げぇ!タイトルまろうじん!!

来る兵士に対し、質問を投げつける


「大勢でお疲れさんだな!なんか起きたんかねぇ!?」


「罪人が脱走した情報が入った!それを手伝ったやつもだ!貴様たち“大人“しくしろ!」


「ここにいる奴は(精神的にも見た目にも)“子供“ばっかだ!だから駄々こねるぜ!」


「おい!“タバコ屋“!俺もガキだというのかテメェ!」


「見た目は少年のようだからな、致し方ないだろう?」


「黙ってろ7歳児!覚えてろよクソッ!」


俺たちの会話に、兵士1人が叫ぶ


「抵抗するか罪人!そして共謀者!皆!捕らえるぞ!」


その言葉を聞いたほかの兵士が、怒声で賛同した


威勢はいいが、声だけだった

見た限り練度は『ハルバード』以下だからだ


俺は迫りくる1人1人の兵士に対し、顎を殴りつけ気絶させる


シャドは、武器である縄で、複数の敵を拘束させて動きを封じる


縛り方にデジャビュを感じた、どこで見たっけな


ガモンは土の精霊の力を借りて、泥の形状を敵に纏わせ、拘束させた



敵兵士全員の動きを止めたところで、俺はシャドに質問する


「なぁ“隠し屋“、お前弟子とか兄弟とかいるか?」


「弟子は1人、妹が一人いる。それがどうかしたか?」


「弟子の方かもしれんが、縛り方が似てるやつを見てな」


「最近、兵士になったばかりと聞いたんだ。俺の弟子は人の顔を覚えるのが苦手だから、兵士の基本である重要人物の顔は知らんだろうな。会ったのか?」


No1の眠姫から依頼受けて、なぜか国王と対立する流れだった時、亀甲縛りする兵士が居たが…あいつかよ


「あぁ、国王に亀甲縛りしてたよ。見事なもんだった」


「だろう?帰ったら褒めねえとな。“タバコ屋“には失礼な態度をとったな。すまん」


「謝んな。そんでそいつは、仲いいヤツとつるんでたようだが?」


「なんでも、『兵士内で顔を覚えるのが苦手な奴を集めた派閥』があったらしくてな、そこに加入して仲良くなったらしい」


「それでか…俺の顔知ってる兵士が焦ってたの、笑えたぜ」


俺達が話しているのを見かねて、ガモンが声をかける


「2人、話に花が咲くのは構わないが次が来るぞ」


「咲く花はねぇが、国の謎も解けてねぇのに遊んでちゃぁ、つまらねえな」


「弟子に顔合わせて褒めねぇとな、解決して帰るぞ」




「…だが、どこへ行く?」


ガモンの質問に対して俺は返答する


「んー…帰っか」


帰宅一択


「怖気ついたか?らしくないな」


ガモンが皮肉をぶつけるが、俺は適当な理由をつけた


「いや、急がば回れだ。出直すぞ」




俺達は帰ることにした


俺の手持ち弾薬は潤沢だが、城内地形図、また敵の戦力の情報が少なすぎるし、今日の目的はこの黒い7歳児に会うだけだ


