ポリネシア地方に伝承される性行為受けたい

━━ i ━━


わたしは────動けなかった



闘技場に居るのはわたしと、変な人の形した機械が複数あるだけだった


何かが起こるのを待つかのように、シンと、静かに



──おいおいおい!俺ら一族とは別の鬼が外に居やがるぞ!!


内心騒ぎ立てるのは、わたしの中に潜む鬼だ


赤と黒のオーラが出現して以来、ずっとこの調子だ


────そんな悠長なこと考えてる場合か!!俺ら鬼ってのはな────


知ってる、戦闘狂で身内でも敵に回れば躊躇せずに殺す種族だ


────分かってんじゃねぇか!今はお前の身の安全が優先だろ?!死にたくないだろ!?


死にたくないのは、お互い様じゃん


────……っ!


それにさ、わたしの鬼さんは私の体を乗っ取って自由になりたいんでしょ?


────…バレちゃ仕方ねぇな!あぁその通りだよ!だから逃げ────


逃げない


────なんでだよ!?


私の使命を、思い出したから


────おいおい、おい!使命って…俺らの家族だけが守ってた教訓のことか?!どうでもいいだろそんなの!!


良くない、わたしたちの教訓は生まれた時からの、使命でもあって、宿命でもあるから


────チッ、ガキのくせに変なとこは守るんだな!これだからガキは…!


あの時はわからなかったけど…


────……大戦の時か、お前以外の家族はとしてたな


今ならわかるんだ、孤児院のみんな、おとーさん、おかーさん、れでいのお姉ちゃん…街の人だってそう、守りたいんだ


────…もう知らねぇ、勝手にしろよ!





そう言い残して、鬼さんは静かになった途端、孤独と静寂が襲い、目端に涙が浮かぶ


「怖い…怖いよ母様…」


本当の母様は四肢欠損で失血死をした


「父様…死にだぐないよぉ”ー…」


本当の父様は首しか残らなかった


「あ”あ”あ”あ”〜!…に”い”ざ”ま”ー!ね”え”ざま”ー!」


本当の兄様と姉様は首はなく、十字に磔られていた




泣かないと決めた日は、家族の遺体を見てからだった


それからは勝てる敵だったから、泣き言を言わなかった


泣き言を言ってしまった今、目前には機械仕掛けの人型が複数居た




そいつらは勝てる


でも、その後ろに居る赤いオーラには勝てない



「どいて…下さい」


母様に教えてもらった敬語は拙かった


「じゃねえとぶっ殺すぞ」


兄様に教えてもらった言葉はスラスラと出た


だけど、目の前の機械仕掛けは黙ったまま、行く手を阻むように立つ


「……分かった、なら、覚悟を決めて…ね?」


父様はいつもなにかする時に覚悟を決めていた



龍脈から力を借り、足元に集める


そこから跳ね飛び、目下複数の機械に向けて────


「”龍脈借・壊始之次二手目”」


着地地点を機械の頭に向け、踏み潰す



胴体半分まで陥落した機械から飛び跳ね、次の一体も潰そうとするが


「”認証確認、敵対存在として排除遂行”」


そう呟き、両腕を変形させて刃を出現させると、宙に浮く私目掛けて切り込んでくる


「…諸刃の刃じゃん」


右手に力を込め、切っ先に拳を当てると見事に砕け散り、心臓部を貫通させる


貫通したまま頭部へとアッパーすると、機械は腹部から首上を損失し、天に破片を散らしていく


「”訂正、危険度を上げます”」

「”訂正確認、危険度上昇”」

「”訂正確認、危険度上昇”」


今度は三体の機械が襲いかかる


まず一体は両腕の武器から、ピザをカットするような丸い刃を出現させ、横凪に振り回す


それを、肘裏と膝の皿で丸刃の真ん中を挟み潰すと、ひしゃげ、壊れた


丸い刃は壊れないように攻撃したため、それを持つと他の機械に投擲し、両脚を切断させ、行動不能にさせる


すかさず裏拳で、丸い刃持ち機械の頭を360度回転させる拳をお見舞すると、頭が天高く舞っていき、機能を停止させた



あと一体を目にした時には、口から光の粒子が集め終えられた時だった


ピュン!と音と共にわたしの右腕は焼かれたように切断され、闘技場を真っ二つにした


「う、う”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”!!」


叫びながらも、鬼の体の1部である切断された右腕を、左手でつかむ


ビーム持ち機械に、切断された右腕を棍棒のように振り回し、頭部を破壊した


「はぁー…はぁー…い、痛いよぉ…」


不意打ちとはいえ、見事な連携だった




────感情を持たない機械だからこそ、死を利用した連携



そこから伝わる、『勝てばいい』という意思



私と同じ発想だ


勝つためなら手段を選ばない


昼がダメなら夜に

起きてるとダメなら寝てる隙に

寝なかったら排泄中に

排泄中がダメなら食事をするまでに


これらの作戦は全ての生命に有効だった


だけど────


いや、だからこそ、私は変えていく、四肢があろうとなかろうと





ふと辺りを見渡すと、複数いたはずの機械は居らず、わたしは疑問を思考に埋める


……なぜ?、という疑問は直ぐに解明した


真っ赤な真っ赤な鎧が、目の前に来ていたからだ


━━黒━━


さてはて、状況整理と行こう


魔人と化した、極太の角が生え、身に纏っていた黒い布からチラと見える筋肉量は大魔道士に似つかわない


そんなキングは咆哮だけで血鬼を吹っ飛ばし、闘技場へと戻って行った


「…あんなんアリかよ」


”マスター!呆けてる場合じゃないですよ!”


