死ぬ時は畳の上がいい、フローリングとかダサいわ
“堅土創“こと、ガモンがアジトに戻ってきたのは、四日目の俺が、朝6時に起きてから1時間経過した朝7時だった
重度の外傷があり、フラフラになりながらも帰ってきた
部屋に入って倒れたので、そのまま放置でもよかったが色々思考を巡らせた結果、死んだら困るかなって感じで適当に看病した
ガモンが目を覚ましたので、声をかける
「よぅ、死に体。いい夢みれたか?」
「冗談が過ぎるぞ“ヤニカス“、こちらは散々な目にあったのだぞ?」
「あ、やっぱ俺は“ヤニカス“なんだな…まぁ、そうか、俺は楽しかったからいいけど」
戦闘機は海の藻屑だが、中々楽しい思い出はできた
「自分は監視を続けていたら国の暗殺部隊に出くわしてな、相手するので少々時間を取られてしまったのだ」
「場所はつきとめたか?」
「魔力探知も使い、精霊にも協力してもらって…場所は見当がついてる」
「見当がついてる、だけじゃダメだ。確実につきつめろ」
「酷なことを言う、だが承った」
暗殺部隊に追われてたことが事実か否かは判断できないが、傷は本物だ
俺も不意打ちには気をつけよう
「俺は飯食ったら次の目標に向かう。傷が治り次第、“堅土創“も追跡を始めろ」
「了解」
ドアを叩く音が響き、声がした
「入んぞー、飯持ってきたぞ」
こちらの返事を待たずに、3人分の飯を抱えたシャドが入ってくる
「腹減ったぞー!めしー!」
「行儀わりぃぞ“タバコ屋“、いただきますくらい言えよ?」
「『ノギロ』の風習なんか知ってんのか“隠し屋“、博識だな」
「完全鎖国を決めた少し前に、『ノギロ』にいるダチに世話になってな。靴は脱げやら、座り方やら、食器の持ち方まで仕込まれたよ」
「NINJAとかいなかったのかよ?」
「ばっか、『忍びの技』使えるやつですら滅多に会えねぇのに、風魔一族や、猿飛一族なんて滅んでるも同然だぞ?」
「それもそうか、まぁ鎖国しやがった今、『ノギロ』国内で何してるかわかんねぇしな」
「小さな島国とは言え、変に経済力持ちすぎて扱いにくいしな。昔はドルやユーロが基本だったのに、鎖国始まっても円を使えるほどの影響力だ」
「しかも島国に住む者達、殆どが戦闘狂と噂に聞く、まことか?」
ガモンが口を挟んできた、シャドは首を横に振る
「それは無い。世界が融合してから、真っ先に平和的解決案を出したのは『ノギロ』だった。そんなヤツらが戦闘狂だったら、俺を含めた異種族は根絶やしだったぞ」
「てぇ事ァ、“隠し屋“は『ノギロ』に4年居たのか…鎖国決めたのは大戦後だったよな?」
「だな、来るもの拒み、去るもの拒まず…小さな島国で何があったのやら」
どうでもいいけど
話を切り替えよ
「話逸れたな、飯食ったら俺は出るから…お前らは指示通り頼むな」
「私こと“囚人A“はやる事分かったが、“猫男A“はどうするのだ?」
「目的を果たした“ヤニカス“の回収と、ガンアス司令官から持って帰ってきた情報の確認だ…後者がメインだな」
「俺はおまけか!…いいけどよ!」
「んじゃ文句言うなし、情報まとめんのも一苦労なんだぞ…食器片付けっから、皿まとめろ」
「いい嫁になりそうだな」
「どちらかと言うと主夫だろう?」
「飯作ってねぇから俺、あとおまえら黙れ」
食い終わった食器をまとめ、シャドに渡して俺は部屋をあとにした
次の標的がいると思われる目的地の、バーガー屋にたどり着いた
朝ということもあり、学生、リーマン、OLがモーニングショットをキメてる中、1人の客が座る席を目指す
簡素な丸テーブルに椅子2つあり、相席するように座る
相手を見据える
「誰だ」
標的は下を向きながら、黙々とモグモグしている
俺は黙る、デザートイーグルを取り出しながら
銃口を向ける、まだ気が付かない
「ここでどんパチする気か?」
やはり気づいてた
だが、俺はだんまりを通す
「だんまりか。情報通りであるならばオオカミ頭が他の2人を殺した中、次は私だろうとは思っていたが、正解だったようだな」
先を促すように、デザートイーグルを机に置く
「老人の話に耳を傾けるか…良い、良い心がけだ」
