夜に咲く華

夏艸 春賀

声劇台本

《諸注意》


※なるべくなら性別変更不可。

※ツイキャス等で声劇で演じる場合、連絡は要りません。

※金銭が発生する場合、必ず連絡をお願いします。

※作者名【夏艸なつくさ 春賀はるか】とタイトルとURLの記載をお願いします。

※録画・公開OK、無断転載禁止。

※雰囲気を壊さない程度のアドリブ可能。

※所要時間約25分。男2:女2の四人台本です。




《役紹介》


琴宮 鈴音(コトミヤ スズネ)

主人公、女性、21歳

148cm、ふんわり可愛い系



金代 倫(カナシロ リン)

主人公の恋人、男性、23歳

175cm、爽やか系



皇 冬美香(ミカド フミカ)

主人公の友人、女性、21歳

165cm、眼鏡を掛けた黒髪美人

幼馴染がいる



槌谷 弦樹(ツチヤ ゲンキ)

冬美香の幼馴染、男性、20歳

164cm、ワンコ系



《配役表》

鈴音(女):

倫(男):

冬美香(女):

弦樹(男):






↓以下本編↓

────────────────────






鈴音M

「卒業式の日。わたしは勇気を振りしぼって校門から出て行こうとする先輩を呼び止めた。先輩は立ち止まって振り向く、その背には桜吹雪が舞っていた。」



「……何、かな……?」


鈴音

「あ、えっと、急にごめんなさい!! あの、わたし……」


「……うん」


鈴音

「……あの…その……」


「……」


鈴音

「え、えっと……」


「……桜……」


鈴音

「……え?」


「綺麗だよな。……桜」


鈴音

「え?……あ、はい。……さくら……きれい、ですね……」



鈴音M

「わたしは緊張のあまり顔をうつむかせていたけれど、先輩の声が聞こえて顔を上げた。桜の花びらが風に乗って踊っているのを、少しの間、二人で眺めてしまう。」



「………」


鈴音

「…あ、あの……せんぱ……」


「(遮る様に) 琴宮ことみや


鈴音

「は、はいっ」


「呼び止めてくれて、ありがとう」


鈴音

「…え…?」


「……やめようと、してた」


鈴音

「なにを、ですか?」


「琴宮に……告白、する事」


鈴音

「…っ……」


「……だけど。呼び止めてくれた。走って、俺のところに来てくれた」


鈴音

「……」


「ここまでしてくれたのに……駄目だな、俺は。貰ってばかりじゃ……駄目だよな」


鈴音

「…先輩…」


「……俺は、琴宮ことみやが好きだ」


鈴音

「…!! 先輩……っ…うう……」


「…っ…な、泣くなよ……」



鈴音M

「先輩は少し離れていた距離を縮めて、大きな手のひらで頭を撫でてくれた。撫でて貰いながらわたしは先輩に答えを返す。答えを聞いた先輩は少し安心した様に息を吐いてから、わたしをそっと抱き締めてくれた。

