入隊編3話 セクシー上司とお買い物
Dカップロケットおっぱいのエース、マリカさんの入隊テストをクリアしたオレは兵舎棟に向かった。
兵舎棟には1000以上の部屋がある。隊員、施設従業員を合わせればそれぐらいの数がいるのだそうだ。
兵舎棟の649号室、そこがオレの新しい住まいだ。
与えられた部屋の広さは研究所とさほど変わりない。
違うのは窓に鉄格子がないことぐらいだ。
生活に必要最低限のモノは準備してあった。歯ブラシ、石鹸、タオルに下着。替えの軍服。
下着はブリーフか。オレはトランクス派なんだけどな。
細かいところに文句を言っても仕方がない。気に入らないなら買えばいいだけだ。
ローズガーデンには立派な購買区画があるんだから。
そしてオレには司令にもらったクレジットカードがあるのだ。
気前のいいボスはありがたいもので、司令は階級章だけじゃなくて支度金まで用意してくれた。
カードには50万クレジットの預金が入っている。
当座の資金としては十分だ。オレに浪費癖はない。
せいぜいお気に入りのアニメは大人買いする程度のことだ。
自由都市同盟軍に加盟している都市国家の間では、単一通貨としてクレジットが採用されている。
元の世界のユーロみたいな感じだな。
1クレジットは元の世界の1円に相当する。分かりやすくていい。
取りあえず購買でも覗きにいこうかと考えていたら、部屋に設置されている通信用モニターから呼び出し音が鳴った。
「はい、来々軒です。」
「今度そんなつまんねえ冗談言ったら、首をへし折って2階級特進させてやるよ。」
ロケットおっぱい(クドイようだがここは非常に重要だ、オレにとっては)エースにはイマイチウケなかったどころか殺人予告をされてしまった。ここは素直に謝ろう。
オレは強い人には徹底服従がモットーだ。
「すいません、オレに何か御用でしょうか?」
「身の回りのもん揃えなきゃいけないんだろ。ついでに基地内の施設を案内してやるよ。5分以内に購買区画にこい。1分遅れるごとに指1本落とす。」
「すぐにいきます!」
購買区画に全力で走った甲斐があってマリカさんはまだ来ていなかった。
購買区画は結構大きくショッピングモールとまでは言わないが、必要なものは問題なく揃えられそうだ。
衣料品店、ドラッグストア、パソコンショップ、コンビニもある。
「指は落とさずに済みそうだね。」
マリカさんに背後から声をかけられてビクッとした。
音もなく忍び寄るのはやめてください。隙だらけのオレが悪いのかもしれないけど。
「あや取りが趣味なんで指は10本必要なんです。」
「なら落とすのは足の指にしてやるよ。」
「物騒な話はナシ子ちゃんですよ。オレをからかうのはそんなに愉しいですか。」
「ああ、愉しいね。リアクションが面白いから、からかい甲斐がある。」
高木さんですか貴女は。ならばオレは西片クン並みのからかわれ上手になってみせよう!
そう、マリカさんにからかわれるのは悪くない気分なのだ。
元の世界では美人さんとの接点なんか皆無だったからな!
オレとマリカさんは並んで購買部門のあるスペースの通路を歩く。
失踪した爺ちゃん、天国の婆ちゃん見てるか? オレ、スゲー美人さんと一緒にお買い物してるぞ!
シャワーを浴びた後のマリカさんは石鹸のほのかな香りがして吸い寄せられそうだった。
「カナタ、誘蛾灯に吸い寄せられる羽虫みたいにアタイの乳に顔を寄せてくるんじゃない。」
ホントに吸い寄せられていたようだ。恐るべきはロケットおっぱいの誘引力よ。
楽しい時間はあっという間に終わるもので、買い物はじきに終わってしまった。
ブリーフはイヤなのでトランクスを買おうとした時までマリカさんがついてきて参ったけど。
無論、ダサいだの、そんなトランクスを履いてる男と寝る女はいないとか、さんざんからかわれた。
ふと目をやった購買区画の隅っこには見慣れない店があった。
「マリカさん、あの店はなんの店ですか?」
「アプリショップだよ。覗いてくかい?」
アプリ? スマホみたいなもんかな。
こっちの世界じゃスマホじゃなくて、ハンディコムって携帯電話が普及してるみたいけど。
「アプリってインストするもんじゃないんですか?」
「インストするものさ、体にな。」
「はいぃ?」
思わず杉下右京さん見たいな返し方をしちゃったよ。なんだよ体にインストって。
「カナタにもいくつかインストされてるだろ? アドレナリンコントロールとかFCSとか。」
「ああ、バイオメタル兵士の機能の話ですか。」
「そうだ、作戦行動に必要な基本アプリはあらかじめ支給されるが、そうでないものは購入して調整用ポッドに入ってインストールする必要がある。その機能を販売するのがアプリショップだ。」
「どんなアプリがあるんですか?」
「同盟軍全体でもっとも売れ筋のアプリはアルコール分解アプリだね。アタイも入れてる。」
「お酒飲んでてもそのアプリがあれば一瞬で素面に戻れる?」
「そう、心おきなく酒を呑む為には必須。他の売れ筋は翻訳アプリや目覚ましアプリだね。」
目覚ましアプリはオレも重宝してる。時間指定すれば勝手に目が覚めて眠気もない。
時計もいらないしな、今何時って思えば瞳に時間が表示されるし。
「そんな便利なアプリなら、あらかじめインストしといてくれればいいのに。」