正面ゲートまでに来る第2波の兵士共々は、“隠し屋“の“陽炎“を使って逃げたが、終始無言だったので遊び半分で“隠し屋“にちょっかい掛けたら睨まれた







街の路地裏でタバコを吸い、一息入れる


「ふぅ、少し危ない場面もあったが何とかなったな」


「テメェ!危ない場面作った本人がそういうこと言ってんじゃねぇよ!」


「誠に遺憾である、“タバコ屋“はおちゃめすぎるぞ」


「“タバコ屋“に茶目っ気を感じたらあんたはビョーキだよ!」


「まぁまぁ落ち着けって」


「イタズラしてきた“タバコ屋“だけにゃ、言われたくねぇ!」


「まぁそうかっかするなって、“隠し屋“お前ん家どこ?」


「あ?なんで俺のアジト聞くんだよ」


「寝床の廃墟、潰しちゃった」


「朝のあの爆発、そういう意味だったのかよ!」


「証拠はなるべく消しとかねぇと」


「アホだろお前、消し方なんざいくらでも教えてやるのに…しゃあねぇな、こっちだ」


「“隠し屋“殿は、爆発していないのか?」


「殿扱いされるほど偉くはねぇ。“タバコ屋“みてぇに爆発しまくってたらこの6年で『ウィルマ』は廃都になんぞ」


俺はガモンを見て


「そりゃねぇな」


と返す


「なんでだよ?」


「廃都と化す前に、我々騎士団が抑えるからだ」


と、ガモンが言い返す


「こ、怖ぇ…。成り行きで仲間になったけど大丈夫かよ?」


「さぁな?何とかなんだろ」


「おいおい…まぁ、宜しく頼むわ“堅土創“さんよ」


「仲間なのだ、さんは要らぬ。宜しくな“隠し屋“」


2人は互いの目を見やり、握手を交わす


「こうやって俺の仲間が増えていって、最終的に俺に依頼がなくなっていく……いい事だ、まったりライフも、もうすぐだぜ」


「“タバコ屋“…お前、借金どうすんだよ…それにお前の受けた依頼のほとんどが大戦の処理みたいなもんだから、“タバコ屋“は基本、引っ張りだこだぞ」


「む?では今回の調査とやらも大戦に関係するのか?」


「いや、それは無い…と思いたいが、大戦の爪痕を引きずる奴を何名か書類なまとめててな。そいつらは街の人間を、『弄ぶ』ように見ていたのもあって、1年で整理することが出来た」


「後付けみたいな事を今更、言ってんじゃねぇよ」


「聞かれなかったからな、明日の方針にも繋がるだろ?」


するとガモンが挙手し、口を開く


「私も何名か知っている、情報を交換したい」


「んぁ、いや、それは構わないが…」


「なんだ?」


どもる“隠し屋“に、俺は答える


「“隠し屋“が言いてぇのは、情報の提供は構わねぇが、『ウィルマ』の国を裏切る行為じゃねえか?ってのを心配してんだよ…直属騎士なだけにあって、国を背負ってんだろ?」


