話題に上げておいてキーキャラでもない奴いるよな、あれなんだろう?

━━Z━━


「来ないのであれば、こちらから行くぞ!」


熱くなるアカナムに対し、一方の俺はアカナムを見続ける



距離を取ったので、アカナムが来るということは魔法か、瞬間移動による転移からの攻撃か



大剣を盾にし、俺の姿を少し隠す


アカナムから見れば、少し顔と足が出てるように見える感じか



大剣を盾にした姿勢から、アカナムは何かを感じとったのか、警戒を強めてきた


「ふん、カウンター狙いであれば間違いだったな!『強襲の鞭打』!」


アカナムが魔法を唱えると同時に、背中から破裂音と強い刺激が襲う


「…っつぅ!」


痛みが走ろうがアカナムから目を離さない


アカナムが突っ込んでくる



「行くぞ!『土人達の住処』!」


『従』属性の鞭攻撃は、得意属性ではなかったのはわかっていた


では次にくる『土』属性は?




足元がぬかるみ始める


少し体勢が崩れるのをアカナムは視認し、それを隙に突きを繰り出してきた


顔を逸らすと横に過ぎる一刀


大剣を盾にした為、アカナムから見える少ない急所を狙ってくるので、俺は躱していく


「降参ならば受け付けるぞ!」


「……っ!」


アカナムが次々と送る突きに、左足にその一刀が深深と貫通する


痛み、苦痛に顔を歪めるが、脚の筋肉の間だったので、半歩ずらすことで、抜くことを困難にした



仕方なくアカナムは、移動して抜く


俺はその瞬間を逃さなかった



脚は貫通したまま


されど俺は、脚に剣を刺された状態で前進する



焦るアカナム


「正気か!?」


「どうせ魔医者が控えてんだ!どうってことねぇ!」



大剣越しだが、アカナムの胸ぐらを右の手で掴む


「これで魔法撃てねえだろ?」



大剣を除け、アカナムのデコに頭突きをかます


1度、2度、3度…幾度となく繰り返しぶつけるとアカナムは顔面が崩壊し、鼻血を俺の頭にかけながらも気絶し、倒れた







“な、なんという力技!Z選手!掴んだと思いきや、頭突きを繰り出し!見事アカナムを倒したァー!“



アナウンスが響き、観客が沸く


勝った


だが……まだ初戦


すぐに医務室に行かないと…



あり?


