない。
アルハンブラさんは軍に入る前はサーカス団の魔術師だったって話だけど、ホントかなぁ?
ラストレギオン第4番隊「ヘルホーンズ」
部隊長は「狂犬」マードック。乗艦は「ワルプルギス」
副長はあのヘンタ……「天才」ユエルンさんか。機構軍の全刑務所から選抜された凶悪な囚人で構成されるレギオン1の問題部隊。
強さと素行の悪さは折り紙付き、みたいだ。
アスラ部隊の4番隊「羅候」とは、いい意味でも悪い意味でもライバルかぁ。
ラストレギオン第5番隊「
部隊長は「鉄拳」
バクスウ老師は兵団の重鎮にして相談役。
拳法家で構成された武烈は重要局面でいぶし銀の働きを見せ、兵団を陰から支えている。
バクスウ老師とは一度お会いしたけど、まさにご意見番って感じだったな。
ラストレギオン第6番隊「オグルエッジ」
部隊長は
「戦鬼」リットク、または「鬼」のリットクと畏怖される凄腕の剣客で、居合の速さは世界一だと言われている。
なんでも鬼哭流という古流剣術を極めている達人なんだとか。
ラストレギオン第7番隊「ブラックジャッカル」
部隊長はバルアミー・バーネス大尉。乗艦は「ベルセルク」
名前を縮めてバルバネスと呼ばれている。異名は「蛮人」。
隊名はブラックジャックと掛けているのかな?
悪名の高さは四番隊と双璧らしいけど、ただただ乱暴な四番隊と違って狡猾でもあるらしい。要注意だ。
ラストレギオン第8番隊「バンパイアバット」
部隊長は「不死身」のザハト。乗艦は「ノスフェラトゥ」
曲者揃いのレギオンでも一番謎の部隊だ。
ザハトはローティーンの少年らしいんだけど、そんな小さな子供が軍人ってだけでも変なのに、階級も持たず、素性もわからない。
素性がわからないならトーマ少佐もなんだけど、噂ではザハトは過去に3回、
噂が本当ならまさに不死身なんだけど………そんな事ってあるんだろうか?
ラストレギオン第9番隊「スネグーラチカ」
部隊長は「純白」のオリガ。オリガ・カミンスカヤ大尉。乗艦は「ニブルへイム」
射撃が主体の支援部隊なんだけど、
あのオリガさんが隊長なんだから事実かもしれない。
冷酷さと射撃精度は兵団一、今はそう捉えておこう。
客員部隊として加わっているクエスターとアシェスは、よく知ってるから頭に入れる必要はない。
そうだ。兵団の好敵手、カナタのいるアスラ
アスラ部隊第0番隊「インフィニティ」
部隊長は「女帝」
0を二つ並べて00、これで∞を見立てているみたい。
滅多に戦場には現れないけど、参戦したほぼ全ての戦いで完勝を収めたアスラコマンドの指揮大隊だ。
ほぼ、なのはロウゲツ大佐の率いる月光とだけは引き分けたから。
インフィニティは月光に匹敵する超精鋭なのは間違いない。
アスラ部隊第1番隊「クリスタルウィドウ」
部隊長は「緋眼」の
「緋眼」のマリカさんはカナタの上官で、写真で見てもため息が出ちゃうほどの美人………
同盟のエースである彼女が率いる水晶の蜘蛛は同盟軍のエース部隊。カナタがいる部隊だもん、当然か。
アスラ部隊第2番隊「凜誠」
部隊長は「雷霆」
「
落ち着きのある人格者で、機構軍にも尊敬する者がいるんだとか。
一度戦ったアシェスが「敵にするには惜しい使い手。尊敬出来る敵手です。」って言ってたから本物に違いない。
アスラ部隊第3番隊「獅子神楽」
部隊長は「獅子髪」
ミブ大尉の友人で鬼道院流豪槍術を極めた男、それが獅子髪バクラ。
歌舞伎役者みたいに派手な出で立ちで、派手な戦果をあげる傾き者。
アスラ部隊の中核を担う攻撃部隊が獅子神楽だ。
アスラ部隊第4番隊「羅候」
部隊長は「人斬り」
人斬りトゼンの恐ろしさは実際に目にしたからよくわかる。
今でも夢に出てきてうなされるぐらいなんだから!
人をゴミみたいに斬り殺すあの姿はまさに人蛇、そして4番隊はみんなそんな人達らしい。
戦場で出会いたくない部隊ナンバー1だ。
アスラ部隊第5番隊「鉄心」
部隊長は「豪拳」
イッカク大尉はバクスウ老師と何度も名勝負を演じた武道家で、その部下達も門下の武道家だ。
剛と柔の違いはあれど、武烈に匹敵する部隊だって考えないといけない。
アスラ部隊第6番隊「ヘッジホッグ」
部隊長は「鉄腕」スコット・カーチス大尉。乗艦は「タラスク」
アスラ部隊最高の支援砲撃部隊で重砲火力なら同盟一の火力と精度を誇るんだとか。
アスラ部隊第7番隊「クピードー」
部隊長は「流星」トッド・ランサム大尉。乗艦は「サジタリウス」
軽射撃が得意な部隊らしいけど、なんでもこなせる器用さでスーパーサブの役割もこなしてる。
陽動、撹乱、奇襲に援護、こんな部隊が味方にいたら便利だよねえ。
アスラ部隊第8番隊「スレッジハマー」
部隊長は「壊し屋」アビゲイル・ターナー大尉。乗艦は「ジャガーノート」
アスラコマンドきっての壊し屋部隊。
部隊長のターナー大尉は一人で100両以上の戦車を破壊したって話だ。
スレッジハマーは
………これが機構軍と同盟軍の最強部隊の大まかな陣容。この他にも「剣狼」カナタをはじめ、双方に
数も大事なんだけど、精鋭を揃えれば一個連隊で、これだけの戦果を上げられるんだ。驚嘆するしかない……
………感心してる場合じゃない。ボクはこの人達と同じ舞台で戦おうとしてるんだから!
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