すると考え込むガモンだが、間があって口開く


「昔はそうだった、今はこの国を正したい一心だ」


「ならいいじゃねぇか“隠し屋“、さっさと奴らの顔を教えろ」


「わ、わかったから…そう迫るな。あとアジトについてからだ」


「それもそうだ、もう少しか?」


路地裏に入ってから数分歩いたがほとんど壁かビルの間で、扉らしきものは無い


「6年も潜んでたんだぞ?同じところをな、簡単に見つかるとこだと思うな」


「俺なら六年も『こんなとこ《ウィルマ》』にいたら発狂しちまうな」


「褒めるか貶すかどちらかにしろ…着いたぞ、ここだ」


目前を見ると、ビルの裏口であろう大きな扉があった


というより


「ここ、この国の冒険者が集まるとこの裏手じゃね?」


冒険者ギルドなんて名前は、異世界に憧れる妄想癖な奴らが名付けたのだ


そういった建物は、各国に存在するが国には所属せず、『冒険者ギルド』という『企業』で成り立っている


“傭兵“のような金を貰って国同士の戦争に参加する訳でもない、犬の散歩のような小さな依頼から、大型魔物の討伐依頼を請け負ったりする連中だ


年齢制限は18歳からと、高校を出て就職が決まっていない若者向けの就職先でもある


「そうだな、まさかこんな所に潜んでいたとは」


「表からお前らを連れて入ったら面倒おきそうだしな。ギルマスに話してくるから大人しくしてろよ」


そういってシャドは冒険者宿に入っていった


待つ俺と、ガモンは少しだが話した


「“堅土創“、親の顔覚えてるか?」


「なぜ両親が死んだことになっている」


「推測だが、“堅土創“のおとんおかん、モルモット…実験体にされただろ」


「…違うといえば?」


「なら違うな、俺の推理は大ハズレだったってことだ」


「…すまんな」


「?」


俺が疑問符を浮かべた直後、シャドが帰ってくる


「ギルマスに話したら了承もらえた。入れ」


「“隠し屋“の家じゃねぇだろ、家主に挨拶しねぇとな」


同室嫌だし、銃で脅して俺だけ一人部屋にしてもらおう


「“タバコ屋“の挨拶は銃で脅すことだろ。同室が嫌なのはわかるが、やめろ」


「同室が嫌だってのがよくわかったな、以心伝心だなこりゃ」


「ふざけてねぇで、さっさとこい。階段上がるけどその間、他の連中にガン飛ばすなよ?」


「分かってらぃ!んなこたァ!」


「特に“堅土創“もだ!今上半身ハダカで手錠付いてるけどフード貸すから大人しくしてろよ!」


「私は7歳児の子供だ」


「そのネタ引きずってんのかよ!大人しくしてろ!2人!いいな!」


「「了解」」



大人しくなった大男2人は黙──────ってシャドの後ろについて行く


冒険者宿、冒険者ギルド、と色々呼び方はあるがそんなもんに拘る必要あるかね?


ってことでアジトと括るが、まぁ間違っちゃいないだろ




受付には、依頼を出したりする担当者達が居ない

自動化が進み、職員が不要になったこともある


そして、冒険者もまばらで、二、三人程度しかいない


まぁ少ない理由なんざだいたい予想は付くが…


となると、こいつらは…俺が殺すやつか?


「物騒なこと考えんなよ、ここにいるのは対象外だ。ほら、階段上がれ、罪人ども」


頭をしたに向け、項垂れながら付いていく


俺、超名演技じゃん?


だが、ヒシヒシと階段を登りながらも後ろから視線を感じたのは、正直苛立った



我慢して2階に上がり、目的地の部屋アジトに入る



「とんだ荷物を運んだ感じだわ…」


「本当な」


「全くである」


「お前ら自覚ある?」


「「?」」


俺とガモンはハテナマークを浮かべる


「自覚持って、頼むから」


「とりあえず寝るぞ」


「睡眠不足では戦ができぬ」


「それ違うからな“堅土創“、てかお前ら寝るのかよ!飯とか、情報交換どうすんだ────」



「俺が起きたらだ」

「私もだ」


「お前らほんと自由だな……まぁいいや、俺も寝よ」



こうして二日目が終了した


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


テログループが銀行に強盗し、資金調達するなんてのは日常茶飯事だ


わしの管理も甘かったこともあるが、今のところ“黒獅子“からお咎めはない


というより、過去の記憶にもあったように、銃声の音と共に顔を上げて以降、“黒獅子“の片鱗は見せない


“タバコ屋“としての1面しか見せず、今に至るまで殺意から雰囲気、魔力の色までが“黒獅子の“発言通り、別人のようになっているのだ




話を戻すとして……銀行強盗に入ったテログループらしき人種、異人種はワシに叩きのめされ、アジトへと案内をしてくれとる途中じゃった


「バーさんつえぇよ…ほら、ここが俺たちのアジトだよ」


「世話になったのクソガキ共、礼として銀行襲ったことは揉み消しておくからのー」


「マジ何もんだよ、あのバーさん…」


と、たわいない会話を済ませアジトである廃墟のビルに侵入する


と、思ったのじゃが門番がおった


殺すかのぅ…服は汚したくないんじゃが…


「“金龍師“さんですか?ボスがお待ちですよ」


「ほう、丁寧な言葉を使う門番じゃな。殺りがいがあるのぅ!」


「申し訳ありませんが、殺意のないものに対して無益な殺生を好むのは世間的に評判が落ちますよ?」


むむっ、こいつ頭が良いな!?


「貴様らが悪の組織であることに変わりはない、後処理に困らん為にも消しておかねばならんしの」


「それもそうですが──」


「それに貴様らを殺して、跡形もなくきれいさっぱりにすれば問題なかろう?」


「ふむ…一理ありますね」


なんとまぁ、達観した青年じゃな…

幾度となく戦い抜いた人種に違いないの!


