来るなら掃除してくれる人がいい

2ndはサイボーグ忍者に捕われたまま何故か列車に乗りこんだらしい


サイボーグ忍者が俺に鉄山靠かました時に踏みつけた肩


その際にティアのババアの匂いが残った


ティアのババアが追跡魔法で出した結論が列車という訳だが…


「わりいなジイさん、俺の愛車が機嫌損ねてよ。列車まで連れてってくれるなんてありがてぇわ」


「ほっほ、構いませんよ」


「構いませんよ、じゃないでしょ!じい様!こいつ急に道路にとび出て進路妨害してたじゃない!」


移動している黒のセダンには


年老いた燕尾服じいさんと、きらびやかな装飾を施したお嬢さんがいた


少しセダンにしては歪だったが…


まぁ車の改造なんぞ『ハルバート』の国の法には引っかからんし、大丈夫だろ


「ガキとジーさん…そのナリからして家族ってわけじゃなさそうだな」


「フフフ、コスプレかもしれませぬぞ?」


「そ、そうよ!今日はコスプレパーティに招待されたから会場に向かう途中だったのに!危ないじゃない!」


叫ぶ小娘を無視しながら、2人を見る


ジーさんは落ち着いている

その精神力と車に乗せてくれた時の動きからしてバトラーと呼ばれる職、執事で間違いないだろう


小娘はどうだ?と思ったが、手を見て1発でわかった


人差し指付け根にある指輪だ

模様からして…


「“サウナビア家“の貴族か…」


つぶやきと同時に首元に刃が到達する


バトラーの得意武器は素手と聞いたが…


このジジイ、ナイフを俺に向けやがった



後部座席から魔力反応もした


俺は右の助手席に座っていた為、後ろから反応があったが


魔法制度が悪い


「それ以上の詮索は控えてもらえないかな?」


「さっさと殺した方がいいでしょお爺様!」


「……お嬢様、わたくしではそれは不可能です。お嬢様の魔力をもってしても、です」


「な、なんでよ!」



どうやらジイさんは俺のことを知ってるようで、警告だけに済ませたいようだ


「お爺様は世界で100本の指に入る凄腕バトラーなんでしょ!どうして!?」


「お嬢様、それでも…です」


うーん…車内の空気が悪い、謝っとくか


「あー…そのだな、もう詮索しないから許してくれよ。“物知りじいさん“と“世間知らず小娘“」


「謝っておきながら一言多いのよ!“魔の縄よ!応えなさい!!“」


「いけませんお嬢様!!」


首に魔力の縄が絡まるが、直ぐに消滅した


保持する魔力に差がありすぎると、相殺され消滅してしまうのだ


「う、嘘よ!こんなはずは!」


「絶望するのは勝手だが、そろそろ駅に着くからよ。まぁ事情は聞かねぇから安心しろ」


「…お嬢様の勝手な行動、誠に申し訳ございませぬ」


「いや、気にすんな。年頃の娘ってのはやんちゃしたいんだろ」


そう言って俺は腕時計を確認する


……ん?列車はもう着いてると思ってたんだが


「その、言いずらいのですが、その腕時計…1時間ズレております」



………


「……やっべえぇぇぇぇぇぇええ!!忘れてた!!」


冗談じゃねぇ!こんなズレてたらクイーン共に店潰されちまう!


「……“破壊英雄“に取引を願う」


俺が焦る横で、ジーさんの雰囲気が変わる


取引か、だいたい予想つくが…


「いや、俺は“破壊英雄“じゃねぇ。“タバコ屋“だ」


「その際どちらでも構いませぬ!今のわたくし達は危機的状況なのです!!」


「『どちらでも』良くねぇな…俺は“タバコ屋“だ。“破壊英雄“じゃねぇ。訂正しろ」


「……っ!わ、わかった…それでは!」


くな、待て、取引内容は?」


「こちらから列車まで飛ばしましょう。その代わりわたくし達の『安全』を」


「ダメだ、『安全』の幅が広すぎる。取引にもならん」


「グッ…!では」


「…時間ねぇな、取引はなかったことにしよう」


「……300で」


俺は止まる、今なんつった?


