美を追求するのに下品を知らねば、たどり着けない

黙っていたガモンが、変形し始める


━━( ≦◎≧)━━


私の一族は、前の世界での出身だ


前の世界で、人種の異形は、生まれてすぐ死んだり、成人を迎えれずに死ぬのが殆どだった


「グル……ル…」


変形を遂げた化け物が唸る


私の父は80と高齢だが、下半身は元気だった


祖父は100を迎えて死んだ


私の一族で運良く生理を迎えた女児は、父や祖父の精子を受け、孕む


危険だが、私たち一族はそうしなければならなかった


「オオォォオオギャァァァア!!」


他の異人種や、世界の融合したあとの人種との交配を試したが、殆どが私たち一族の血に耐えきれず破裂した


外部の人間で器となれたのは、祖父の記録からしても、10名にも満たなかった


なので、近親相姦に頼るしか道がなかった


異形生まれの悪評に、啄まれるアイギス一族


『カトリーナ』では近親相姦は死罪だが、貴族ということもあり免除されていたと思う


「ガァ…ァ……?」


故に父は、その状況に甘んじて、孕ませていった



近親相姦による生まれた子供

アイギス一族同士では女児しか生まれず


外部の精子を受けるか、卵子を提供できれば、子を成すと男児が生まれる


「ギ…ガ……ァ……ッ!」


私の姉は100人を超えていたそうだ


見たのは一人しかいない


他は墓の下だ


「ガァッ!!」


迫るガモンだった獣、まるで快楽に溺れた父のようだな


軍刀を抜く


「ふっ!」


切り上げ動作で、右の肘を切り落とし


身体を回転させ


両手に持ち替え、バットを横振りするように、胴を真っ二つにする



「私たち一族を…“壊して“くれたのは“タバコ屋“だな…ありがとう」


思いついたことをサラッと言ってしまった


この身はもう20を超える


いつ寿命が尽きてもおかしくはない



ガモンが3つに増える


「増殖するのか…。腕から一体、切り離された胴から一体ずつ」



私の命が尽きるのは、いつかわからない


たが、尽きるのであれば


「戦にて、命を散らせたいものだ」


名残りがあるとすれば、唯一、私の死んだ姉が、父に黙って外部から精子を受け、男児を孕んだことか


弟というものは、中々可愛らしいものだ


「「「グァァ!!」」」


三体、同じタイミングで襲いかかってくる


一体は避け

一体は心臓を突き刺し

一体は人中を、上から刺していく


距離をとり、観察する


一体は、他二体を無視し、迫る


人中を突き刺した一体は、体が肉片と化し、崩れる


心臓を突き刺した一体も、体が肉片となり崩れ落ちる



人中を刺した一体や、心臓を突き刺した一体に関しては、増殖魔法の原因を確認したに過ぎなかったが


「私の相手がこれだと、物足りなさを感じるな」


部下四人は終わりを迎えている


ここに集まるザコ敵の数は少ないようで、次々と拘束されていく


「部下が頑張っている、私も負けられんな」


帰る家もある、待つ弟もいる


守るものがあるというのは


力をさせてくれる


「そういう意味では、ガモン、私と貴様は似ているかもな」


情報ではガモンは1人の娘に惚れていたようだ


その約束を守りたいか、はたまた国のために、国を守るために戦うか


────、一文字違いか




しかし、弱い


一突きで終わる敵に、頭が冷えていく


冷静、故に、慢心が生またか




迫る最後の一体、その心臓を貫く


「私が1番か、ほかのふたりの援護に向か────」




呟きは、爆発音と共に消え去る


鼓膜が破れる


飛び散る肉片は軍服を掠め


破裂した際の骨は、乙女の柔肌を貫く


勿論、ガモンの体全てが爆発したので


単眼の顔面に、ガモンであった顔の、骨パーツが


額、頬、瞼、眼球、唇を貫き、歯、鼻、顎、首


それぞれをぶち撒かれた





「あぁっ!!」


情けない発声、聞かれただろうか


爆発する瞬間は見逃したが、飛び散る肉と骨の欠片は音速よりも遅い


聞いて半歩後ろに下がった為、致命傷は無い


痛いことに変わりはないが



「つぅ…やってくれるな!……なっ!馬鹿な!」


周りを見渡すと、100を超える変形後のガモンの姿


「肉片からも……増殖するか」


しかも100体全員が爆発するおまけ付き




しかし、疑問だ


爆発系魔法はガモンの得意属性にあったのか?


