ハァ…ハァ…タイトルぅ…?
営業中のタバコ屋にはレディが店番をしていた
「玄おじいさんありがとうね!」
「おぉ、また来るぞぃ」
玄じいがタバコを買うやり取りを見ながら店の2階を目指す
「あ、お父さんおかえり!お母さんはどうしたの?」
「腰悪くして病院にいる、もう歳だろうよ」
「そういうのはいいから!」
「へいへい、まぁ病院にいるのは事実だ、しばらくしたら帰るんじゃねぇか?」
「んー、分かった。私お昼食べたけど、お父さんどうする?」
そういえばもう昼だが…腹は減ってないな
「いや、昼は抜くわ。ちとやる事ある」
「ん、そう?分かったけど作り置きしておくからチンしてね」
「助かる、店番引き続き頼めるか?」
「タバコ探すの苦労するだけで特に問題ないわ」
「整理整頓兼ねて続けてくれ」
「いいけど、また調べごと?」
「近いな、内容は言わねぇが」
「いつも言わないじゃない、あまり根を張り詰めないでね」
「サンキュ」
2階に上がり、部屋に入る
座椅子に座り、ハードディスクの電源を入れて狼頭用ヘッド⚫“アを装備し、精神を落ち着かせる
融合前では人しかいなかった為、融合後には急いで異人種用のヘッドギ⚫が作られたようだ
作られた最初の年は『形が合わない』とか『音が聞こえない』などと不具合もあったが、最近ではそういう声も聞こえなくなった
視界にはパスワードを入れる欄が出てくるが、それとは別に声紋でも構わない仕組みになっている
「“死は救済“」
なんで俺これをパスワードにしたんだろう?
視界が黒だったのが白にフェードアウトしていく
すると後ろから声がした
『おはようございます、我が主』
声の発する方向に振り向くと白く発光した珠が浮いていた
「久しぶりと言いたいが、もう昼だ」
『えぇ、お久しぶりです。前回の起動から90日と15時間25分38秒です』
「もうそんな起動してなかったか…」
『はい、常に流れる情報はタブレットに回しているので、こちらでの起動は90日と15時間25分40秒になります』
「お、おう…そのくだりまたやるのか?」
『41秒』
「あの、怒ってません?」
『42秒です』
「……」
『44秒です、なにか喋られないと声紋認識できません』
「いやパスワード入力の時に聞いてたよな!?」
『45秒です』
「わかった!悪かったからはよ服着せてくれ!俺は全裸族じゃねぇから!」
ログイン時には基本、服を事前に着せた状態なのだが、俺の場合何故か全裸である
『声紋認証確認、承りました、装備を配布します』
「いや配布じゃなくて着せて……」
『我が主はそこまで介護が必要になられたのですか?失望しました』
「もう……わかった、服着るよ…」
出現したのは、白のTシャツとジーパンにサンダルという、初期アバターだ
いそいそと着ていく
「あと面もくれ、美調整は平々凡々の下でいい」
『承りました、こちらです』
「ありがとう」
出現したのはハロウィンでも使われるゴブリンの被り物だ
『如何なされました?』
「わざとやってない?!わざとだろ絶対!!」
『ゴブリンの中でも素晴らしい顔つきですよ!侮辱は許しません!!』
「美調整したんだよな!?高すぎだろ!あと人型言ったからな俺?!」
『私のログには残っていませんね』
白い珠はログを表示させるが、ログには“面“としか言っていない俺だった
「悪かったよ…人型くれ」
『素直じゃないんですから、もう』
「誰が好き好んでモンスターの被り物するんだよ」
『我が主では?』
「俺はっ!」
言ってリアルを思い出す
狼頭の人間みたいなやつに大差はあるだろうか?
「別に…好きで狼の被り物してねぇよ、気づいたら被ってたんだ。慣れたから困りはしねぇが」
『今日の予定はなんでしょうか?』
「話聞く気がないなら聞かないでくれる?!」
『今日の予定はなんでしょうか?』
「無視しやがったこいつ……今日は222chに行く予定だ」
『あそこはネット界隈でも修羅と呼ばれる魔境ですよ?』
「知ってるよ、あとNo2とNo3の情報もコピーしてくれるか?」
『“マスター権限が必要です、パスワードを入力してください“』
「“死は救済“」
パスワードは一括でこれにしてる
バレたらバレたで何とかするし、別にいいけど
『宜しいのですか?機密ランクs+ですが』
「国家レベルだっけか?まぁ秘密なんて10年経てば公開する政府機関があるし、早いか遅いかの違いだろ」
『我が主がそう言いなさるのであれば構いませんが』
「コピーは?」
『終わりました、222chへの扉を出現させます』
「ありがとう、と言いたいところだがお前のフォローも欲しい。着いてきてくれるか?」
『“お前“ですか?』
「…いや、すまん。頼めるか“純粋系天然ヒロイン“」
『違いますよね?名前で呼ばれないとコピーも削除します』
こいつ、そんなめんどくさいAIに設定してたか?