「500…いや!1000は出す!“破壊英雄“には見合わない額かもしれないが…」


なんか金の話になってる?いやまてチャンスだ!借金返済できる


「……お、おおお億ならどれほど行ける?」


どもっちまった!!やべぇ無理か!?


「……10億が全財産です、5億までなら」


キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


借金返済の光!見逃せない!!


「いいだろう、取引成立だ。ただし逃げるなよ!?絶対だぞ!?」


「は、はい!やりましたぞお嬢さま!……お嬢様?」


後ろを見ると後部座席、その横のドアが開いており


外で大男がドアにしがみつき、猿轡された小娘を抱え、隣のワゴン車に飛び移るとこだった


「お嬢様!?」


「ラァ!」


俺は叫び、ドアの窓ガラスを割る


上半身を外に出し、ご令嬢を抱えていた男に、デザートイーグルで発砲する


だが急いだせいか、大男の頬を掠めるだけだった


「ジーさん!あいつらァ何だ!」


「わたくし達を潰そうとしてる輩共です!奴はその刺客でしょう!」


「小娘狙う理由は!」


「指輪付きの指です!しかし…奴らは、指さえ手に入ればお嬢様を解放する連中だと思ったのですが!」


「小娘も必要になった可能性あるか!」


刺客の男は無言のまま車から跳び離れ、隣で待機してたワゴン車に乗り込んだ



すると、電話の着信音が響く


「くそっ!こんな時に…もしもーし!」


“タバコ屋か!?捕縛師といえば分かるか!?今どこにいる!!指定時刻を過ぎても現れなかったから電話したまでだ!“


「今ァ!“サウナビア“家の問題に巻き込まれた!」


“寄り道してる場合か!うぉぉっ!“


電話の先で銃撃戦が繰り広げられていた、楽しそうだなー


「てかよォ!俺がいなくてもなんとかなんだろうが!」


“お前が作戦を決めたんだろう!!“タバコ屋“を起点に攻める予定だと!“


「…」


“黙るなタバコ屋ァ!とりあえず1番車両に2ndを視認したからな!急いで救出を頼む!“


そう言い残し、電話が切れた


まぁこっちで金が絡むから、何も反論できなかったんだが


タバコ1本取り出し、火を付けて吸いながら俺は答える


「ジーさん!俺の仕事終わるまで付き合え!」


「了解しました!ですが!まずはお嬢様を救うことからです!」


「言われなくても!!」


タバコを咥えながらセダンの助手席のドアを蹴破り、跳躍する


「分かってらぁぁぁぁああああ!!」


ワゴン車の左、運転席の窓ガラスを飛び蹴りで蹴破り、運転手の首の骨をへし折った


屋根に登り、デザートイーグルを取り出す


タバコを吸い、息を整え、集中する


「…当たったらすまん!」


車内に向けて発砲


もう一丁の銃で手数増やしてもよかったがそこまでする時間はない


6発の銃音が街の道路に響き、市民を混乱させてしまうが構っていられない


ワゴンを運転していた運転手は首の骨を折られて即死していたのか、傾きだしたので


俺は跳躍し、着地する


車が横転するのを確認し、ジーさんを呼び寄せる


ワゴン車の方では、中から左脇に小娘を抱えた大男が這い出てくる


右肩を撃ち抜かれていたようで、プラプラと右腕全部が機能していない


「“死は救済“だ、あの世で会おう」


俺の言葉に大男は反応したが時すでに遅し

大男の額を弾丸でぶち抜き、後頭部から紅い華を咲かせ、瞼を閉じてやった




ジーさんは小娘の容態を見ていたが、多少の擦り傷打撲はあれど、問題ないと見てセダンの後部座席に乗せた


タバコをひと吹きし、死体に添えるように投げると




血が火を消した

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