うぇーい乁( ˙ω˙ 乁)

三日目の深夜3時


俺が目を覚ますと、ガモンやシャドの話し声が聞こえた


「今言った5人だ、“堅土創“はどうだ?」


「間違いない、この地に巡る精霊達にも聞いたが、挙げた5人は『ウィルマ』の城と街を行き来している姿を確認しているようだ」


2人がリストを確認しているところを、タバコに火をつけ、吸いながら割り込む


「わりぃ、寝坊したな」


「起きたな、リストを絞ったから確認してくれ」


「候補は5人だが、1人生きていれば十分だ」


「了解、殺す相手を選ばせてもらう」


俺はそう言って、シャドからリストを受け取る


「俺的にはクレアム将軍を生かすのが妥当だな、怪しさもあるが『ウィルマ』では上位の地位だ」


グレアム将軍と呼ばれる男は、この国で唯一の“元帥“でパイプを好む男と、リストに書き込まれている


将軍なのに元帥クラスなのは、本人が元帥という地位を嫌うから、呼び方だけでも拘っているとか


しかし、煙の出る嗜好品を紙しか売ってねぇ俺への当て付けか、シャドの野郎?


「だが警備が強固だ、他を生かすことも視野に入れた方がいいのでは?」


二人が話しているが無視してリストを眺める


「……」


「おい、“タバコ屋“……そんな悩むことか?」


「5人を生かす道はない、全員が黒だ。価値はない」


「……」


2人に目が止まった


1人、地位は1番下の研究者だが頻繁に出入りしており

1人は、奴隷商人をしている老人だった


研究者のリストを眺めると、シャドが横から入る


「ラナバスタ博士か?確かに行き来する数は頻繁だが、いつもオドオドしてるし、会話が少ない」


と、ガモンが言うとシャドも続く


「それにラナバスタ博士は他の4人とはよく反発してる……考えがまとまんねぇと、計画実行には時間かかるぞ」


その異議に反対する


「いや、違ぇな。それだけ他の国から警戒されないように慎重なんだ、こいつを生かすぞ」


「おいマジか!?1/5の確率とはいえ博打に近いぞ」


「“タバコ屋“、賭博の経験はあるか?」


「いや、ねぇな。だか俺はこいつを生かす。直勘もあるがなにより…まぁティアのババアの受け売りだが“反発する人間ほど成功させたい“、だそうだ。」


「“金龍師“の言葉か、長く生きただけあって重みが違うなぁ…」


「なんと!“タバコ屋“が“金龍師“と同棲しているとは…噂は本当であったか」


俺は2人の博打云々はスルーしていたが、同棲だけは聞き逃さなかった


「ちょい待てこら、誰が誰と同棲してるだって?」


「良かったな“タバコ屋“、お前の悪行が隣国まで届いてんぞ」


「同棲≠悪行のはずなのに、俺が入ると計算式が成立するとかおかしくねぇか!?悪行じゃねぇよ“隠し屋“!噂の元ぜってー殺す」


「風の噂というのは変質していくもの、素直に受け止めるべきだ」


「受け止めれるか!くそっ!言っとくが同棲はしてねぇからな!」


否定はするが、2人にはスルーされた


「分かったから、他の4人を殺す算段を考えとけよ」


「分かってねぇだろそれ…プランはもう考えた。始動は2時間後、予想される将軍の朝食時間に動くから…“堅土創“の『囚人A』、“隠し屋“の『猫男A』はラナバスタ博士の動向、監視しとけ。将軍殺したら動くはずだろ」


計画立てながらすぐに呼び名を考えた俺、すごくね?