老人は名を告げた
「知ってると思うが、俺の名前はサイアス、元は小さな人身売買をしていたが、大戦をきっかけに大きくなってしまってな」
サイアス自身は“小さい“とは言ったものの、サイタスの先祖が人身売買で年収10億は稼いていた
サイタスの家系は見事に先祖の血を継ぎ、戦闘技術は無いものの、頭の回転は代を重ねる毎に、人類の限界点まで成長を遂げていた
「祖父は、俺かガキの頃に死んじまったし、大戦に巻き込まれた親父も死んだ。名が大きくなったのは俺の代からだったから、仕方なく与えられた席に着いた」
稼ぎが多くとも、名を伏すことは出来る
サイアスの先祖たちは、上手いこと名を広げることを躱していたようだが…
サイアスが言うには、仕方なく着いた席は、他の貴族達も敬遠するほど嫌な席だったらしかったが、嫌悪することも無くサイタスはその席に着いたようだ
「席に着いてからも順調だったよ。この6年か、街の人間を攫っては売って、気に入ったおなごは調教し、貴族に売り捌いたりもして…それはそれは順調だったよ」
サイタスは顔を下に向け、食いながら続ける
「事に気づいた時には遅かったよ、俺も利用されていたことにな。“君は有能だ、計画に参加してくれ“…計画の内容聞いた時は、愕然として年甲斐もなく枕を濡らしたよ」
計画の内容知らねぇけどな
「俺だけに渡された気付け薬は、すぐ量産したよ。攫った『ウィルマ』の、人間の洗脳を解いてこの国から出したさ」
この情報は資料にはなかった
俺はもしかしたらと思って、デザートイーグルを机に置いたが、正解だった
資料の傾向を見てると、1年前辺りから、人攫いが大量に数値に出ていたためだ
2人には黙っていた
「真実は貴様の想像に任せる、“破壊英雄“」
「飯、冷めちまうぞ。薬も必要だな」
「っ!」
顔を上げるサイタス。目には驚きを隠せていなかった
「その話を信じるか否かは、俺の妄想次第だ…まだ言いたいことはあるか?」
「いや、その、だな…本当に“破壊英雄“なのか疑ってしまうな。まぁ、あぁ、あと別れた妻にも謝罪はしたかったな」
別れが、『逃げた』か『逃がした』かは別にいいが、別れ際は相当だっただろうな
「“破壊英雄“か決めるかはてめえ次第だ、だが妻を探すのは手伝ってやる」
「本当か!?」
「ただし、過去の罪からは逃れられんからな。人身売買はここの国以外は非合法だ、悔い改めろ」
「あぁ、わかっておる。妻は大戦後に行方をくらましてのぅ」
俺の想像全然外れてた、逃げた逃がしたとか、関係ねぇじゃねぇか
「……そうか、見つけ次第連絡をよこす、あんたはこの国から出ろ」
「なぜ、と聞きたいが聞かないでおこう…分かったわい」
「そんでな、殺した証拠品が欲しいところだが…」
「ではこれを持っていけ」
そういってサイタスは胸に掛けていたペンダントとドッグタグを俺に寄こした
「これはてめぇの形見か?」
「ドッグタグは俺の親父の形見だ、ペンダントには俺と妻が一緒に写っている写真が入っている。それで妻を探してくれ」
「いいのかよ?」
「手元に戻ってくればいい、ちゃんと返せよ?────墓に埋まってようとな」
「サイアス……っ、お前まさか!?」
俺は周囲を警戒する、だが敵意はない
────俺に敵意はない
「“破壊“とついた“英雄“に名前を呼ばれるとはな、一生の宝だ」
サイアスが立ち上がると同時に、横の窓ガラスが割れ
側頭部
頬
顎から喉仏
肩から脇
サイアスはそれらに複数の銃痕をつけ、倒れた
店内に広がる血溜まりを無視して、俺は伏せ、サイタスの元に寄る
「おいサイアス!死ぬんじゃねぇ!」
「…年寄りに…酷なこと言うんじゃねぇよ…、それ、ちゃんと墓場まで持ってけよ?」
側頭部に弾丸が入ったようだが即死ではなかったようだ
「あんたは生きて当然だ!生きて罪を償え!」
「もう無理だ、なーんも見えん…真っ黒だ」
店内では未だに銃弾が乱射され、壁に銃痕をつけていく
客や店員は即死して、血の花を咲かせている
息絶えたサイアスの口は
笑っていた
「フッ…ハハッ、アハハハハハ!!」
それに釣られて俺も笑っていた
────悪は善を壊す