「“金龍師“さん、我々の集まりは若い連中で構成されてます。改めて申しますが、ボスに会ってお別れという形で穏便に済ませてくれると──」


ふと、影がワシを覆いデカい何かが落ちてきた


そして、砂煙を巻き上げながらも声を聞いた


「年寄りの話は長いとは知っておったが、上げるよう伝えたはずだぞ?いつまで待たせるつもりだ」


「ボス!申し訳ありません…交渉していたのですが…」


ボスと呼ばれる男は体長2mあろうか、筋骨隆々で服もはち切れそうなほどデカい


「久しいな、“金龍“の」


「年老いていれば口調も変わるものだな、“蜥蜴“や」


蜥蜴、と簡略に呼んだが、こやつは大戦時に『ノギロ』という和国で共に戦った拳を使う武術家じゃ


「昔は共に戦った仲間で、わしは信頼しておった…じゃが今はなんじゃ?悪党の真似事なんぞしおって」


「オレは何もしてねぇ、寝床探してたらここにたどり着いたんだよ」


「じゃったら、なぜ街の銀行なぞ襲っとるんじゃ?」


「あぁ?んな事しなくても、オレは酒と日光さえありゃ生きていけるのは知ってんだろ…まさかこのアホ共か?」


「1番上が何も知らずに、勝手なことをしておるのか…やはり殺すべきか」


最後の言葉をこぼした瞬間、蜥蜴の部下と思われる門番は驚き、怯えながらも尻餅をつく


「好きにせい、オレには関係がない。それより本題はなんだ」


「あぁ、“タバコ屋“は知っとるな?」


「……ティアのにいる、あの狼野郎か」


「そうじゃ、奴は真名を思い出したようでな…大戦時のことを思い出して、貴様のところに来たら面倒じゃと思っての……口封じしに来たんじゃ」


そう話しながらも門番の頭を鷲掴みし、握りつぶす


「ふん、“そんなこと“で口封じか?」


「“そんなこと“でもない、“黒獅子“相手に一番苦い思い出があるのは、貴様じゃろう?蜥蜴よ」


「……何が言いたいのだ、ティアよ」


「口封じのために蜥蜴は何を求めるか、じゃな。金や酒なんぞはいくらでも譲渡するが、タバコ屋の過去を話さないことを誓うことが条件ぞ」


「…そうだな、寝床と酒をくれ」


「交渉成立じゃな、丈夫なのを創ってやろうぞ」


「酒は──」


「命酒“赤鬼削り殺し“じゃろ?既に持ってきておるわ」


「なんぞ、予測済みってことか」


「何年の付き合いだと思っておる…乾杯といこうではないか」


そう言ってお猪口も空間から2つ取り出すティアは酒を注ぎ、1つ渡す


「すぅっ!……ふぅーーーっ!」


と、蜥蜴は匂いを嗅ぎ、一息つく


「先に匂いを嗅ぐ癖は変わらんの」


「敵でも味方でもそうやって俺は匂いを嗅ぎ、殺す相手を探り、殺してきたんだ」


ワシの乾杯を終えてお猪口に入った酒を一気に飲み干すと、一升瓶を掴み、豪快に飲み始めた


「慌てんでもまだあるぞい」


「んぐっ…んぐっ…ッハー!……知っとるわ」


一升瓶が空になり、コンクリートの道路に置くとすぐさま砕け散った


道路が


「もうカラではないか…ほれ、これじゃ」


空間からまた同じものを、今度は10本ほど出してやり、去ろうとする


「ワシはお暇するぞ」


「これで2日は持つな…また来てくれ」


「まったく…酒豪なのはいいが、身体が朽ちるぞい」


「好きなもん飲んで、体に悪いもんなんてねぇだろ」


なんとまぁ、酒に溺れる蜥蜴よのぉ



そう思いながらわしは、次の目的地に向かうべく翼を広げる


「ティア、次は“魔女“か?」


「いや、“侍“から先に行こうと思うての」


「侍ねぇ、口硬ぇから面倒だろ」


「やつの好みを持っていけば簡単であろう?」


「だといいがね…まぁあんまし気ぃ張ってもシャーねぇから気楽に行けよ」


見送りの言葉を聞き、わしは飛び立った

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