出張編43話 可愛いあんよは何味でしょう?
カリキュラムに復帰して久しぶりにダニー達に会った。
シオンは前よりよそよそしくなって目も合わせなくなってたけど、気にしないコトにする。
万人と価値観を共有出来るワケもない、ソリが合わないモノは合わないのだ。
一方、コトネはアスラ部隊に来るコトが正式に決まったらしい、また薔薇園が賑やかになりそうだ。
ダニーも来いよと誘ったが、今いる部隊の隊長を尊敬しているので所属を変える気はないそうだ。
ダニーが尊敬するっていうから本物の男なんだろう、いや、ダニーの事だから女なのかもしれないが。
そしてカリキュラムは全日程を終了し、翌日の試験も無事終わった。
………なんとか合格してるといいんだが。司令の
「結果から言おう。………合格だった。私の手を煩わせずに済んで良かったな。」
ペントハウスの中のオフィスで、司令はいつものように煙草を燻らせながら結果を教えてくれた。
「ひゃっほう!司令に借りを作らなくて済んだぜー!」
「ね? 准尉はやれば出来るコなんだから。」
「優秀な家庭教師のおかげだな。あんがとな、リリス!」
オレはリリスをかいぐりかいぐりして労をねぎらう。
「喜ぶのはいいが、ギリギリの教科もあったのじゃぞ。慢心するでない!」
リリスは中佐にあっかんべぇと舌を出しながら、
「ズレたジジィね!ギリギリでも満点でも合格は合格でしょ。試験や資格なんて合格さえすればいいのよ!」
「そりゃそうじゃが、今後の事を考えればだな………」
「シャラップ!小言はマジメガネだけで十分よ!」
マジメガネ………シュリは火隠れの里に帰郷してんだよな。ホタルと上手くいったのかな?
ここんとこ色々あったから、しばらく連絡してないな。今夜あたり連絡してみた方がいいか。
いや、ガーデンに帰れば会えるんだ。直接、顔を見て話を聞きたい。
「カナタ、我々は明日の朝にここを引き揚げるが、おまえは残れ。」
「は? オレは置いてけぼりですか?」
「絶対零度の女とやらと決闘があるのだろう? 准将が舞台を用意してくれたそうだ。明日の夜9時にヒンクリー師団の訓練施設へ行け。准尉の階級章は既に用意してある、負けるなよ?」
「じゃあガーデンに帰るのは明後日の朝にすればいいじゃない!なんで准尉を置いていく訳?」
「准将から頼まれ事をされて引き受けた。カナタにしか出来ん仕事でな。カナタは准将からの頼まれ事を片付けてから帰ってくるのだ。」
「オレにしか出来ない仕事? なんですか、ヒンクリー准将からの頼まれ事って?」
「詳しくは准将から直接聞くといい。」
「了解です。」
「じゃ、私も残る。准尉一人じゃ心配よ。保護者として責任を果たさないと!」
保護者と被保護者が逆じゃねえか?
いや、リリスのがオレよりしっかりしてるよな。情けない話だが事実は曲げられない。
「ダメだ。リリスは私達と一緒にガーデンへ帰投するのだ!」
「や~よ!や!」
「リリス、ワガママを言うな!イスカ様の命令じゃぞ!」
リリスは頬を膨らませ、プイッと横を向きながら、
「やだって言ったら・イ・ヤ!私はイスカの部下でも家臣でもないもん!私に命令していいのは准尉だけよ!」
………駄々っ子モード突入っすか。前言撤回、オレのが大人です。
それとリリスさん、ウソはいけませんよ? オレの命令どころか、お願いだって気分次第じゃ首振るじゃんか。
駄々っ子モードのリリスのせいで煙草を根元まで吹かしてしまい、フィルターまで焦がし始めた司令が、仏頂面でプッと煙草を吐き捨てて説得にかかる。
「………リリス、冷静に考えろ。我々がガーデンを留守にして三週間以上たつ。司令室の私のデスクがどうなっていると思う?」
………決裁待ちの書類で摩天楼が完成してんじゃないですかね?
「書類がウンザリする程たまってるでしょうね、お気の毒。ヒムヒムにでも手伝ってもらいなさいよ。」
「ヒムノンは新設される軍規相談室の室長に就任する事になっている。ついでに兵站部の部長も兼任だ。しばらくは開設準備やら引き継ぎやらで、私の手伝いどころではない。」
………容赦なく少佐を使い倒す気ですね。ま、ヒムノン少佐は法務や兵站が得意分野だから、嬉々としてお仕事してそうだけど。
「それはイスカの事情でしょ。私に関係ございません事よ。ホホホ。」
「………カナタ、なんとかしろ。」
オレがかよ。いや、待て。これはいい機会かも。
「バーター取引といきませんか? リリスはオレが説得します。代わりに司令の貸借対照表の借りを消してください。」
「全部は無理だな、4分の1でどうだ?」
「半分で。」
「3分の1だ。」
「商談成立です。というワケでリリス、先に帰って司令のお手伝いよろ。」
「よろ、じゃないわよ!准尉は私にどんなメリットを用意してくれる訳?」
チッ、強欲なお子様だぜ。オルセンの亡霊はリリスに乗り移ってんじゃねえか?
「一日奴隷権でどう?」
「交渉材料になってないわ。准尉は元々私の奴隷だもの。」
「いや待て!いつからそうなった!」
「出会った時からよ。私に魅了された准尉は一生、私の愛の奴隷なの。」
すっかり依存しちまって、一家に一台リリスさん状態になってんだけど、奴隷だったとは知らなかったぞ。
「とにかく頼むよ。な?」
「ヤ!どうしてもって言うなら、私の足の指でも舐めなさい。」
しかと聞いたぞ!迂闊だったな小娘!