声を出して笑いたかったが、銃声が止まないことに苛立った
「黙れェエエアァァァアアアア!!」
窓際だったので、すぐさま外の銃口から出る弾の音を聞き分ける
銃口から出る音を聞き分け、全部で8つ確認する
1人を目視する
迫る弾丸を急所から外しながら
それでも銃弾を喰らいながら接近し、ブーツナイフを取り出し、下投げで投擲する
喉仏に命中した1人は、もがきながら崩れ落ちる
次は左を見た
3人が突っ立っていたが、驚愕か否かは別として3人は気を取り直し、銃口を俺に向ける
引き金を引く指の動きを見て、右斜め前に走り、出てくる銃弾を避ける
1人の懐に入り、ブーツナイフで腹を横に裂き、腸をぶちまけ、出てきた腸を纏めて引っ張り、力任せに傍にいた1人にぶつける
人間ひとりの重さに耐えきれず、倒れ込む1人は、接近しナイフで首を刺す
腸をぶちまけたやつはショック死した
あと4人
顔を上げ右を見ると、4人のうちの1人が撃ってきたので、腸の出てる死体を盾にしながら突っ込む
貫通した弾が腕や頬を掠めるが構い無しに死体と一緒に倒れ込む
銃を奪い、右にいる2人にダブルタップで頭を撃つ
左にいた一人はナイフを投げ、眉間に刺ささり即死
下に倒れたやつは、腸の死体が重なったまま顔面を殴りつける
右拳、右拳、右、右、右右右右右右右右左左右右右右右右左左右右右右左右右右左左右左右左左左右右左右左右左左左右右右左左右左左左右左右左右右
「アーッハッハッハッハッ!!」
朝マックから始まって、日が暮れるまで笑いながら殴ってた気がする
気分が落ち込みながらアジトに戻った俺は麻袋に、人が入るほどの大きさを抱えて部屋に入った
「おかえり“ヤニカス“、サイアスのオッサン生かしたろ?」
「“隠蔽屋“、その口調だと知ってたようだな」
俺が敢えて“猫男A“から呼び名を変えたことで、シャドは顔が引き締まる
「隠してたことは悪かった、“タバコ屋“を試したかったんだ」
「その事はいい、問題はこの袋の中だ」
袋をおろし、確認させる
中には老人の銃殺死体が1つ
「おい、こりゃ聞いてねぇぞ。死因を見るに“タバコ屋“じゃねえのは分かるが…」
「情報漏れか、俺がつけられてたか、だな」
「後者はありえんだろ…“タバコ屋“の尾行なんざ、世界中探してもいねぇ…はず…、待ち伏せもあるか?前者も考えにくいが…」
「改めて情報漏れがないか注意してくれ。あとはガンアス司令官から盗った書類やデータはどうなった?」
「資料にまとめた、これだ。やってることは真っ黒だが、完全に別件だ」
まとめた資料を、俺に投げ寄越す
受け取り、速読だがチラと見て無関係だと把握する
「そうか、これは俺が帰るときに『ハルバード』連中に見せる。参謀あたりに投げりゃ喜んで引き受けるだろうよ」
「涙流しながらな」
「感涙か」
「悲涙の間違いだろ」
軽口を叩きながらも、話を戻す
「…話が逸れたな」
「逸らしたのは誰っすかね」
「知らんな、ラスト殺しに行く。オマケもな」
「いいのか?オマケは姫さんに告白するため、協力してんだろ?」
「そんなもん嘘八百だな」
「お前が言うな」
シャドの言葉を境に支度を始める
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
飛行船と言えば、ファンタジックなイメージがあるじゃろうか…
わしはその飛行船の待合室で、茶を啜っていた
この飛行船を扱う団長、異種の中でもプライドの高い『鳥人』に用があるからなんじゃが…遅い、遅すぎるのじゃ
まぁ、でも、考えても仕方の無いことではあるものの、飛行船に飛び乗って“団長に用がある“と飛行船におる戦闘員に言ってから30分は待たせれている
舐められているのか?とも思ったのじゃが、プライドが高い分その可能性はあるかもしれない
大戦時に出会った時は手のつけようがないほどプライドが高かった為、指示を出すのも一苦労じゃったが…今回の話し合いも面倒になりそうじゃ
ふと、待合室のノックが響く
やっと来たかと思えば、ドアから入ってきたのは人種の女子だった
「団長はどうしたのじゃ?」