「動くとは?」


呼び名があんまし凄くなかったのか、ガモンがスルーして質問してくる


「そのままの意味だ、城か研究所に立て篭もって警備を強化するだろうよ」


「兵士を動かす、だと?今までラナバスタ博士は、他人に頼ることはしなかったはず…」


「いくら“タバコ屋“、“堅土創“、そして俺、“隠し屋“の動きを昨日知ったとして…地位は下だぞ?簡単に兵を動かせるわけがねぇ」


「まぁ観てなって……んな事より、はえぇけど朝飯食おうぜ」


俺は立ち上がり、装備の確認をする

それを見たシャドがため息をつく


「はぁ、まぁ分かったよ。ラナバスタ博士は朝は行きつけの店で朝食をとる、だったな?“堅土創“」


「そうだが…まぁいい、我も支度しよう」


「飯取ってくるよ」


シャドは扉を開け、飯を取りに行った


「“タバコ屋“よ」


ガモンが俺に問う


「おう、なんだ?」

「臭うぞ」


体臭じゃなくて、敵の動きだなこりゃ


「…敵が何してくるか、か?」

「違う…貴殿の体臭のことだ。風呂場は部屋にあるから入れ」


「体臭かよ!…そんな臭うか?」


「臭いで警戒され、殺しが失敗したらどうする」


「え、お前そこまで言う?…まぁ、何とかする…と言いたいが、入るか……サンキュな」


軽く装備を確認し、立ち上がりふろ場に向かった俺だった






臭いを落として飯を平らげたあと、目的地に向かった俺


場所は城の正面ゲート

兵士が俺を見つけ、前回の逃亡に加担した異人種と認識して襲ってくるが、眉間に1発ぶち込み生物としての役割を停止させた


銃声を聞きつけたほかの兵士たちが、次々と正面の門から出てきて迫ってくる


俺は使ったデザートイーグルをホルダーに仕舞い、M4A1カービンを取り出して、兵士の頭を正確に撃ち抜く


M4A1カービンの仕様を3点バーストに切り替えたので、正確な弾切れがわかり、精密性も上昇する


30発入の弾倉

ひとつ引き金を引いては1人撃ち抜いて、補充し、また1人と撃ち抜いていく


敵に遠距離攻撃を取り扱うものは見当たらない



というのも、剣と魔法という古臭い戦法しか使ってこないからだ


まぁ元帥クラスであるクレアム将軍が、風魔法だけで元帥に登り詰めるのもある…仕方ないかもしれない


と思ったが、次にでてきた兵士達はアサルトライフル銃を持ち出してきた


「そうそうそう!それでなくちゃなァ!」


遮蔽物に隠れ、俺は顔を出しながら撃ち抜いていく


クレアム将軍あたりが指示したのか、攻防を繰り広げる敵さんの練度は上々


“剣と魔法“の連中よりは楽しめる


端で何かが光ったのが見えたので俺は頭を下げた


スナイパーの登場だ、銃声と共に頭横の遮蔽物が欠ける


「出てくんのが予想通りだと、ちと物足りなく感じちまうな」


近くにて煙幕手榴弾を出し、俺の姿を灰色の煙で隠す


弾数は15、微妙だが撃ち切るまで補充しない


弾道から予測し、煙幕の中で撃つ


正直外れてもいい、威嚇射撃で手を止めるためだ。ゲームだと死亡判定は出るが、リアルじゃ死んだとかわかんねぇしな


熱探知できるサーモグラフィーは持ってきていない



ヌルゲーなんて面白くねぇだろ?



怒声が響く

俺を探せだとか味方の相打ちとか


声を頼りに撃っていくと怒声が止み、また響く


だが退くということはしない様で


煙幕の中、目の前に兵士が入ってきた姿が見えると俺は靴からブーツナイフを取り出し、兵士達の首を刺し、抜く


剣を振りかぶる兵士を見て、右に避け、左脇に挟んだM4A1カービンを頭に向け撃ち抜く


背後から奇声を発して剣を突いてくる敵は、体を少し左にずらし右脇で剣を挟み、引っ張りながら身体を反転させてM4A1カービンで首を撃った


あと6発、まだだ


図体だけでかい、俺と同じ背ほどの金槌を持つ兵士に対しては、足を蹴り砕き、跪かせ顔面にブーツナイフを、何度も突き立てる


返り血が顔に着くが、返り血を避けるとか剣豪じゃあるまいし俺には無理だ


すると突然、突風が吹き荒れて煙幕が晴れる


クレアム将軍が行ったのか、風魔法で煙幕を横に流された


銃を持つ兵士に囲まれた俺は、正面ゲートから降りてくる人物を見る


何処いずこの犬が暴れていると思ったら…“破壊英雄“か、久しいな」


声を発するはクレアム将軍だ


『ウィルマ』国の特徴的な青い軍服の胸には、沢山の煌びやかな勲章が飾られている


体格は筋骨隆々、背丈は2m

もみあげが顎まで長いのと、後ろ髪をポニーテールにしている灰髪

顔は傷だらけだが、右目が無いのか眼帯をしている


「わりぃ、クレアム将軍様よ。過去の俺は知ってるかもしれんが、今の俺はあんたのこと知らねぇ」


「そうか、残念だ…右目の恨み、貴様の死で晴らそうかと思ったがな!」


将軍は叫ぶとともに、圧縮された空気の塊を飛ばしてきたのだった




━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2日目の満月が輝く深夜にしてやっと『ノギロ』にたどり着いたティアは、一息つけるべく近くにあった寺にて休憩を行った