オレはおもむろににリリスの細い足首を掴んで押し倒し、靴下を脱がしにかかる。
「ちょっ!? 准尉!待って待って!マジで舐める気!?」
「一日奴隷より安く上がるからな。可愛いあんよでちゅね~。」
「きゃ~!変態!准尉ってガチマジの変態よ!」
「ハハハッ、今頃気付いたか!だがもう遅いわ!どんなフローラルなお味がするあんよなのか、ご賞味させて頂こう!」
リリスは掴まれてない方の足裏をオレの頬に押しつけ、靴下を脱がされた足から鼻息荒いオレの顔を引き剥がそうと必死になるが、所詮は軽量級の悲しさ、大した効果はない。
「いや~!!鼻息が指先にあたってるぅ~!准尉、落ち着きなさい!ステイステイ!」
フンスフンスと鼻息が荒いオレはもう言葉では止まらない!
「ひっひっひっ。さぁて、どんなお味がするのかなぁ?」
「分かったから!手伝う!イスカのお手伝いするからぁ!」
「うんうん、いいコだねえ。それではいただきま~す!」
ガンッといい音がしてオレの目の前に火花が散った。
どうやら後頭部に軍靴の踵落としを食らったらしい。
「そこまでだ!カナタが変態趣味なのは分かったが、私の前で披露するのはご遠慮頂こう!」
「痛てて。司令、いま思いっきり蹴り落としましたね?」
「おぞましい行為が目の前で行われようとしていればそうなるだろうが!………鳥肌が立ったのはいつ以来だ。恐ろしい変態だな、カナタは。」
「………幼女の足を喜色満面で舐めようとする変態が隊員とはマリカも不憫じゃのう。」
「………だってリリスのあんよですよ? 男だったら舐めたくなりません?」
「なる訳なかろう!私は女だが!」 「なりゃせんわい!このど変態が!」
ロリコンの烙印に変態の烙印を追加されたオレは、あんよの可愛いリリスを連れてペントハウスを退出した。
「明日の朝に出立なら当分リグリットともお別れね。今日はオフだし、どっかに出掛けましょうか、不純尉。」
「准尉な? どっかに出掛けるのには賛成だけど。」
「私の足を本気で舐めようとする変態は不純に決まってるでしょ。私じゃなかったらドン引きしてるとこだからね。」
さすがオレのリリスさん、あの程度の変態行為ではドン引きまではいかないらしい。
お出掛けするコトにしたオレ達がホテルのロビー前まで行くと、マリカさんとナツメがいた。
「マリカさん!」
「なんだ、カナタか。リリスとお出掛けか?」
「ええ、マリカさん達もお出掛けですか?」
「ああ、明日の朝に出立だからな。ナツメの服を買いに行くのさ。」
「はん、服ぐらい自分で買いに行きなさいよ、お子様ね。」
お子様にお子様って言われちゃナツメも立つ瀬がないな。
そんなナツメは立つ瀬がないなら屈むとばかりに膝を落として、リリスのほっぺを両手で掴み、左右に引っ張る。
リリスも負けずにナツメのほっぺを掴み返して左右に引っ張った。
………子供の喧嘩、ここに極まれり、だな。
「こら、ホテルのロビーで子供みたいな喧嘩はよしな。迷惑だろ!」
ナツメとリリスは手を離してから睨み合い、フンッとソッポを向きあった。
………仲良くしろよ、頼むから。
「カナタ、出掛けるんならアタイらと一緒に行くか?」
「いいですよ、特にどこへ行こうって話はしてませんでしたし。」
「ちょっとぉ!またデートにお邪魔虫を混ぜるつもり?」
「そう言うなお子様、ちょっとおまえの手を借りたい事もあるしな。」
「タダじゃ貸さないわよ。」
「今日はアタイの奢りでどうだ?」
「妥当な対価ね。いいわ。行きましょ。」
やったい!マリカさんとナツメとリリスとお出掛けだぁ!
オレ達は四人でお出掛けし、午前中は改装したラビアンローズでお買い物をした。
リリスはタカリの報酬のオートクチュールのドレスを贈られて、ご満悦だったな。
その後、画廊に出掛け、マリカさんは印象派の名画を購入した。
ガーデンのプライベートサロンに飾るのだそうで、絵画選びにリリスの意見を聞きたかったらしい。
インテリチートのリリスは絵画への造形も深かったのだ。今更驚きゃしねえけどな。
そこからアクアリウムに赴き、可愛い海棲生物や魚を見て癒された。
ナツメ、隠してたつもりかもしれないけど、おまえがイワトビペンギンが大好きってコトは分かったからな。
トイレに行くとか下手なウソついて、売店でペンギンストラップを買ってたのもな。
ホントはペンギンの人形も欲しかったんだろ? 無理しなくていいんだ、人生を笑って楽しんでくれよ。
深海魚好きのリリスがアンコウを見て、アンコウ鍋が食べたいって言い出したからみんなで食べに行った。
アン肝をツマミにマリカさんにお酌してもらって、旨い酒だったなぁ。
………最高の一日だった、ずっとこんな日が続けばいいのに………
あ!ひょっとしてこれが!これがリア充ってヤツなんじゃないか!
オ、オレはリア充への階段を駆け上がってんじゃね? そうだよね!神サマ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます