第3話 好きなもの

ボクは夢がとても大好きだ。

現実から逃げられるから、とてもとても素敵だから、

とても嫌なことを忘れられるから。

でも、今日は少しだけ違った。

少しだけ嫌で、気持ち悪くて。崩れそうで、壊れそうで。


そんなことを考えながらベッドを出た。

目覚めが悪いせいか、気持ち悪い。否、いつものことだ。

関係ないだろう。

ゴミで支配された部屋は腐っていて、異臭がする。まるで、ゴミ屋敷。

ゴミ袋に無造作に投げ込まれた、生ゴミ、塵芥。

所狭しと並べられた原型を留めていない何かがあった。

何かとは、覚えていないという意味での何かだ。

覚えていない。


これが、日常。

いつも、いつも、同じ日常、同じ光景。


私の両親とは長いこと顔を合わせてない、

生きているのか、死んでいるのかわからないぐらいだが、

起きると部屋の配置が変わっている気がするから、

それにボクはあの人達に稀に会うから生きてしまっているのだ。

そんなことがわかってしまう現状にも苛々する。

ボクのことには微塵も興味のない、両親。

たまに顔を合わせると、ボクは体中に痣をつくることになる。

痛みなんて感覚にはとうに麻痺してしまっていて、

痛みも、悲しみも、苦しみも、何もかも感じなくなってしまった。

痛みなんて感情が溢れ出したら、おかしいと自分で感じてしまうくらいだ。


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