 それから4年。

 わたしと先輩は、恋人同士のはずなのに、なかなか会えない日々が続いていた。」



《間》



冬美香

「それで? どこまで?」


鈴音

「え? んーと……何が??」


冬美香

「だって、付き合ってるんでしょ、先輩と。だからもう色々としてるんじゃないかなぁと思って」


鈴音

「しっ、してないよ! ふみちゃんのエッチ!」


冬美香

「あら、どうせ鈴音すずねが恥ずかしがって逃げてるだけでしょ?」


鈴音

「…!! な、なんでそれを……」


冬美香

「うふふ、なんでかしらね?」


鈴音

「…でも…最近は、会えても少しだけだし……」


冬美香

「あら、そうなの?」


弦樹

「(遠くから走って近付いて来る) 冬美香ふみかー! マネージャー! (呼吸整え)……なあなあ! 今度の花火大会、一緒に行かね?!」


鈴音

「え、花火大会?」


冬美香

「何でわざわざ弦樹げんきと行かなきゃならないのかしら?」


弦樹

「イイじゃん、たまには構ってくれよ〜、冬美香ふみか〜」


冬美香

「そう言うのは彼女に言いなさいな。大体、鈴音すずねの事まだマネージャーって言ってるの? もう高校卒業してるんだからいい加減にしたらどうなの?」


弦樹

「イイじゃん、彼女とかいないしぃ〜。なぁ! マネージャーも花火見たいよな?な?」


鈴音

「…う、うん……花火は見たい、かな…」


弦樹

「だろ?! 一緒に行こ! 浴衣姿見たい!!」


鈴音

「ええっ? そんな、無理だよぉ」


冬美香

「……そうねぇ、鈴音すずねの浴衣姿は見たいわね」


鈴音

「ええ!? ふみちゃん!??」


弦樹

「よぉし決まり! 今度の日曜、神社の前で待ち合わせな! 冬美香ふみかも浴衣着て来いよ?」


冬美香

「はいはい」


弦樹

「やったね! それじゃ時間とかは連絡するから!!」


鈴音

「…え、え?」


冬美香

「もう、分かった分かった。良いからさっさと行きなさいな。友達呼んでるわよ?」


弦樹

「うはは、んじゃまた!」


鈴音

 「あっ! ちょっ……ねえ、ふみちゃーん……」


冬美香

「先輩、誘いなさいな」


鈴音

「え?!」


冬美香

「せっかくの機会だもの、たまには良いんじゃないかしら。それに普段と違う姿見たら、手を出さずにいられなくなるに違いないもの。うふふ」


鈴音

「えっ! や、やだよぉー、それにわたし、一人じゃ浴衣着れないもん……」


冬美香

「あら。着付けなら出来るわよ?」


鈴音

「で、出来るの?!」


冬美香

「着物の着方なら覚えたもの。あなた、私が何部だったか忘れた?」


鈴音

「え、えっと…弓道部……っあ!」


冬美香

「まぁ、弓道着は着物じゃないけれどね。それがきっかけで着物の着付けを習いに行ったのよ。浴衣なら私は一人で着れる様になったもの、着付けだって出来るのよ?」


鈴音

「で、でもぉ!」


冬美香

「浴衣が無いならうちにあるから大丈夫。……ね? とにかく鈴音すずねは先輩を誘って、浴衣姿を見て貰いましょ」


鈴音

「けど!……だけど、前に浴衣姿見て貰ったけど、何にも言ってくれなかったもん…」


冬美香

「それは言葉に出してなかっただけかもしれないじゃない。良いからほら。今すぐ連絡しちゃいなさいな!」


鈴音

「うーん……でも…あっ!!」


冬美香

「(遮る様に) はーいはい、携帯借りるわよ?……えーっと、あ、いたいた。今度の…」


鈴音

「ふぇえ! ふみちゃんのいじわるぅ! 返してよぉ!」


冬美香

「日曜日に花火大会行きましょう! はい、送信。ほら」


鈴音

「うぅ……あ、…返事早い…」


冬美香

「あら、なんだって?」


鈴音

「予定、空けておくって……」



《間》



倫M

「花火大会当日。琴宮ことみやは友人のみかど 冬美香ふみかを連れて神社の鳥居とりいの前で立っていた。浴衣姿で。前に見た時よりもずっと可愛く見えてしまうのは欲目よくめなのかもしれない。思わず見詰めてしまっていると二人は俺に気付いた。みかどは優雅な仕草で片手を揺らし、琴宮は、はにかんだような笑顔を浮かべてる。」



「……お、遅くなって、ごめん」


鈴音

「ううん! 大丈夫だよ!……うん」


冬美香

「うふふ、先輩、お久し振りです。どうですかね?」


「…あぁ…うん。かわ…」


弦樹

「(遮って) おっ待たせーー!!」


冬美香

「……お馬鹿……」


弦樹

「おー! 二人とも可愛いじゃん、特にマネージャー!」


鈴音

「あ、ありがとう……」


冬美香

「あんたねぇ……」


弦樹

「ん? なになに?」


冬美香

「はぁ……何でも無いわよ」


弦樹

「そっか! んで、こっちのイケメンさんはマネージャーの彼氏さん?……ん、アレ?」


「……なんだ?」


弦樹

「…いや、どっかで見たような……うーん…あー、そうだ、やっぱり! 花火大会のチラシ、めっちゃ真剣に見てた人!! オレ、そのおかげで気づいたんだよー。なんだー、彼氏さん、マネージャー誘いたかったーとかー?」


「え?……うん、まぁ……」


弦樹

「じゃー、先に誘っちまってごーめんなさーい!あ、オレ弦樹げんき!ピアノの弦に樹木じゅもくでー、槌谷つちや 弦樹っての、よろしく!」


冬美香

弦樹げんき、その人私達の先輩よ」


弦樹

「おお! すんません先輩! よろしくッス!!」


「あぁ、うん。……こちらこそ」


冬美香

「それじゃあみんな揃ったし、行きましょうか」


弦樹

「よっしゃー! 食べるぞー!!」


冬美香

「あなた、それが1番の目的でしょ」


弦樹

「あれ、バレたかー。イイじゃん、夜店の焼きそばとかー、たこ焼きとかイカ焼きとか、うまいし!」


冬美香

「まぁね……」


弦樹

「他にもさー……」


「…俺達も行こうか、琴宮ことみや


鈴音

「あ、うん…あの……」


「……ん?……ほら、手」


鈴音

「えっ……う、うん」



倫M

琴宮ことみやは真っ赤になりながら、差し出した俺の手を取った。白地に金魚が泳いでいる浴衣を着た琴宮は実に可愛い。いつもは隠れているうなじが見える。俺は何とも言えないくすぐったさを覚えながら、先に神社の境内けいだいに入って行く二人を、ゆっくりと追い掛ける。」



