生けてぇやつは屍を踏み越えていけ
原子魔光炉の戦艦といっても、空母戦艦に原子力を乗っけて、それを土台に魔力を乗算したものだ
今回、乗り込む“アイダホ“である
ミシシッピやワイオミングなども再現されていて、アイダホは中間地点に存在する戦闘力を持っている
中間の空母戦艦と言えど搭載しているものは物騒なので、それなりの地位のやつに管理せざるを得ない
抜擢されたのが、“ガンアス司令官“だ
ガンアスは戦闘の腕や頭の回転はいいものの、傲慢で強欲なのが売りだ
特に駆逐艦から空母、はては空飛ぶ戦艦にまで知識の幅を広げているので、教えを乞う人間は減らない
だが、ガンアス司令官はその“献上品“に問題があった
食いもんや売春婦はもちろん、麻薬や媚薬までに手を染めるのは別にいいとして
献上品とは別に、教えを乞うた女性陣に性的欲求を発散し、薬漬けにして、人として生きて行けなくなるまで落とした記録がある
それはまだ序の口で、教えを広めるための“勉強会“なるものは日々変化していき、宗教じみたものに発展してしまった
自分の教え方に反発するものがいれば容赦なく力を振るい、被害を受けたもの達は、部位を欠損しながらもガンアス司令官を崇めている
傲慢で強欲、さらに物理的な力関係は将軍にも劣らない為、被害者からの噂は広がるはずだった
それがなかったのは、今回起きた街行く人々の無関心のような異変だ
そういった経緯があり、ガンアス司令官は5人に絞ったうちの、一人だ
今日はアイダホが港に停泊する日なので、午前中に将軍殺したあと司令官の殺害を予定だったが
情報の出回りが早いのか、急ピッチで燃料や食料を運び入れる船員の姿が見えた
逃げる気満々である
俺が到着したのは昼の1時間前なので、急いで荷物を運び入れる人間たちに紛れ込み、航空戦艦アイダホに乗り込んだ
厨房に向かう
他のコックのエプロンをパクって同じ変装をするが、オオカミ頭だけはどうにもならなかった
さすがにやばいと、思ったが料理長らしき人物が俺の元へ来るなり
「新入りだな?見ない顔だが…まぁいい。今日の昼はカレーだ、野菜を頼む」
とまぁこんな感じで無関心だった
人手不足でもないのに、人よりも自分のことが優先なようで、他の奴らも俺の顔を見ては、すぐ作業に入っていく
カレー鍋に近づき、下剤をドバドバ入れた
バレなかった
……下剤入れた俺が言うのもなんだけど、もうちょっとさぁ…
配膳時間までは残り15分くらいか
急いで厨房から出て、エプロンから着てきたにスーツ着替える
司令官室近くのトイレの中で待機する
ガンアス司令官はカレーは特に好きらしく、ほかの船員より先にカレーをよそう習慣がある
腹下してから2分も経たずにこちらに来るだろう
“やばい!腹がっ!あぁっ!“
ガンアス司令官はトイレの扉を勢いよく開けた
中には俺一人、何事も起こるはずもなく…
「よぅ、腹下してるみたいだな」
「んなっ!き、貴様は“破壊英雄“!なぜここに!警備隊は何をしている!!と言うよりどけ!漏れる!」
どうやら人々が無関心なことを知らないようだ
まぁ知ってても知らなくても殺すけど
「ガンアス、“俺は貴様の死“だ」
デザートイーグルを取り出し、額に撃ち込む
それなりの威力で額をぶち抜かれたガンアス司令官は、脳みそをぶちまけ、あっさり死んだ
「さて、死体漁りタイム…っと、なんだ?このペンダント、こんなものつけてた記録はなかったが…」
ペンダントを引きちぎると
警戒ベルがなり始め、放送が入った
「なんじゃらほい!」
『怪しいヤツが侵入し、下剤を投与した!オオカミ頭したやつだ!捕まえろ!』
俺やんけ、記憶ある…のか?
てか、洗脳みたいなの解けてない?
……やばいっ!
俺はすぐさまシャドに連絡を取る
「“猫男A“!緊急事態だ!船員に俺の存在がバレた!」
“ハァ!?ふざけんなよてめぇ!ターゲットは殺っただろうな?!“
シャドの一言に釣られ、ガンアス司令官を覗き込む
「額に1発!息、脈なし!問題ねぇ!車回してくれ!」
“了解!すぐ来いよ!“
連絡を切って、俺はトイレから出た
まだ司令室までは探してこないようだ
急いで司令室に入り、書類関係を漁る
出るわ出るわ、内容が“真っ黒“な紙媒体の書類が
書類とは別に、机に置いてあるパソコンを、将軍から拾ったデータキーを使ってパソコン内部にある情報もコピーする
時間はかかったが、外が騒がしくなるまでには終わった
部屋の隅にあった趣味の悪い金のアタッシュケースに、書類やデータを入れ、部屋を出る
俺を探していたのは料理長や、料理人ばかりだった
あと、そこらじゅうから糞尿の匂いが漂うが何かあったのだろうか?