答えは部下の報告と、“隠し屋“ことシャドの報告を思い出し、解決した



────聖属性を使うと聞いた


聖属性強化系魔法を確認したと言われているが…


「…『聖爆』、か」


もしも攻撃魔法も使えるのなれば、簡単な『聖爆』から、『聖なる神の放屁』といわれる上位ランクまで扱うことも視野に入れなければならない



────厄介か



体に刺さる破片から、黒い煙が立ち上がる


「やましい事があれば反応し、浄化という名義で対象に内部攻撃を行う、だったか」


それが当たりなら、やましい事は無いはずだが…


いや、あったな、ストーカー行為とかしてたな私


「だが、この程度…なんてことは無い」


ちらと、“タバコ屋“が吹っ飛ばされるのが見えた


壁に入るクレーター


将軍のほうが楽そうだな…



「『光壁』!」


将軍の放った風の衝撃を打ち消す


だが、興味が無いのか将軍はこちらを見ない

私は“タバコ屋“を煽る



「“タバコ屋“!なにをチンタラしているのだ!さっさと倒してくれないか!こちらは防戦一方なのだぞ!」


叫ぶ私


余裕あんじゃん、と口を動かすのが見えた


自然治癒力は私には無い、故に鼓膜は破れたままだ


だが、これで集中できる


窮地に追い込まれるからこそ、人は、人種は、異人種は


────強くなれる


「ふんっ!」


背後から迫るのは分かった


足から伝わる振動


それで充分


心臓を突き、蹴り飛ばす


爆発し、増殖する


右から来る


両断し、突き飛ばす


爆発、増殖


切り刻み、突き飛ばす作業の繰り返しだが


『無双』とは、こういう感じなのだろうなと思う



作業を続け、確認する


「やはり、1000いるガモン…人体の面積は小さくなるか」


元の身長が2mだったか?


今では半分の1m程だ



「小さくなるまで刻んで──────っ!?」


不意に窓の外を見てしまった


窓枠にいるのは、ガンアス司令官だったか


“タバコ屋“は司令官に銃を向け、警戒している


そして落ちるのは


「シャドォォォ!!」




その叫びが仇となる


左腕を掴まれた


振りほどくが遅い


右脇腹にタックルを喰らう


バランスを崩し、倒れ、他のガモンもなだれ込んでくる





ひとつの山となっただろうか



上に乗る一体のガモンが


笑う





膨らみ



爆発した



━━(*´∀`*)y━━


シャドの胸ぐらを掴み、引き上げる


「首閉まってるから!閉まってるから!」


「うだうだ言うな!一瞬見たがアイギスお嬢さんがやべえ!」


「なんだとっ!?」


シャドを引き上げ、アイギスお嬢さんの方を見ると、山のように積まれたガモン達が爆発した


「おいおい…全部『聖爆』じゃねぇか…」


「質量含む爆発なんぞ一溜りもねぇぞ…っ!」



研究室の中が『聖爆』の影響による光の粒子で白く充満している中、部下4人は爆心地に近ずき、白い視界の中を懸命に捜索する


「オレ達はどうする?」


「探してぇのは山々だが」


「山みたいに積まれてたからな…」


「……」


「わかった!もうふざけないから!顎を撫でるのはやめろぉぉ!」


こいつ、この状況下でよくも悪ふざけが出来るものだ


俺も人のこと言えないが



「博士が消えた」


「は?んなこと……本当にいねぇ」


「爆発に紛れて雲隠れか」


「出てるのは『聖爆』の白い煙…すまん!もう揚げ足取らないから!撫で……んにゃー…」


「爆発しても増殖続けてんだ、部下4人が危ねぇ。博士は諦めて助太刀するぞ」


「わかったにゃー…」


このトロ顔本当ムカつくな、ヒゲ引っ張ってやろうか


「いててて!髭引っ張んなや!おい!痛いって!」



ヒゲを引っ張りながら連行しようとするが、振りほどかれたので仕方なく先行する


増えるワカメ…違う、増えるガモンを片っ端から蹴りつけ、壁にぶつける


「“隠蔽屋“、お前は装置の電源切れ。わかんねぇならコンセントごとやっちまえ」


「“タバコ屋“、お前まじ電機苦手だな。ノパソ扱う俺ぞ?何とかしてデータぶっこ抜いてやる」


「俺の目的と言ってることが違ぇ!出来るんだろうな!?」


「任せろって!喉乾いたけど!」


そう言いながらも収納魔法から『天然いlotus』を取り出し、飲みながら装置に向かうのを眺める





来る

蹴る

弾ける


「部下共、危険だから下がれ」


魔力を見る


ガモンの魔力は白い

聖属性特化の為だ、山のように積まれているため真っ白だ


その中から探知系魔法色の灰色を探す


見つけた



引っ張り上げる




そして、戻す



「“タバコ屋“様?!なぜ戻されるのですか!?」


「男二人に女二人の部下4人編成、ね」


「は??」


部下の1人の疑問を他所に、上着を脱ぐ俺


「今ね、気絶してるけど全裸なの。これ以上言った方がいい?」


「も、申し訳ありません!2人、頼む!」


女性部下ふたりが、アイギスお嬢さんに俺の上着を羽織らせる


そして、戦闘の邪魔にならないように、隅に寄せた



「“隠し屋“ァ!どんな調子だァ!」


「こいつ!アレだ!装置切るとデータ全部消える仕組みになってやがる!」


「頑張れや!今アイギスお嬢さんが全裸にスーツ羽織ってるだけぞ!」


「マジかよ!やる気出てくるわ!!」


耳とフードコートから出てる尻尾がすんげぇ振ってる


変態かよあいつ


「写メ撮っとけ!写メ!馬鹿にしてやる!!」


「お言葉に気をつけてください、“隠し屋“様」


「…はーい」


「伸ばさない」


「はいよ!分かったよ!馬鹿にしない!それでいいだろ!」


「宜しいかと」



部下の男ひとりが、シャドを言葉で抑え込んでる…怒らせたらこえぇな






その後、窓の外から光の柱が発したと同時に、シャドによるガモンの増殖が止まり、戦闘が終わった



……なんの光だったんだ?

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