「そこは世知辛い事情があってな。戦争には金が必要だろ? その手のアプリを兵士に売ってその金で新たなアプリを開発するって寸法さ。」
「なるほど、うまく考えたもんですね。」
「アルコール分解アプリみたいな便利系アプリは趣味の世界だが、最新の戦術アプリは細かくチェックしておけ。こっちは生死に関わる。」
「え? それも自費購入なんですか?」
「そうだ、例えば半年ほど前に対人ミサイルを脳波誘導できるアプリが開発されたが、まだ全軍に行き渡っていない。重砲支援タイプの兵士には垂涎の的のアプリなんだがな。だが金さえ積めば入手可能って訳だ。」
生き残りたきゃ金を積め、かよ。マジで世知辛えな。
「戦果を上げて報奨金をもらい、その金で戦術アプリをインストしてさらに戦果をあげる。それが出来なきゃ負の連鎖にハマりかねない。今はカナタも金はないだろうけど、小金を掴んでも浪費するな。文字通り自分に投資するんだ。それが生き残りにつながるし、仲間の為にもなる。」
「そうします。司令が私財をはたいてまで報奨金を出してくれるのは、部隊強化の意味合いもあったんですね。」
「ああ、イスカはもともと気前のいい女だが、それだけじゃあないって訳さ。」
「脳波誘導ミサイルアプリかぁ。金が貯まったらインストしようかな?」
「やめとけ。インスト出来るアプリには限界がある。念真強度の容量一杯までだ。カナタの念真強度は100万nあるようだから、並み兵士の倍以上のアプリをインスト可能だが、脳波誘導ミサイルアプリは容量をバカ食いするからな。インストしたはいいものの、他にもっと有用なアプリが出て泣く泣くアンインストって羽目になりかねない。そうなりゃ金をドブに捨てる事になる。」
アプリは再利用不可って訳か。購入する時は慎重に考えないといけないな。
「そうですね。オレはアタッカータイプだし、近接戦強化のアプリをインストするのを目指します。」
「そうしろ、カーチスみたいなガンナータイプの兵士はあるのとないのじゃ大違いだろうがな。ヤツはショップに並んだその日にインストしてたが。」
「カーチス?」
「6番隊隊長だ。通称「鉄腕カーチス」、いけ好かない助平親父だが重砲支援ガンナーとしてはアスラ部隊でもヤツの右に出る者はいない。今はどこぞの陣地の防衛の助っ人に行ってるよ。くたばってなきゃあ、そのうち帰ってくるだろうけどね。」
男の隊長もいるのか、ちょっと残念だ。
「へえ。凄い人なんですね。一番凄いのはエースのマリカさんでしょうけど。」
「世辞を言ってもなにも出ないよ、と言いたいところだがカナタの入隊祝いをなにかしてやらないとだね。」
「いいですよ、そんなこと。」
「だいぶ御執心のようだから、アタイの乳でも拝んで見るか?」
「マジで!!!それは……遠慮しておきます。」
マリカさんがケンシロウばりに指をコキコキし始めたので諦めた。
ここで死ぬ訳にはいかない。
生きてさえいればマリカさんのおっぱいを拝めるチャンスが訪れるかもしれない。
理想型と言えるロケットおっぱい……これ以上はないオレの生きる為のモチベーションだった。
「乳の話はさておき、カナタはどのぐらい無酸素で戦闘可能だ?」
「酸素節減機能はバイオメタル化した時の基本機能に入ってました。確か呼吸なしの戦闘可能時間は5分だったと思います。」
「バイオメタルなら誰でもそうだ。だが今はそいつを15分に伸ばせるアプリがある。入隊祝いにそいつを買ってやるよ。水中で戦う状況もあり得るからな。」
そしてオレになにも言わせず、マリカさんはアプリショップにオレを連れて入り酸素節減アプリ「スーパー海女ちゃん」を買ってくれた。
お値段なんと30万クレジットなり。
しかし「スーパー海女ちゃん」って、同盟軍の開発部のネーミングセンスは最悪だな。
「後でそれを持ってラボの調整用ポッドに入んな。インストは1時間程度で終わる。」
「ありがとうございます。大事に使います。」
しかし生まれて初めてもらった女性からのプレゼントが軍用アプリとは。
いや、オレはマリカさんからのプレゼントなら犬のフンでも喜んでもらえる自信がある!
その後はマリカさんの後をくっついて基地内の施設を案内してもらった。
見取り図をみた時にわかってた事だけど、基地にあるべき設備にラウンド1を足したのがローズガーデンという場所だった。
最後にラボの前でマリカさんが、
「このラボで案内は終わりだ。アプリをインストしてもらえ。それからウチの連中が明日の18:00におまえの歓迎会をやるって言ってるから食堂にこい。」
「本当に歓迎されますかね?」
アギトの悪行があるからなぁ。スゲー心配だ。
「知らん。バカ騒ぎする口実が欲しいだけってのが主な理由だろうよ。」
「はい、マリカさん今日はありがとうございました。」
「ございましたはいらない。かたっくるしい物言いは嫌いだ。」
「ありがとうマリカさん。」
「それでいい、じゃあなカナタ。」
歩み去っていく姿もホントに絵になるマリカさんを、オレは黙って見つめていた。
主にお尻のあたりをだ。おっぱいに気を取られていたけどお尻もすごくいい。
キュッと引き締まっていて、それでいて柔らかそうで。SO,GOOD!
さて、アプリをインストしてもらったら部屋に帰ってもう寝よう。
歓迎されてないかもしれない歓迎会に備えて、ね。
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