気にしていられないな
脱出できる所としたら、甲板か
急いで甲板に向かうと海側に体を外に出し、手すりに捕まって糞してる船員が何百人といた
魚の餌にはいいかもしれんが、糞する場面を嫌悪する奴から見ると地獄絵図だなこりゃ…
広い甲板、空母戦艦なだけあってか…F16が数機見られた
なんでも載せたがるとは言ってたが、こんな甲板に、短い滑走路とか…事故るぞいつか
しかも5機もあんじゃん、まぁ1台減ってもバレへんやろ
1機の運転席に乗り込み、スイッチを入れる
燃料は充分だ
計器に異常なし
シートベルトして、と
「はっしーーーん!!ヒャッハー!!」
手前に操縦桿を倒し、離陸する
受けるGが、脳幹をふるわせるが堪らねぇなこりゃ
シャドに連絡を取る
「“猫男A“!今どこだ」
“戦艦の近くだ、さっき戦闘機が2機飛んでったぞ“
「それ俺だわ、あと一機は追っ手だな」
“そうか、“ヤニカス“だったか…って、こら待てや!飛ぶ必要ねぇだろ!俺どうすりゃいいんだよ!“
「海岸沿いを走ってろ。終わったら俺を拾え」
“え?は…お、おいーーー“
通話を切る、これで俺の回収もスムーズにいくな
後ろの一機は派手に“壊す“かね
《前を飛ぶ戦闘機に告ぐ!機体の値段は高い!さっさと戦闘機を無事、着陸させ投降しろ!》
オープン回線から警告が来ているが俺は
「注文多いぞ!まぁ、この戦闘機は俺がもらっていくから返さねーけどな」
と返す
《な!“破壊英雄“!儂の進言を無視する気か!いい度胸だ!儂自らの手で墜落させてやる!!》
「搭乗してんのガンアス司令官か!?さっき死んだだろ!」
脈も確認したぞ!?
《貴様に会う前に『サブ』の技術が儂の元に届いてな!適当な船員に試した後、儂自らに使ったわ!これはなかなか良いぞ!薬物乱用しても廃人にならんしの!》
「『サブ』はろくな事しねぇなマジでよォ!!なら、あんたも首だけになって『ハルバード』で管理してやる!」
《出来るものならやってみろ!言っとくが大戦時代、戦闘機でエースと呼ばれた儂だぞ!若造に負ける気がせんわ!》
「良く回る舌だな!喋りすぎて舌を噛みちぎって会話できなくなる、なんて阿呆なことすんなよ!」
《余裕ぶっとる場合なのか?ほぅれいくぞ》
ガンアス司令官の搭乗するF16からミサイルが発射される
ミサイルと言っても追尾型爆裂魔法弾で、距離を取れば小さくなり、威力も弱まる
距離を取るべく、高度を下げたり、スロットルを押し込みスピードを上げたりもした
だか、そんなものエースの前では気休め程度にしかならない
なので俺はまず、上空に向けフルスロットルにし、固定する
シートベルトを外し
コクピットのガラスを蹴破り
外に身体を出して、海が広がる方向に振り返り
足をシートベルトで拘束し、固定する
ホルダーからデザートイーグルを取り出し、ガンアス司令官に銃口を向ける
《“破壊英雄“!まさか儂に銃弾を当てるつもりか!?バカな、不可能だ!》
「やったことねぇことを!不可能と決めつけんのは!覚悟のねえ奴だけだ!改めて答える!!ガンアス司令官、“てめぇの死は俺だ“!」
《ふざけるなぁァあ!!》
追尾型爆裂魔法弾を撃ったガンアス司令官の乗る戦闘機
ミサイルは俺の機体に当たりエンジン部分から炎を出す
機体のアラームが鳴り響くが無視し
集中、発砲する
“タバコ屋特製『貫通』『爆裂』魔弾“
《ガッ──…──……ッ!》
弾がガンアス司令官の乗る機体に当たると、コクピットから後ろのエンジンまで貫通し、貫通した跡を爆発していった
俺はシートベルトをブーツナイフで切り裂き、拘束を解くと
アタッシュケースをコクピットから出して、墜落していく機体から出る
俺の乗ってた戦闘機と、貫通し爆発したせいか上下真っ二つになったガンアス司令官の戦闘機は、海に堕ちていく
首だけでも回収せねばならないので、落ちる際に炎上した真っ二つの機体からガンアス司令官の首を回収した
そして、搭乗時に予め装備していたパラシュートを開いた
「終わった…だりぃ…、しかも戦闘機持って帰る予定なのに無くなっちまった…」
2機の戦闘機は海の藻屑となり、魚の住処になるだろう
海岸に降りた俺は、急ぎシャドを探す
「派手にやったな、“ヤニカス“」
近くに停まっていた黒のキャトルから、シャドの声と姿を確認した
「わりぃ、手こずっちまった。戦利品な」
趣味の悪い金のアタッシュケースと、気絶してる首だけのガンアス司令官を差し向ける