フードの耳あたりから伝わる『クロ』からの音声信号を聞き、キングを見ると俺に照準を定めていた


「やっぱレベル下がっと、攻略するの楽しくなるなァ!」


”再度申請し直した方がいいんじゃないですか!?”


『クロ』の提案もいいが、ラクして仕事したい血鬼とは違い、俺は低レベルで挑戦するタイプの人間だ


「まぁまだこの世界で直すところあるから死ねねぇんだがな…」


”尚更じゃないですか!低レベルクリアなんてドMのやることですよ!”


『クロ』のドM発言にイラッとしたが、キングがこちらへ向かってくるので対処策を練る


「……うし、作戦プランBだ!」


”それって無計画ってことですよね!?”


「行き当たりばったりと言ってくれねぇか!」


キングは俺に向けて魔力を放つが、二丁のダブルバレルショットガンの魔力弾で相殺防御する


「フン!大戦と変わらぬ余裕を…!」


「別段余裕ってわけじゃねぇがな、相殺するにもタイミングが必要だし」


それに、常に全力の魔力弾丸を込めなければ今の攻撃を相殺できなかった



(ちとやべぇな『クロ』、感覚だが魔力8割切ったか?)


”余裕こいてるからですよ!あと1割です!『鍵屋』さんに申請送りますよ!”


「……そら、ねぇな」


俺のつぶやきに、キングはぴくりと眉を動かし、『クロ』は怒鳴る


”そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!死にますよ!?”


「”破壊英雄”よ、何が…ないのだ?」


1体と1人からちゃちゃを貰うが、俺は無視する


「まじ、ねぇわ」


俺は続ける


「2人して余裕持ちやがって、此処は戦場だぜ?平和や退治なんざに言葉並べる暇があんなら────」


俺は空を指さす


「──まずはで示せよ」


壊始かいし黒雨くろさめ


俺は魔力の発動呪文を上空に放ち、誤差なく降り注ぐ魔力攻撃の雨を浴びるように歩く


”わ、わわ!わぁぁー!”


「クーロー、てめぇがびびってどうすんだよ!」


”だ、だって急に!発動するから!うわぁ魔力が削ぎ落とされていくぅ!”


『クロ』の文句をスルーしながら黒雨を受け、キングを見据える


キングは黒雨の攻撃を多少喰らいながらも、されど避け続けていた


「チッ!小癪な真似を…!」


「あぁ、言い忘れたが…今日の天気は曇のち黒雨でしょう、ってな」


「て、天気を操るだと…っ!?グアッ!」


驚愕と同時に大粒の雨が肩を掠めたキングは、傷口を見た


「な、なんだこれは…!力が失われ──」


「黒雨は闇属性だ。この世界で失われた魔法技術だが、対象は万象問わず、全てのエネルギーを地に還す」


「カハッ!そ、それは…き、貴様も同じことだ!」


「違ぇねえ、だがこれでいい」


俺はダッシュし、キングの懐に入ると2丁のショットガンを腹部に向け、放つ


拘紫弾留まれ久遠永遠に


ガガォンガガォンと黒雨の中、響く銃声と弾は、キングの腹部を貫通せず、体内に留まる


「クッ!行動を制限され懐に入ったか……しかしこの肉体はそのような魔力弾は通用…────?」


2丁のショットガンを捨てるとフードコートに溶け込み、俺と王は黒雨の降る中、その場に留まった




否、留まることを余儀なくさた


「う、動けぬ!何をした破壊力英雄ぅ!!」


「原因は俺の放った弾丸、効果は対象のその場での拘束、代償は攻撃した側の────その場での拘束」


王はそれを聞き、焦り出す



「ふ、ふざけるな!!”破壊英雄”よ!貴様も力が奪われるのだぞ!?」


「てめぇからして、敵になる俺の心配なんぞ無意味だろ。その場での拘束とはいえ、動けねぇ部位は足裏だけだ。対策はしてあるよ」


俺は空間魔法から、大量の魔法瓶を黒雨と土の混ざった泥の地面に落とし、王と目を合わせる


「な、何をしている…」


「今落とした魔力瓶にゃ魔力回復の薬液が入ってる…拾い、飲めば、1発で魔力は全快できる」


王はそれを聞き、直ぐに拾おうとするが、手を止めた


それを見て、俺は助言する


「安心しろ、この狼の被り物を被らされる以前に、金龍ティアをボコボコに殴って削ぎ落とした、ドラゴンの血肉ふん尿が混ざった劇物だ。人種が使えば前回以上の効果を得て肉体は破裂するが、俺や血鬼アイツ、龍や魔人のお前なら死にはしねぇよ」


俺の言葉を受け、黒雨が振る中を必死になって瓶を拾い、握り潰して浴びようとする


「こ、これで私はまだ──」


「阿呆、身体に浸透するまでに黒雨が落とすわ。だからぁ、この状況だとぉ、経口摂取しかねぇよなぁ!!」


俺はすぐ様、黒雨による魔力が削ぎ落とされる中で瓶を拾い、狼口から飲む


「ングっ、プハー!クソ味!まじい!もう一本!!」


「く、クソ!……ゴハッ!?」


俺は瓶を拾おうとする王に、顔面に暴力を奮った


「動けねぇのは足裏だけ…あとは、分かるよな?」


俺と王の距離は、超至近距離インファイトメートル


それを理解した王は魔力が尽きかける中、魔力を含む殴打で応戦しだした


俺の繰り出した右拳を、力なくなった左腕で逸らし、俺のボディに反対の拳を当てる


「ガっ!やるねぇ!」




互いに体を逸らし、俺と王は額をぶつけあった


こうして、俺たち黒獅子とキング、フードコートだけになった『クロ』の2対1の殴り合いが始まったのだ



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