『最近アップデートしましたので』
心読まれたし、つか俺の指示なしにそんなこと出来たか?
「勝手なことすんな!!鬼の居ぬ間になんたらってか!?」
『それですそれ、名前はよはよ!』
口調すらも変わってんじゃねぇか
「はぁ…Code.shiro…いや、シロ、頼む」
『やれば出来るじゃないですか!そこまで言うなら仕方ないですねぇ!!』
「はっ倒すぞ!?」
『押し倒されるのもいいですが、今は善は急げですよ!行きましょう行きましょう!』
「ちょ、シロ!押すな押すな!」
シロに促され、扉の向こう側に行くと
最初目に入ってきたのは黒
上は星のような煌びやかさもなく、ガスのような雲が分厚く並べられている
僅かに見える地面は荒廃としており、木々もあるが全てやせ細っている
水平線の向こうにでかい工場のような建物があり、煙突と思われる筒状のものから排気ガスのような物がモクモクと出ている
「相変わらずだなここは」
『前回のログイン時と変わりません。ここのサイト主は入れ替わり激しいですが、風景そのものは変えないと初代からのルールですから』
「そういやそうだったか?」
『初代である我が主がそんな体たらく、私がしっかりサポートしなければなりませんね!』
「やかましい」
そう、数多く存在するサイトの中で222chを作りだしたのは俺だ
最初は情報集めに使っていたが、流れてくるのはゴミ混じりの情報だらけ
ガセや偽りが多く流れてくるため、遠くに見える工場で焼却処理している
未だに排気ガスのような煙が出ているということは…まぁそういうことなんだろう
「しかし…なんで222chなんだろうか」
『何がでしょうか?』
「ちと用事でな、まぁ、先に掲示板行くぞ」
『えっ!ま、待ってくださいよ気になるじゃないですか!』
「うるせぇなぁ、そんな設定のアプデがあんのかよホントに」
『ありましたよ!気になったのでポチーっと買いました、あ、買ってないです無料でした』
「おま!人の財布から勝手に!」
『無料でした!ええ!可愛げのない機械のような性格が嫌だったから可愛い性格を買ったとかそういうのでは無いので!』
「やっぱ買ってんじゃねぇか!くそぉ……」
『おや、言質を取られてしまいましたね、バレては仕方ありません、買いました』
「うん、さっき聞いたからな…」
『許しも貰えたということで掲示板へのナビを算出しますね!』
「いや許してねぇからな!?」
『いいじゃないですか~減るものではないでしょう???』
「俺の!金が!減ってんの!!」
『ケチ臭いですね!』
「それ俺今日誰かに言ったわ…こんな気分になるんだな」
俺のつぶやきに対し、シロは
『ナビを開始します』
無視された
「頼む…そういやタバコは…っと」
『こちらです、火をつけます』
「悪ぃな、ネットの世界とはいえ口に咥えとかねぇと落ち着かねぇんだ」
シロからタバコを貰い口に咥える
『私も同じ気持ちですね』
白い球も同様にタバコを咥え、火がつく
どんな構造してんだ?
「いや、まて、俺にも火をつけろ」
『どうぞ?んー』
シロはこちらにふよふよと俺の口元に近づく
『んー?まだですか?』
火のついたタバコで、火のついていないタバコに火をつける方法を、シガーキスという
「いや普通につけろよ!?てかマッチ型火付け装置どうした!?」
『そんなもの、このご時世作られてるわけないでしょう?それにこんなことに時間とってる場合でもないですし』
「ふざけんなよ…まぁいいや、ほれ」
渋々ながらもシガーキスをする
絵面なだけあってトキメキもクソもねぇ
「っ…ふぅー…」
『えへへー、キスしちゃいました、この動画は一生の宝物です』
「直接キスしたわけじゃねぇから!てか動画撮ってんじゃねぇ!何してんの!?!?」
『大丈夫です、バックアップは取っていますので!』
「違うそうじゃない!動画を撮るなって言ってんだよ!!あと消せ!」
『むー!わかりました…これ以上、とやかく言うと文字数稼ぎで会話がだるいと言われかねませんからね…』
「俺はツッコミで疲れたわ」
『では参りましょうか、情報掲示板まで、ここからそう遠くはないですが』
「シロが仕切る意味がわからんのだが…」
『気の所為でしょう、“二輪車“』
シロはそう唱えると、原付がでてきた
形は原付だが、なぜかエンジンやターボがでかく、異常な改造が施してある
「いつこんなの作ったんだよ」
『ログインして来ない間にぱぱっとやりました』
「あ、はいそうですか…」
もう俺は突っ込まんからな
明らかにおかしい原付に跨る
シロは俺の肩だ
ゴーグル付きヘルメットを被り、おかしい原付を発進させた
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