「生首は趣味じゃねぇ…っておい!ガンアスじゃねぇか!どういうことだ!」
「『サブ』特製強化薬がこの国に出回ってるってこった…将軍も、もしかしたら薬を使ってるかもしれねぇ…奴の死は、確実に確認すりゃよかった!!」
キャトルの天井を殴りつけてしまったので凹んだ
「もう車が凹もうが、銃痕が付こうが何も言わねぇが…お疲れさん、あと二人がんばろーぜ。今日はもう休め」
「わかった、首は頼む。アジト着いたらすぐ寝るわ」
車の中で寝たので、朝起きてシャドに『アジトのベッドに運ぶの疲れたわ!』と怒られたのは四日目の朝6時だった
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4人目
大戦時に参加したメンバーの中、“黒獅子“と対峙した4人目
その男は闇に溶け込んでおり、初見では見つることが困難だ
闇影の支配者と呼ばれる男は基本ソロで動く男だった
大戦時もわしが指示を出す際は1人での行動を優先させていた程だ
人種や異種、魔物が嫌いな訳では無いのじゃが…
「懐かしい顔が見えると思ったら貴様か、“金龍師“のババア」
どこからか、声がした
とある町の、路地裏さながらの場所で彷徨わねば、こ奴に会えんと言うのも難儀なものだな
「そのままで良い、姿を晒したくはないだろう“影エルフ“」
「相変わらずその呼び方か、変わらんなババア」
わしにババア呼びを許すのは影エルフと黒獅子くらいか
いやいや、わしじゃってこの身なりじゃがまだピチピチで──
「考え事にふけるのは構わないが用があるのだろう?何も無ければ土産を置いて帰れ」
「どいつもこいつも…用件はあるのじゃ、だから話せばすぐ帰ろうぞ」
「そうか、では何事か?」
“黒獅子“の記憶が取り戻しつつあること
出会った時は逃げるか死ぬかを選ばせること
あとは──
「ほう、黒獅子が記憶を…か、やつの単独行動には同じ気配がして共感をもてたな」
「お主は黒獅子を好んでおったな、わしら7人は黒獅子に挑んで瀕死にまで追い込まれたというのに」
「奴と対峙した殆どの連中は恨んでいるだろうがな…私は私だ、奴の好き嫌いは私が選ぶ」
はぁ、とわしは無意識に溜息をこぼしてしまう
無理もないか、各種族の最強を緊急で召集したのじゃ…協調性がないのはわかりきっておる
と、あとひとつを付け加えておかねば
「あとは“血鬼“の事じゃ、奴も黒獅子となにか繋がりがあるはずじゃ」
「ふむ、聞かない名前だな。そいつに関連する情報は持ち合わせているか?」
わしは血鬼に関しての姿かたち、特徴など伝える
「なるほど、上半身裸のズボン一丁ならばすぐ見つかるな…すぐに手配させよう」
「ダメじゃ、迂闊に近寄らせることを禁ずる。奴の強さはどれほどかは分からないが、下手に手を出して逆鱗に触れるようなことがあれば…手に負えんのは確かじゃ」
わしの言葉の後は沈黙が続いた
熟考しているのか、または無視して部下を情報収集に向かわせたかは不明じゃか、数分間の沈黙の後に声がした
「……分かった、“金龍師“である貴様がそこまで言うのであれば相当なのだろうな。コチラでも見かけ次第、場所の報告のみさせて待避させるよう命じておく」
影エルフは基本ソロじゃが、こ奴に憧れて下につく部下は絶えないと聞いた
“大戦時の七英傑“────
汚名もいいところじゃ、皮肉じゃの
「では、わしは次に向かうとしよう」
「コラコラ待て待て、土産があるはずだ。私だけ無いとは言わさんぞ」
「…チッ、耳ざといヤツめ。コレだから耳の長いやつは面倒なのじゃ」
そう言ってわしは、空間魔法から1本の刀を取り出す
「何も変わってなければお主の
取り出した1本の刀は闇夜の路地裏といえど、禍々しく光り輝いていた
「お、おぉぉぉ!!この輝きは正しく伝説の刀鍛冶師・天地、しかも最期を迎える寸前に打った幻の1本ではないか!銘は…やはり!“近衛栄三郎・魔食い“!!い、いいいいのか“金龍師“!?」
「説明が長いのぅ、別にわしは刀を振り回すより自慢の尻尾振り回すのが楽じゃから譲るわい。それにお主の事じゃ、売ったりはせんじゃろ?」
「この刀を売り飛ばすクソがいれば、死よりも酷な目に遭わせてやる!」
「気に入って何よりじゃ…ではまたの」
「そうだな、また会おう!あぁ、血鬼のことは警戒しておこう。私の部下が今先程全滅したところだ」
「お主あほじゃろ」
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