「何か、食べたい物ある?」


鈴音

「えっ……あの」


「ああ、そうだ、りんご飴好きだったよね」


鈴音

「うん……金代かなしろさん、覚えててくれたんだ」


「当たり前だろ?」


鈴音

「子供っぽいって、思ってる?」


「いや、そんな事ない」


鈴音

「でも……」


「良いと思う。それに、さっきは言えなかったけど‥浴衣、似合ってるよ」


鈴音

「ほ、本当?」


「……うん、かわ……」


弦樹

「(遮って) なぁなぁ! 先輩!! あっちの方行くと花火良く見えるってさ!」


冬美香

「ちょっ…弦樹げんき!」


弦樹

「買うもん買ったら行こ! 特等席で見れるんだって! 楽しみだなー」


冬美香

「全く……弦樹は私と来るの! ほら!」


弦樹

「えー? なーんでー?」


冬美香

「良いから、来なさい! 何でも好きな物買ってあげるから」


弦樹

「え、マジ? やった!!」


冬美香

「それじゃあ鈴音すずね、先輩、ごゆっくり〜」


弦樹

「ごゆっくりー!!」


冬美香

「……全く、邪魔しに来たみたいになってるじゃない」


弦樹

「……なぁなぁ冬美香ふみかー」


冬美香

「何よ、戻らないわよ?」


弦樹

「付き合ってよ」


冬美香

「え……?」


弦樹

射的しゃてき! ほら、アレ好きだろ?」


冬美香

「ああ、射的の事ね?……まぁ、確かに。あのぬいぐるみのシリーズなら集めてるけど……あら? あの子……限定物でたまたま買えなかった子ね。……少し欲しいかも」


弦樹

「色々買って貰う代わりにさ! アレ当てるから! そしたら付き合って!!……おっちゃーん! 一等当てに来てやったぞー!」


冬美香

「当たれば良いわね。……ん? 付き合ってって、射的、の事よね?」



《間》



「……」


鈴音

「……行っちゃった、ね…」


「うん、俺達も行こうか」


鈴音

「うん。……あっ、!」


「(転び掛けた鈴音を抱き止める)……おっと。……鼻緒はなお切れちゃったのか。座れるところ行って直すよ。大丈夫? 歩ける?」


鈴音

「うん、大丈夫・・っ痛……」


「ちゃんと捕まってて」


鈴音

「え?・・え、キャァ!」



冬美香M

「少し離れたところで鈴音すずねの悲鳴が聞こえた気がして振り向くと、鼻緒の切れた下駄を指先に引っ掛けたままの鈴音を、先輩が軽々と抱き上げたところだった。夜なのに真っ赤になっている鈴音の顔が見える。そのまま夜店よみせ奥にあるベンチに行く背中を見送る。

弦樹げんきはと言うと、宣言通りに射的屋で一等を狙っている。」



冬美香

「う〜ん。……なかなかやるわね、先輩…」


弦樹

「へ? なにが?……は、あ?! 今当たった! 当たった!!」


冬美香

「はいはい、凄い凄い」


弦樹

「一等当たった!!」


冬美香

「え?!」


弦樹

「いえーい。冬美香ふみか、欲しいって言っただろ? あのぬいぐるみ!」


冬美香

「そ、そうだけど。本当に当てると思ってなかったもの……」


弦樹

「っへへー、当たった!……はーい、ありがと、おっちゃん!! ほら〜、オレ頑張った!!」


冬美香

「あら本当。凄いじゃない」


弦樹

「オレだってやる時はやる! なーんてな! よし、次は食べ物買って花火見れるとこ行こ。それと…」


冬美香

「それと?」


弦樹

「改めて言うけど、冬美香ふみかの浴衣、似合ってる。髪の毛アップにしてるのも可愛いし。オレ、すっげー好き!」


冬美香

「なっ…に、言ってんの……今更、そんな事…」


弦樹

「オレいっつも思ってるけどなー。冬美香ふみかは可愛いって。ちっさい頃から一緒にいるけど、どんどん綺麗になってくし、身長もオレより高いし、頭も良いし。どんどん……なんか、遠くなってく」