地面が目の前にある…



あっ



「よく頑張ったな、及第点には届かねぇが」


親父から声がしたのを最後に、俺も気絶した






━━i━━


Zにぃが医務室に運ばれてきた


気絶してた


頭突きしただけなのに、おでこは血だらけ


情けない、とは思わなかった


人種や異人種の違いは、わかってるつもりだし


相手の鎧くんだって、Zにぃとは互角か、少し上だったし



「おつかれ、Zにぃ」


気絶して眠ってるZにぃの横でつぶやくと、心の底から声が聞こえてくる


『お疲れだァ?雑魚と雑魚がぶつかりあっただけだろ?よえぇ奴なんざに声掛けても仕方ねぇっての』


それでも…Zにぃは、Zにぃだ


頑張ってたもん、ねぎらいっていう言葉?も必要だと思う


『アホくせぇ、家族ごっこなんざクソ喰らえだっての。てめぇも覚えてんだろ?ここに来る前のことをよォ』


覚えてない、知らない


『とぼけんなよ。俺らの一族滅ぼされた原因、実の親とか笑えるだろ』


初めて知った、すぐ記憶なくなるけど


『じゃあ聞いとけ、『ノギロ』っつー国が妖怪を滅ぼしていって、追い込まれた鬼達は一家心中し始めたんだ』


そうなんだ、すぐ忘れるけど


『戦って死ぬのが“鬼“だってのに、弱虫だよなァ!』


弱いのは良くない、けど強くなりすぎても良くない


『アホか、力こそ全てだ。この世界ってのはな』


力が、支配する世界


『そうだ、知識なんていらねぇ。殺す知識は必要だけどな』


つまんない


『今はそう思うかもしれねぇが、楽しく感じてくるぜ?っと、じゃあな』


あ、消えた


「i、顔色悪いが大丈夫か?」


おとーさんが声をかけてくると、心の声が消える


「ううん!大丈夫だよ!」


心配かけたくない


「そうか、腹減ったらまた言ってくれ。iの初戦はまだ先だ」


「もう!腹ペコキャラじゃないんだよ私は!」


だから、心配かけないように


「はっは、それもそうだな。で、何買う?」


偽物の笑顔をつくる






「さっきの肉団子100こ!!」




━━(^・ω・)y-゚゚゚━━


Zは勝ったが倒れた


医務室へ運ばれるが…俺はまだ見舞いに行ってない


行きたくない


医務室にいるのが“院長“だからだ


「おとーさん、様子見に行かなくていいの?」


問いかけるはiだ。団子もう食い終わってる


「はえーなおい、俺の財布を空にするつもりか」


「そんなつもりは無いよぉ!でも美味しかった!」


「さいですか」


タバコをふかしなから、医務室を目指す


「やっぱり心配?」


「“院長“が看てんだ、それはねぇけどよ」


「私は心配だなぁ」


「だから向かってんだよ」


「以心伝心──っ!!」


「違うけどな」



武闘大会1日目だが、初戦全てを初日で消化するためか、昼過ぎから俺とiが出る



別にハンデということで、噛まれた右手が使えなくてもいいんだが…俺が出るのは周知されてる


当然、“院長“も観るだろう

怪我を見つけてうるさく言うだろう


「……」


「おとーさん?」


「俺大会棄権していい?」


「ダメー!!優勝決定戦で戦うの!」


「すっごい棄権したくなってきた」


「もーー!!」



医務室前で叫んでしまったので、医務室のドアが開く


「来てるなら早く来てください“タバコ屋“さん、病人に影響しますのでお静かに」


「相変わらず綺麗な小麦色の肌してんな、エルフ耳もとんがってて素敵だぜ」


「似合わないお世辞は皮肉ですよ?中に入って下さい」


お世辞で誤魔化し作戦は、失敗だった



と思ったらエルフ耳がピコピコ動いてる


…わからん


「うちのガキの容態は?」


「安静にしてます、ですが初戦でこんな飛ばしてたら体もちませんよ」


「起きたら強く言っててくれ」


「はい、では“タバコ屋“さん、手を」


ポケットに突っ込んでいた手の怪我を見破られた


「バレてたか」


「丸わかりです、さ、看せてください」


渋々ながら、手を見せる


「……」


「沈黙がこえーぞ、何も言わずに治してくれんならそれでもいいが」


「はぁ…『回復の息吹』」


「は?おい!『回復』で良かったろ!?息吹付きなんてやりすぎだ」


「それだけ心配してるってことです!もう大丈夫ですよ」


流血が止まり、皮膚が再生し、見事に元の人間の手に戻った


「はぁ…頭おかしいだろ」


「飼い犬に手を噛まれた人に、言われたくありません」


「俺はオオカミだ」


「あ、そっちですか…」


“院長“は呆れるが、話を切り替える


「“タバコ屋“さんの初戦まで時間ありますが…」


「まずこいつからだから、観ねえと」


iの頭に手を置き、撫でてやる


食事中とは違い、今では撫でることを受けつけている


「時間はありますが?」


「ガキの目の前でやることじゃねぇたろ」


抱擁以上にキスまで求められそうだ


「…………………………………………………………………………………………わかりました」


「間が長すぎるぞ!?……まぁ、納得してくれんならそれで構わねぇが」


「なんのお話ー?」


「この治療する人が、無性に俺の事好きすぎて抱き着きたくなるんだとよ」


「私も抱きつくー!!」


「うぉわっ!」


不意打ちに脇から突進かましてくる


“院長“のいる方向から舌打ちがしたが、気のせいだろ


「まぁ、なんにせよ…Zが欠損せずに生きてたことが救いだ、ありがとうな」


「いえ、それほどでも。ですが、報酬はまた後で受け取ります」


「諦めろよ少しは…じゃあもう行くぜ」


「もう少し長居しても構いませんよ?」


「行くっつってんだろ長耳!?」



医務室から出るまで、iに抱きつかれたままだった


始まるまでに離れてくんねぇかな…



━━i━━

試合が始まるまで、ぼんやりしてた


だが私の中は騒ぎ始めてる


『そろそろじゃねぇかァ!?楽しみだなぁオイ!』


そうだね


『始まってからすぐフルパワーでいくぜ!!』


作戦もくそもないよね


『辛辣だがァ!それがいいんじゃねぇか!まぁだけどよ…』


ん?しょんぼりしてる?


『アァ、殺せねぇのはちと物足りねぇと思ってなァ!』


あっそ


『んぁ!?ソロソロだ!行こうぜ『ノギロ』へ!!』


…っ!五月蝿い!


「準備はいいか?」


「お、おとーさん!?」


「なんだよ子供みてえに驚きやがって」


「えぇ…子供なんだけど私」


「そうかい、行くぞ」


おとーさんは言い放ってから直ぐに医務室から出ていった


「私も…頑張る!」


『頑張ってぶち殺そうゼェ!』


中のアホ、消えないかなぁ



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