争奪編5話 雪兎の再会
昨日は帰還間なしで慌ただしい一日だった。今日は夜の重大イベントまでノンビリ過ごそう。
重大イベント………今夜は久しぶりに
カーチスさんが入党してくれたぐらいだ、さらに党員が増えているに違いない。
党首である同志アクセルの地道なリクルート活動が、ついに実を結び始めたのだ!
だがおっぱい革新党の勢力が拡大していくのを、ガーデンの風紀を守る
………友であるシュリとはタレ派と塩派に分かれて争い、今またおっぱい革新党員として、師であるシグレさんの率いる凜誠の摘発をかいくぐらなければならないとは!
げに恐ろしき宿業よ。………だがこれも定め、焼き鳥はタレで食べたいし、おっぱいは素晴らしい。
オレの名は天掛カナタ、皮肉な運命に翻弄される哀れな兵士。
だがこれは自らが悔いるコトなく選んだ生き方なのだ。
臨時党大会に持参するブツは用意してある。
リグリット滞在中にペンデ社のモモチさんに頼んで手に入れた秘蔵の映像だ。
リグリットの兵器ショウの時にペンデ社が起用したキャンギャル達の映像記録………
フフフ、今のオレにはマ・クベの気持ちが分かる。もしオレが戦死する時には、この記録を同志アクセルに届けてくれるように頼むだろう。あれは……いいモノだ!と。
元の世界でもビール会社のバ○ワイザーが自社のロゴをあしらった素敵水着のギャル達で製品のPRをしていたが………末期的なこの世界では一味違う。
なにが違うかってーと布地の面積が違うのな。無論、面積がスモール。ベリベリスモールだ。
このキワドイ水着は、ある意味モロ出しよりもセクシーかもしれん。
これ程のブツなら古参の党員であるオレが披露するアイテムとして恥ずかしくなかろう。
いや、おっぱいを愛する者として、自慢していい逸品に違いない。
フフッ、まだ朝だってのに、もう夜が待ちきれませんわ!
ジタバタしたって時計の針が早く進むワケじゃない。朝メシでも食いに行こう。
いつもならリリスが作ってくれんだけど、「昨晩遅く帰ってきたイスカに呼ばれて、明け方までお仕事してたせいで今眠ったとこ。起こさないでね、ハニー♡」、とサイドテーブルに書き置きが置いてあった。
となると司令もボーリング爺も仮眠をとってるだろうから、魔女の森からの帰投報告は早くても昼からかな。
………でもなリリスさん、仮眠ぐらい自分の部屋でとんなよ?
オレのパジャマにヨダレをべったりつけちゃうぐらい疲れてるなら、なおさらな。
………ハッ!い、今オレはリリスのヨダレで濡れたパジャマの襟元を舐めようとしてなかったか?
………気のせいだな、気のせい。オレも森から生還したばっかで疲れてんだよ、きっと。
昨日とおなじく磯吉さんの朝定を美味しく頂き、食後のコーヒーを啜りながら小隊編成を考える。
隊長と
副隊長兼狙撃手はシオンでこれも確定。一般的な編成なら後はガード屋と斥候兵かなぁ。
いや、斥候はオレが出来なくはない。だったら斥候兵の代わりに衛生兵を入れる編成もアリかな?
でも隊長が斥候兵兼任は問題あるかもなぁ………
斥候兵かガード屋が衛生兵を兼任してるのが理想なんだが、リムセやウォッカには無理だろうし………
勉強熱心なシオンなら衛生兵の心得がありそうな気がするな。そこらは確認しなきゃいけないか。
ガード屋にはウォッカが欲しいけど、ウォッカを引き抜いちゃっていいもんかなぁ?
オレは小隊編成の用紙を前に、あーでもない、こーでもないと試行錯誤する。
「手伝いましょうか?」
この声は!