「え、えぇと、急に病に伏せられまして、今寝ているので帰せと──」
「あヤツめ…っ!嘘をつくのが下手になったものじゃな!」
その人種の雌の言葉を遮り、待合室から飛び出たわしは、団長が寝ている場所に急ぎ向かった
そして、そこに居たのは複数のおなごを侍らしてイチャイチャしておる鳥人が1匹
「…わしも混ぜて欲しいもんじゃなっ!」
わしは鳥人に甘えた声で言葉を発すると、それを聞いた鳥人の団長が言葉を返す
「ん?あぁ、好きにしろ。僕はいつでもウェルカァァァァアアアア!?なんで“金龍師“が居るんだ!?帰るように言ったはずだぞ!?!」
「バカタレ!何が病に伏せておるじゃ!!その性根叩き直してやる!!」
「や、やめ…誰か助け──グェェェエエエ!!」
団長の頭にげんこつを浴びせ、気絶させるのに時間はかからなかった
──────────────────
少しして、団長は目を覚ます
「……はっ!クソトカゲが俺の頭ごと食い散らかしたかと思った…夢か」
「…現実にしてもいいんじゃよ!?」
「ヒイィ!ごめんなさいごめんなさい!いい子にしますから!」
根は悪くないと思うんじゃが、大戦時から何も変わっとらんのぅ、こ奴は
「き、気を取り直してなにか用事があってきたんだろ?“金龍師“様」
「様付けはするな、反吐が出る。特に貴様はな」
「あっはい…」
意気消沈してるところ悪いが、直ぐに本題に入る
「“黒獅子“の記憶が取り戻しつつある」
「なんだって?そら本当かい?」
考える素振りもせず、即答した鳥の団長
白々しい、知ってて言ってるようにしか聞こえんぞ
わしは、団長に向けて“嘘をつくな“と言わんばかりに睨みつける
“影エルフ“が『闇夜の情報蒐集暗殺部隊』とすれば、こ奴は『世界の情報機関』と呼べるほど、情報管理に精通している
そやつが何も知らずに飄々と『知らない』などと簡単に言うはずがない
「わ、わかったよ…だからその眼で睨みつけないでくれよ…」
「分かればいいんじゃ…して、奴のことをどこまで把握しておる?」
「ん?あぁ、今“黒獅子“がある国で暴れてるくらいだな」
団長の性格上、深入りすることは無いのでここまで把握していれば警告するまでもない
「そうか、動向を確認してくれるのは助かっとる…じゃが深入りはするなよ?」
「勿論さ、ボクは奴が嫌いでね。特にタバコが嫌いなんだ、煙連盟の連中もね」
──『煙連盟』
焚き火や火災などて発生する煙ではなく、娯楽で吸うタバコやキセルを管理する団体じゃったか?
トップは葉巻を吸うておるとは聞いたが、わしも完全に把握しきっておらん団体じゃ
「個人的な好き嫌いはどうでも良い、じゃがクソ親父…“黒獅子“はその国で何をしておる?」
「可愛い息子には気をかけるか──いやいやいや!冗談だってば!!だから殺意の籠った目を向けないで!」
「お主が阿呆なのは前の代から何ら変わらんのう、で、どうなのじゃ?」
ふと、団長の目付きが変わる。口調はそのままに
「あのねぇ、ざっくばらんすぎて何を話せばいいか分かんないんだよ?『“具体的に何を聞きたい?“』」
最後の言葉は“交渉魔法“か…下らんことを覚えおって…
「『“黒獅子“での活動』じゃ」
「いいよ、『取引成立』。“タバコ屋“は1度気絶して“黒獅子“に戻ってるみたいだよ」
「それで?」
「跳弾と『貫通魔法』を駆使して将軍と呼ばれる男の、息の根を止めている。生きてはいたがそこまで気が回らなかったか、はたまた──」
「喋っても構わんが、追加料金は払わんぞ?」
「ちぇっ、ケチ臭いなぁ…まぁ、将軍を半殺しして、“黒獅子“から“タバコ屋“に切り替わっているのは確認したよ」
つまりじゃ、どのような方法で切り替わったかは別として
“黒獅子“は将軍と呼ばれる男を殺すためだけに切り替わったか、はたまた将軍がそれほどの強さじゃったのか、クソ親父という“器“を殺されるのが面倒じゃったか…
「考えても仕方ないと思うよ?」
「む、なぜじゃ?」
「僕も狙われてる一人だからね、跳弾が飛行艇にまで来るとは思わなかったもん」
相変わらずバケモンじゃの…この飛行艇はオゾン層付近まで高く飛ばす事が出来るというのにじゃ…
