第一話 ~魔法エブリパ少女始めました~2/4
「お、おまえ!? その名を知っているとは、一体何者でやんすか!?」
謎の生き物の口にした言葉に困惑するおっさんの問いかけには答えずその生き物は向きを変え、同じく状況を掴めず目をパチパチさせている少女に話しかける。
「ねえきみ、よく聞いてほしい」
「う、うゆっ!?」
「あの包帯男はエブリパーティ仮面の一人、福のエブリパーティ仮面だ」
「エブリパーティかめん?」
「彼はぼくと同じ、こことは違う無数の並行世界からこの世界にやってきたんだ」
「え、えっ?」
さっぱり話が分からないという感じに首を傾げる少女に対し、それはゆっくりと語りかける。
「今この世界――エブリパ世界は、彼を含む4人のエブリパーティ仮面というここに居るべきでない存在のせいでバランスを失い危機に瀕しているんだ。世界を救うには彼らをエブリパーティで倒し元の世界に送り返さなくちゃいけない。そのためには彼らの闇の神力に対抗出来る穢れなき神力の持ち主が必要なんだ。そしてきみはその神力でこのメモリーユニットの封印を解き放った……頼む、きみの力を貸してくれ!」
今起きている危機とこれから行うべき事を理路整然と並べ立てる黒いうさぎに見えないこともない生き物。
そしてその言葉を聞いた少女は。
「――?????」
「疑問が深い……!」
いくらなんでも10才前後の女の子には難し過ぎた。
頭にいっぱいハテナマークを浮かべる女の子を前にして黒いうさぎ(以下ウサギ)がうーんうーんと唸り、そしてピコンと頭に電球を浮かべた。
「えーっとね、きみプ○キュア観てる?」
「うん!」
「じゃあさ、いろんな作品のプ○キュアがいっぱい出てくる映画あるじゃない。観たことある?」
「ある!」
「そんな感じでプ○キュアの色んな悪役が一度にこの世界に来てるような状況なの」
「ええっ!?」
「しかもプ○キュアはひとりも来てない」
「それって世界が大ピンチ!?」
「だけどきみだけは、この世界でただひとりプ○キュアになれる女の子なんだ」
「えっ……?」
「きみがプ○キュアにならないなら世界は絶望やら無限の闇やらなんやらかんやらに呑まれちゃうけど、きみがプ○キュアになればハッピーエンド間違いなし」
「それほんと!?」
「プ○キュアやる?」
「やるー!」
思い切りよく右手を挙手し、目いっぱいの笑顔で答える少女に、ウサギが大きく頷く。この物分かりの良さがなければ魔法少女は勤まらない。
「分かった。それじゃあきみの名前を教えてくれ」
「わたし、里見エブリ子。しょーがく4ねんせーだよ!」
「え、えぶ……?」
「みんなはえりちゃんって呼ぶよ!」
「うん、分かった。じゃあえりちゃん、それをしっかり持って」
言ってウサギがその短い足でXbox360専用メモリーユニット(64MB)を掴み、少女へと手渡す。
「これを?」
「そのメモリーユニットにはきみの神力を増幅する力が秘められている。それにえりちゃんのエブリパーティへの想いを
「よく分かんないけど分かった!」
元気よく返事をして立ち上がるエブリ子。その視線の先には『○2歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~ トキメキカレカノフォン 』を弄って時間を潰す福のエブリパ仮面が居た。
「けーっけっけっけ! そろそろ良いでやんすかねえ? 空気が読めるおいらがわざわざ話が終わるまで待っててあげたでやんすよぉ!!」
「(ひそひそ)もしかしてあのおじさんけっこういい人?」
「(ひそひそ)あれで格好付けてるつもりだから気付かないフリしてあげよう……」
ともあれ、ようやく舞台は整った。
「さあえりちゃん! いまから言うぼくの言葉をそのまま繰り返して!」
「いまから言うぼくのことばをそのままくりかえして!」
「つぎ! つぎに言う言葉から!」
そしてウサギが高らかに叫び、少女がその言葉を復唱する。
「「クロス――ハイデフィニション!」」
言葉と共にXbox360専用メモリーユニット(64MB)を握る手を掲げたエブリ子の身体をCMの最後にXbox360ロゴが表示される時に似た渦巻くように広がる幾本もの緑色の光が包み、その光のなかに着ていた衣服が溶けていく。
そしてT○KIOの『D○!Do!Do!』――2007年夏からXbox360のCMソングで使用された宇宙で最も有名な歌のテンポに乗せて宙に浮いた少女の
シルバーホワイトの衣装にライトグリーンのボニーテールが揺れるXbox360のイメージカラー通りのシルエットの完成と同時、少女のリュックから飛び出したXbox360ワイヤレスコントローラーが分解され少女の背と同じ長さのメカニカルな杖の形に再構成される。その先端に
そして杖を手にした少女が、新たなる己の誕生を告げる。
「白き箱の名のもと、ゼノンの英知をここに! 魔法エブリパ少女里見エブリ子、ジャンプイン!」
変身を終え再び地に足を着けた少女は背丈以外の全てが変わった己の姿をきょろきょろと眺め、やがて感嘆の声を漏らした。
「すっごーい……! なんだかふわふわってして、なんでも出来そうなかんじがする!」
「そうだよ。今のきみはジェット機よりも速く飛び、戦車の砲弾に耐え、ぼくがいくらやってもクリア出来なかったベテランのマイルハイクラブを一発クリア出来る。それがエブリパ少女の力なんだ」
「まいるはいくらぶ?」
「15歳になったらやってみてね」
「……け、けーっけっけっけー!」
少女の変わりように呆気にとられていた福のエブリパ仮面が、突然奇声を上げる。
「多少はパワーアップしたようでやんすが、いくらジェット機よりも速く飛び戦車の砲弾に耐えおいらがいくらやってもクリア出来なかったベテランのマイルハイクラブを一発クリア出来るようになったところで、エブリパーティの実力に変わりはないのでやんす!」
「気を引き締めてえりちゃん! 福のエブリパーティ仮面はあんな見た目だけどエブリ福を極めるべく10歳の姪に3万円のお年玉を渡して好きな物を買わせた後2万円分を没取する事で『今女子小学生が本当に欲しい自作福袋』を製作したほどの修羅のエブリパリストだ!」
「よく分かんないけど分かった!」
「エブリパリストとしての年期の違いという物をお嬢ちゃんのその身体に教えてあげるでやんす!
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