この寺は、“侍“と呼ばれた女のいる地域の近くではある


しかし、その女は放浪しており、1箇所にとどまらないのか特徴的だ


定期的にだが、ティアが休憩している寺にお参りに来ることもある為、ティアはそれを狙って来たとも言える


考えに浸かっていると鈴の音が響く


ようやっと来たかのぅ…


そう思ったティアは、大の字で寝ていた姿勢から上半身を起こす


「む、先客がいたか」


低く、だが凛と透き通った声の主がティアを見つける


「ボケおったか、“侍“の?元気にしておったか」


“侍“と呼ばれた女は、ボサボサ髪が桃色で腰まで長く下ろしており、着ているものは着物一枚で胸の谷間が露出するほど着崩していた


履き物は“一本下駄“という古風なものをカラコロと履き鳴らしておるが、それは『ノギロ』が盛んだった頃の馴染み深いものであった


腰の巻き物に大太刀と脇差しを付けており、大太刀の方にだけ鍔に拳大の鈴をチリチリと付け鳴らしていた


「相も変わらず、そんな姿で放浪しおったら変な輩が襲ってくるぞ?」


「それだけ魅力的という事だ、悪い気はしない。それに襲ってくるのであれば切り伏せるのみだ」


「物騒じゃなぁ…して、おしゃべりを切り上げるぞ」


「珍しいな“金龍“、年寄りは話が長いと思っていたのだが?」


「わしを年寄り扱いするでない…物忘れも無い、五体満足で健康体そのものじゃぞ?」


「嘘をつけ、“金龍“の両腕の骨にはヒビが入ってるではないか」


“侍“と呼ばれる女は刀を扱うこと以外にも医術としての資格もあった


なので“侍“の眼は人種と異種の2種限定的ではあるが、どこが悪いのかを見極めることが出来る


「流石じゃの、その眼は」


「当たりか、治しながら本題を話せ」


「承ったわ、“黒獅子“の件じゃ」


両腕を差し出すティアに“侍“は、黒と茶の眼をティアに向け、手に力を入れてしまう


「イダダダダダダタ!!いっっったいんじゃ!!」


「“黒獅子“の…奴の名を聞くとは思わなかったぞ!」


「本題には入れと言ったのはお前じゃろうが!治すか痛めつけるかどっちかにせい!」


それを聞き、侍は力を緩め、詫びる


「す、済まない…だが奴は私の鈴を奪い、夫の命すら刈り取った男だぞ!許せるわけがあるかっ!!」


怒声と共に、またもやティアの両腕に力を強めてしまい、ティアが悶え苦しむ


「だから辞めんか戯けが!!お主が強くなりたいという理由で放浪しておったのは知っておったがの!先ずは話を聞かんか!」


「やつを…“黒獅子“を殺してもいいという話なら、いくらでも乗ってやる!違うなら両腕をへし折ってやる!!」


ティアの回復力は即効性があり、どんなに傷を負っても直ぐに治すのだが、両腕の骨のヒビは“タバコ屋“をゲンコツした結果であり、何故か治らない


それに追加して侍に両腕などへし折られては、自然治癒どころではなくなるのではないかと、ティアは危惧する


「話を進めさせんか!わしの預かっとるタバコ屋が、名前を思い出したのじゃ」


「なるほど、それで?」


両腕を掴まれ、痛みに耐えながらもティアは続ける


「痛い…そ、それでじゃな…奴が“黒獅子“を詮索し始めたら貴様…“侍“と対峙するかもしれぬから」


「殺せばいいのね、分かったわ」


「簡単に言うがの、殺せるのであれば、わしが先にやっとるわ…鈴の在り処を聞いた後にすっぱりと」


「そう…貴方でも駄目なのね…」


「だから、まぁ、なんじゃ、クソ親父…奴が来たら何も語らずに“戦って死ぬ“か、“逃げる“かどっちかにせいよ」


「そうね、そうするわ。でもね」


「なんじゃ?」


「貴方から漂う、外の国の洋菓子というものを頂いたら考えてあげるわ」


「…はぁ、なぜワシの近しいものはみな鼻が利くのかのぅ」


「貶しても何も出さないわよ」


「分かっとるわい、ほれ」


空間魔法を使い、ティアは洋菓子を取りだし、差し出す


それと同時に“侍“は腕を治し始める


「いい香りね、焼き立てかしら?」


「“ばぅむくぅへん“と呼ばれる菓子らしいのじゃ、少し値が張ったが背に腹は変えられんからの」


ティアは腕の骨が治るのを確認し、手をプラプラと動作の確認を行った


「相変わらずの治癒力じゃの、人斬りなんかより医療に専念すれば中々金入は良くなるじゃろ?」


「そりゃね、閉鎖的なノギロとはいえ、国からの援助金は馬鹿にならないほど良いものだけど…それは、復讐が終わってからになるわね」


「はぁ、そうかい、まぁ無理はせぬようにな……奴のことに関しての注意はしておいたから、全てを話すではないぞ」


「任せておいて。出会ったら“死か自由“を選ぶわ」


「…そうなるといいのぅ」


ティアの呟きが聞こえたか否か、意気揚々とする“侍“は、鳴り響く鈴を握り


音を止める

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