「警告、かのぅ」
「詮索するなってことかな?別で動いてる地上班からの連絡も、途絶えちゃったしね」
「死んだか?」
「生きたまま回収済、だけどあの国での出来事はそれ以来、もう“観て“ないよ。」
…やはり口止めではないか“黒獅子“
「面倒事を押し付けてすまんかったのぅ」
「謝んないでよ、僕が好きでやってる事だし、やつが気に食わないのも事実だし」
団長からして、“黒獅子“という存在は“気に食わない“程度で済んでいる
殺したい!などと叫ぶ“侍“に対して、殺したいけど力量は把握してると、一線を引いているのが“団長“じゃ
「…まぁなんじゃ、積もる話はあるがここいらで退散させてもらうのぅ」
「ねえ、あとひとつ話してないでしょ?」
「なんの事じゃ?」
わしは白白と嘘をつく
「…お互い、嘘つくの下手だよね、まぁいいけど。“血鬼“の件を僕が知らないと思ってるの?」
「……どこまで知っておるのかの?」
「“金龍師“の記憶が欠除してるから、大戦時のことを全て話すのは録画で観たところくらいだよ?」
全て話してもらうには取引が必要か…
持ってきた手土産では不服と思われかねんな
「『どこまで知りたい?』」
と団長から聞かれたところで、わしもだいぶ思い出しとるからのぅ
「『“血鬼“の存在意義』」
「『交渉不成立』だね、それに見合う対価が“金龍師“にはない」
「これでどうじゃ?」
わしはとあるピンク色の小瓶を見せる
すると団長は目の色を変えおった
「『成立』!こんなのがあるなら早く言ってよ!」
「分かったからはよぅ言わんかい、“血鬼“の目的とはなんじゃ?」
「『世界の管理』」
──世界の管理、か
簡単なことではない、善と悪を両立させ、擬似的な平和を保ちつつ、世界の終焉を長引かせることだ
『世界』には始まりがあり、『終わり』もある
“血鬼“や“黒獅子“は『終わり』を長引かせ、終焉を長引かせるのが目的であった
「しかし大雑把じゃの、団長。それにその目的はわしも知っておる、『これからの具体性を話せ』」
「うげっ、そっちも契約魔術?!…契約はしないけど…わかったよ、話すよ」
『契約魔術』は“本人“と“対象“が1度契約すると、“本人“が破棄するまで対象は魂に刻まれた『契約』を解除することが出来ない
「“血鬼“の動向は一時的ではあるものの確認できてるよ、今は…っと」
団長は近くにある、書類をまとめたものを魔法で引き寄せる
「えーとね、あれ、これ古い記録じゃん。ノギロなんてもう出たでしよ?サリーっ!」
「ハイハイなんでしょう団長」
サリーと呼ばれたおなごは、胸あたりまで茶色の三つ編みを垂らした豊満な娘じゃった
団長はおなごのケツを触りながらサリーと呼ばれた娘に問うた
「今、“血鬼“はちっさい舟漕いで反対の大陸渡ってたでしょ?」
「いえ、それがまた戻ったようで…どの地方に身を置いているかわかりませんけど、西の方に移動したと確認してます」
「ふぅん、だってさ“金龍師“……何怖い顔してるの?」
“侍“──っ!!
わしは立ち上がろうとしたがそれを団長は拘束魔術で制した
が、それを物理的に破った
「まぁ待ちなって、って拘束魔術解くの早いな!」
団長の言葉で冷静になる
「……っ!フゥッ!……で、なんじゃ?何を待てというのだ?」
「冷静になってないでしょ絶対…。僕らの方から“侍“には警告してるし、“侍“も黒獅子のことがあるから血鬼には接触しないと思うよ?」
「根拠がない、何を持ってそんなことが言えるか?」
「現に1日前、“侍“はノギロを発った報告が入ってる…“血鬼“がどのような詮索方法で“侍“と接触するかは調べ中だけど、今のところは大丈夫なはずだよ」
「発ったのは分かった…っ!じゃがっ!それを踏まえてなぜ“大丈夫“と言いきれる!!」
「報酬上乗せ」
「──こ、の!チィッ!」
わしは小瓶をまたひとつ追加する
「“血鬼“の元にあのクソドワーフを向かわせた」
団長の言葉を聞き、わしはノギロへ向かった
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