オレが振り向くと、そこには微笑を浮かべた金髪ルシアン美女が立っていた。
「シオン!ガーデンに到着したのか!」
「はい。昨晩遅く琴鳥と一緒に。小隊編成を考えていたのですよね?」
「そうなんだ。まあ座って座って!もう朝は済ませた?」
「まだです。朝食をとりに来てみたら隊長の姿が目に入ったものですから………」
「………言葉使いが出逢った時とえらく違わない? 仲間なんだから無理しないでいいんだぜ?」
「これが普通です。」
シオンはサラッと答えたけど、ホントかねえ。
「ならいいんだけど。じゃあ朝メシを食べながらでいいから相談に乗ってくれ。ここのメシは旨いんだぜ。お~い!磯吉さん、朝定一つお願い!ご飯は特盛でね!」
「普通盛で。」
「はい? 普通盛じゃ足りないでしょ? ダイエットでもしてるの?」
「足ります。ダイエットなんてしてません。」
「え? リグリットのピザ屋じゃラージサイズピザを2枚は食べてたでしょ? 公園で会った時も山ほどパンをトレイに載っけてたし、それにホテルのルームサービスでも……」
「足りますから!あ、あの時は体を造る為に無理して食べていただけです!私は決して大食い女じゃありませんから!」
「そ、そうなんだ。」
「そうなんです!」
そっか、あの時は体を造ってたのね。
シオンは格闘家でもあるもんな、無理して食べる努力もしなきゃいけねえのか。大変だねえ。
でも顔を赤くしてまで熱弁を振るわなくてもいいと思うけどなぁ。
美味しそうに朝定を食べてるシオンを見てるだけで、オレもちょっと幸せな気持ちになってくる。
旨いメシを食うって幸せの第一歩だよな。
って、瞬く間に朝定を完食しちゃったよ。ホントに足りてるのかねえ。重量級でしょ、シオンさん。
「ご馳走様でした。それで隊長と副隊長、特別枠で「悪魔の子」までは確定してるんですよね?」
悪魔の子って異名はもう有名になってるみたいだなぁ。リリス本人はさぞ不本意だろうけど。
だけど同盟最年少の兵士で美少女で念真力オバケなんてキャラしてたら、イヤでも有名になっちまうわな。
「悪魔の子じゃなくてリリエス・ローエングリンな。愛称はリリスだ。」
「はい。そのリリスって子は、念真力過剰体質という噂ですけど本当ですか?」
「本当だ。念真強度が600万nもある。」
「600万n!? それって世界最高の念真強度を持つと言われている「
さすがの絶対零度の女もビックリしたみたいだ。
「単独首位が同率首位になるなんてパワーボールじゃよくある話さ。だがリリスに関して言うなら驚くのは念真強度だけじゃないんだぜ。IQ180以上の天才頭脳に、アニマルエンパシーに、サイコキネシスに、
「ま、待ってください!なんなんですか、そのリリスって子は!」
「一言で言えばインテリチートだ。知識分野じゃ無敵なんじゃないかな。」
「………すごい子なんですね。」
「いい意味でも凄いが悪い意味でも凄い。ま、実際に会えば分かるよ。ただ………覚悟はしといてくれ。天才の例に漏れず………」
「………奇人変人なんですか。」
「………残念ながらな。」
もっともオレはその奇人変人ぶりもチャームポイントにしか思えないのだが。
「とりあえずリリスの事は置いて、決めなくてはならないのは残りの二人の人選ですね。オーソドックスにいけば
「贅沢言えば衛生兵も欲しいけど、インテリチートのリリスなら出来そうな気がするんだよな。」
「衛生兵は私も少し心得があります。リリスって近接戦は出来るんですか?」
「汗臭いコトはやらない主義って嘯いてるよ。凶悪な念真障壁を展開出来るから守りは堅いんだが、肉体は脆弱だ。」
「10歳の少女ですものね。となると多対一の乱戦に備えて守備要員が必須なのでは?」
「やっぱ守りの要になるガード屋はいるよなぁ。ウォッカを引っ張るしかねえか。」
「ウォッカって兵士は優秀なんですか?」
「キャリアも能力も十分なガード屋だよ。あ!噂をすれば……」
噂をすれば影、好物の
「ウォッカ、丁度いいところに来た!牛丼奢るからオレの話を聞いてくんない?」
首をコキコキ鳴らしながらウォッカが大股で歩いてくる。
「卵とお新香もつけろよ?………シオン!!シオンじゃないか!なんでこんなところに!」
「イワン!あなたこそどうして!暴力沙汰を起こして軍を追放されたって聞いたわ!」
はぁ!? ウォッカとシオンって知り合いだったのかよ!
「クソみてえな上官を思いっきりブン殴って半殺しにしちまってなぁ。クビどころか軍刑務所に送られる寸前にマリカさんに助けてもらったのよ。」
「なにやってるんだか。………久しぶりねイワン。最後に会ったのは5年前かしら。」
「シオンが軍学校に入学する時だからそうなるのかな?………デカくなったなぁ、シオン。」
「イワンほどじゃないけれどね。元気そうでなによりだわ。」
「………親父っさんの事は聞いたよ。すまねえ、ガード屋のオレがスノーラビッツに残ってりゃあんな事には………」
親父っさん、か。ウォッカはシオンの親父さんの部隊にいた事があるみたいだ。
「イワンにはなんの責任もないわ。父の仇は私が討つから。その為にガーデンに来たのよ。」
「………場所を変えて詳しい話を聞かせてもらおうか。墓地にある公園にでも行こう。あそこなら滅多に人は来ねえ。」
オレ達は食堂を出て、ガーデンの外れにある共同墓地へ向かう。
普段は陽気でお喋りなウォッカが一言も喋らないのは、「狙撃の皇帝」と謳われたシオンの父、ラブロフとの思い出が頭をよぎってるからだろうか?
………オレの仲間のウォッカことイワン・ゴバルスキーは、シオンの父親がかつて率いたスノーラビッツの元隊員だった。
人間どこで繋がってるかわかんねえもんだなぁ。だが旧知の二人がガーデンで再会出来たのはいいコトだ。
元スノーラビッツ隊員のウォッカにも「純白の」オリガとかいうクソ女に復讐する動機があるはずだからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます