店主が入院中は可愛い娘が店番しています

黒のセダンに乗る3人


1人はバトラーのじいさん


1人は“サウナビア“家のご令嬢


そして1人は俺ことタバコ屋


山道をガタガタと揺れながら行くセダン


山道の横にはレールが敷かれており、列車を現在進行形で追っている


「お嬢様、列車が近づいておりますゆえ、頭をお下げください」


「防御魔法するから大丈夫よ!」


「なりませぬ、魔力は温存し、緊急時にお使いください」


「平気よ!少々の弾丸なんて防げるわよ!」


「いけませぬ!」


「だから大丈夫だってば!」


「あー…ジーさん、運転に集中しててくんねぇか?」


「も、申し訳ありません」


「んで小娘、最近の銃弾にゃ魔印つってな、銃弾に貫通魔法やら追尾魔法、爆破魔法が付与されてる場合があるんだ」


「そ、それでも生産が追いつかないでしょう!」


「機械でそれが可能になったんだよ、『ハルバート』にゃ認可された工場でしか作れねぇが『サブ』連中はそれが常識だ」


「…え?もしかして今列車で戦ってるのって…」


「おいジーさん、話してなかったのか?」


「わたくしも聞き及んでいませんが?」


「…説明してなかったか俺!」


というわけで説明する







「『サブ』のクイーンクラスの1人が攫われて、列車に乗っているのでそのお方を救出する作戦、と言うわけですね」


「そんな感じだ」


「ね、ねぇ!そんな軽く流していい問題じゃないでしょ!クイーンも『サブ』なんでしょ!なんで奴らも助けるのよ!」


「俺の店が人質になってんだ!」


「ということらしいですね、お嬢様」


「店なんてべつにいいじゃない!悪いことしてきた連中に優しくする必要なんてないわ!」


「店はどうでも良くねぇよ!ぶっ殺すぞ女ァ!それに優しくするなって言っても、小娘の今の心境からしてそう思ってるだけだろうが!」


「い、今の心境…確かに今私達は悪い奴らには追われてるけど!」


「悪さする連中の中にも善し悪しはあるんだ、区別できりゃ1人前だ」


「それでも…それでも!」


「“タバコ屋“様、見えてきましたが…」


「そうか。おい小娘、時間かけて考え、見極めろ!死ぬ間際まで考えぬけ!答えなんて山ほどあるからな」


俺はそう言って、ぶち破ったドアから列車を見る


「ジーさん、何か言いかけてたが…列車の速度が上がってることか?」


「左様です、少しGが掛かりますが追いつけないことはありません」


「やってくれ、列車の隣張り付いたら飛び移るわ」


すると後ろから、バギーのような甲高いエンジンが数台響く


「あっ!私たちを追ってるヤツらよ!」


「しぶといな…いや、執念深いってとこか」


「列車に乗り移ってから排除願えますか?さすがにこのままでは」


「いや、構わねぇ。速度あげる準備してトランク開けてろ」


「お荷物を外で取り出す気ですか!?いくら“タバコ屋“様でも…」


「いいからやる!」


タバコを1本取り出して火をつけるまでに、ジーさんはセダンの運転席にあるレバーを下げ、ブースターを装填し、トランクを開けた


「危険ですぞ?」


「百も承知」


「ねぇ、もしかしなくてもタバコ屋さんってバカでしょ?」


「この際、罵詈雑言は聞かなかったことにしてやる、俺の合図とともに速度上げろ」


そう言って俺はドアのない助手席から身を乗り出し、トランクまで歩く


「って!?なんで歩いてるの!?」


「初級の『金』魔法だよ、足裏いっぱいに磁力に変化して移動してんだ、技術はいるがな」


トランクにたどり着き、開けて荷物を取り出す


歪なガンケースを担ぎ、更に取り出したるはバレットM82


屋根まで移動し、未だ肉眼で捕えれないバギー乗りの敵を探しつつ


半身をずらし、右膝を屋根につけ屈みこみ、磁力で屋根に着けた部位を固定する


ストックを頬と肩に付けて安定


前かがみの姿勢で構える




スコープを覗き、敵を目視した


バイクに乗った奴らは俺の姿を見て警戒し、防御魔法を張り巡らせる


「ちょっと!防御魔法張ってるわよ!どうするのよ!」


「はっ!ただの骨董品の対戦車用スナイパーライフルだと思うなよ!」


既に装填された弾丸には俺が施した魔印が刻まれている


“貫通“だけだが


「機械で刻まれたものと同じだと思うなよ?」


1発撃つ


敵の胴体に着弾を視認、屋根上から見下ろす様に撃ったためエンジン部分まで貫通し、爆発を起こした


「討伐数1!」


「そのような数え方はフラグですぞ?」


「その主人公、結局薬に頼って敵倒してたわよね?」


「まだまだ行くぜぇ!?」


2発目、3発目と撃ち込み、貫通させ爆発していく


「どーよ!」


「まだ数いるわよ!」


そうだ、まだ複数いる


そして、1台やられる度に警戒心を高めているのが目がつく


「ジグザグに追ってきやがるな、まぁ意味ねぇんだけど」


この数ならいいだろう


「ジーさん!良いぜ!!」


「了解した!」


俺の叫びとともにブースターを起動する


セダンって改造したらここまでスピード出るんだな


なんて、阿呆なこと考えてると列車の横にすぐたどり着いた


「急いでくだされ!大きな橋が見えますぞ!」


「マジか!?すぐ飛ぶわ!!」


「ちょっと!残りどうするの!?」


俺は小娘の言葉を無視し、列車に飛び移った途中


空中で残り全部の追っ手を撃ち抜き、行動不能にさせた





「上官!これ以上は持ちません!“タバコ屋“様はまだですか!?」


上官と呼ばれてるのは“黒の捕縛師“だ、大層な地位にいるよな


「わからん!もしかしたら寝坊して来ない可能性がある!」


列車の外側で磁力まかせに張り付いていると、中ではそんなやり取りをしていた


いや寝てねぇから


「そんな…っ!我々はどうすれば……がっ!」


叫んで文句言ってたヤツは、肩を撃たれたようだ


「チッ!撃たれた箇所はどこだ!下がって治療班に見てもらえ!」


「ですが私が下がれば上官1人に!」


「構わん!私が引きつける間に下がれっ!いいな!」


その言葉を皮切りに“黒の捕縛師“は座席から顔を出し、撃ち始める



「俺も始めますか」


そう呟き、列車の屋根に移動する俺であった

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