冬美香

「…き、急に……何よ。身長差なんて1cmだけじゃない……」


弦樹

「そうだけどさ。オレ、冬美香ふみかの事好きだから」


冬美香

「……はぁ!?」


弦樹

「オレ、年下で馬鹿だけどさ。これでも色々考えてたんだからな? どうやって告白しようかなーとか、何言おうかなーとか思ってたら、さっきポロッと言っちゃったしさー」


冬美香

「え、ちょっと待って? どう言う事? さっきって…付き合ってとか、何とか…」


弦樹

「つまりー、こう言う事!」


冬美香

「…っ…!」


弦樹

「っへへー」



冬美香M

「一気に距離を詰めて来た弦樹げんきは、そっと触れるだけのキスをして直ぐに離れた。悪戯いたずらが成功した時の様な笑みを浮かべてるけど、その耳は真っ赤。少しぶっきらぼうに手を握られて夜店よみせの中を歩き始める私も顔が熱い。

 そっと弦樹の手を握り返すと、嬉しそうな笑顔があった。私の答えを見透かしている様な笑顔が憎たらしく見えた。」



《間》



「はい、これで、大丈夫だよ」


鈴音

「あ、ありがとう……っ痛……」


「…足…少し腫れてる。もう少しここに居よう」


鈴音

「え、でも……」


「花火はここからでも見えるよ。あ、そうだ、少し待ってて」


鈴音

「え?…うん」



鈴音M

「先輩は夜店よみせのある方へ戻って行く。人はまばらだけどにぎやかな様子を少し離れた所から見ながら、ふと弦樹くんは告白したかな、上手くいってたら良いな、そんな事を思いながら先輩が直してくれた鼻緒を見る。

 慣れてる様に見えた。他の女の子にもした事あるのかな。急に不安になって泣き出してしまいそうになるのを堪えていた、その時。」



「お待たせ」


鈴音

「あ……りんご飴…」


「さっき、見つけたから」


鈴音

「うん…ありがとう……嬉しい…」


「何か、嫌な事あった?」


鈴音

「ううん、大丈夫……そんな事ないよ…」


「本当に?」


鈴音

「うん、ない……」


「そっか……でも泣きそうな顔してる」


鈴音

「…そう、かな…」


「…俺……妹が下駄の鼻緒が切れる度に直せって言われて、何度か直してた事があるんだよ」


鈴音

「え?」


「ん? 気にしてたの、鼻緒の事だろ、違ったか?」


鈴音

「違わない……うん、そっか。妹さんいるって、言ってたもんね……」


「そう、何度か会っただろ」


鈴音

「……妹さん、可愛いもんね。……理沙ちゃん、だっけ」


「ん。……可愛い、かどうかは、俺には分からないけど」


鈴音

「……そっか……そうだよね…」


「安心、した?」


鈴音

「うん……」


「ほら。……りんご飴、食べる?」


鈴音

「うん。……あ、花火…始まったね…」


「ああ……、綺麗だね」


鈴音

「……ここからでも結構見えるね」


「そうだね……」


鈴音

「……」


「……す、・・すず、ね……」


鈴音

「え?…あ…」


「これからは、名前で呼んで良いかと、思って。ほら、もう大学生だし……ずっと、名字なのも、おかしいかなって」


鈴音

「…うぅ…っ…」


「え、あ、あれ? なんでまた…」


鈴音

「だって金代かなしろさん…」


「倫、だよ…鈴音すずね


鈴音

「ぅ…えっと……りん、………くん……」


「……何?」


鈴音

「う、ふぇ……」


「鈴音…」


鈴音

「…わ、わたし、…倫くんが好き…大好き……倫くんが…っあ…」


「分かった。だから……あまり可愛い事言わないでくれよ。今以上に煽られると、俺が何するか分からなくなるから、な?」


鈴音

「…っ!……でも!……でも。いいよ、倫くんなら……」


「あーもう…全く……」


鈴音

「倫くん……」


「…鈴音……」


弦樹

「やぁっと見つけた!!」


鈴音

「キャ!!」


「うわっ!」


弦樹

「あ、アレレ、ごめん!」


冬美香

「こんの大馬鹿者!!!」


弦樹

「あっははは! 痛い痛い! 本気で殴らないで!!」


鈴音

「…ふ、ふええ!!!」


「泣くなよ、鈴音!」




鈴音M

「恥ずかしさのあまり泣き出してしまったけれど、先輩……じゃなくて、倫くんとは今まで以上に近づけた気がした。帰り際、弦樹くんとふみちゃんと別れた後に抱き締めてくれたし、それに……。

お互い顔を見合わせて恥ずかしかったけど、ちょっと赤く見えた倫くんが可愛く見えた事は、内緒。

 ずっと優しくしてくれる倫くんが、わたしは大好き!

ねぇ、次はどこまで行こうか…ね?倫くん。」




終わり




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