店主にお酒を与えないでください(by.レディ)

店前に戻り、車をガレージに戻す


タバコ屋正面、シャッターの閉まった隣の扉から入りリビングに移動する



“レディ“が掃除に悪戦苦闘するBGMは流れていなかった、帰ったか?


リビングには、“金龍師“ことティアのババアがソファのど真ん中に変身したまま座っており、反対には“黒の捕縛師“ことエルファスンが椅子に行儀よく座っていた


二人の間にある黒曜石の低い机の上に、置かれてた50口径デザートイーグルを見やる、どこかで見たな?


「誰のだ?」


「お前のだバカタレ。教会から掘り出したらしいのぅ」


そう言ってティアのババアは銃をつかみ、こちらに放り投げる


「事後処理で偶然見つけたんだ。這い出て来るようにも見えたが、持ち主に返しておかねばと思ってな」


「悪いのぅ捕縛師よ。こら!反省して感謝くらい述べぬか!」


「わりぃ、助かる」


「本当に反省しとんのかかこやつは…」


「いい、”金龍師”よ。本件に移るぞ」




”黒の捕縛師”は畳んでいた地図を取り出し広げる


「地図見なくても”城”だろ?目立つのにこれいるか?」


「潜入ルートにバツをしてある。クイーンの五姉妹は一人1ルートずつから来ると予想される」


「らしくないのぅ。あヤツらは団体で行動しよった記憶はあるが?」


「敵側、キングの側近の”扇動者”。ソイツの煽り文句と洗脳で、ヤられたんだろ」


「その線が強い、実際『サブ』の日頃の行いを監視しているがクイーン五姉妹は口喧嘩が絶えず、不仲になりつつあると入ってきてる」


「……あいつらが?有り得ねぇ…が、その線で行くとして配置はどうする」


「『ハルバード』直属の討伐部隊を配置予定だ。”タバコ屋”は国王の『話し相手』だ」


「分かった……いやまて!?話し相手ってなんだよ!!国王の『護衛』でいいだろうが!」


「前に、『護衛』という形の依頼だと”タバコ屋”は一切無言になって話さなかったらしいな。なので『話し相手』という形で落ちた」


「俺が落ち着けねえわ!友達感覚で決めんなんなモン!」


「黙らんかクソ親父、決定事項に文句言わない主義じゃろうが。して、ワシはどうする?」


「うぐぐ、昔の俺を殴りたい…」


「”金龍師”には”城”全体の防衛を頼みたい、キングクラスが出てこなければ余裕だろう?」


「分からんぞ?時は進む。最近の『サブ』連中の技術は目まぐるしい発展しておるからの」


「ババアは見た目と言動が発展してねぇからな!ハッ!」



帰宅直後のゲンコツ、容赦ねぇな


「知り合いとはいえ客人の前で恥かかせんじゃないよ!全く!」


「殴らなきゃいいだろ!てか、なんで変身したままなんだよ!」


「ゲンコツ避けられるからじゃ!」


「茶番はそこまででいいか?続き移るぞ」




ババアが地図の上に討伐部隊と分かるように金の平たい押しピンを刺し、クイーンの駒を各五箇所に置く


机に穴空いたぞおい


「討伐部隊を用意はするが、ポーンの件とすり合わせても討伐の部隊がナイトクラスに対処できるのは少数だ、クイーンクラスでは太刀打ちできん」


「練度が低いんだよ、ティアのババアに稽古してもらえ。2年で様になんぞ」


「それはお主だけじゃ、あと頭を揺らすなゲンコツが出来ぬだろ」


「されねぇように揺らしてんだよ!話進めねぇだろ!」


「ならば、ババア言うでない!」




「……黙ってもらえるか?一応だが、”破壊姫”にも伝える予定だ。戦力になるかはやつの気分次第だが」


「俺勝ってるし、俺の名前出して対処に加わせろ」


「プライド高いああいうタイプは無視するぞ?他におらんのか捕縛師よ?」


「『ハルバード』国のNo.2と3は遠征中でな、No.1は一年に3回しか目を覚まさないのは知っているな?」


「知ってるがよ、クイーンクラスだぜ?まだ今年は1回も起こしてないんだろ?なんで出し渋ってんだよ」


「狙われた物がそれほど価値がないのかのぅ?わしらと討伐でなんとかしろと言うには」



それを聞いた捕縛師は、ため息を一つし、話し始める


「『サブ』の奴らの、”城”襲撃の目的は『ハルバード』国が管理する危険度ランクSの宝剣だ。現在、宝剣は”城”の地下300階に在るのだが…」


「あの宝剣か…。しかし、襲撃する日はなにかイベントでもあったかのぅ?」


「建国記念とかで地下から移動させるとか、か?そんな事のために持ってくる意味がある訳ねぇし」


「国王自らが、ン“ン“!「最近宝剣見てないから、陽の下に出して市民全員で見よう!」と言ったのが事の発端だ」




間があく


頭をフル回転してさっきの言葉を反復し理解する



「自慢してぇだけかよ!馬鹿じゃねぇのアイツ!」


「今回ばかりはワシも庇えん、国王は何を考えておる?疲れておるのか?」


「憑かれてたりしてな」


「自分にはなんとも…要するに“城“の頂点にあるテラスまで移動させ、市民全体に大型スクリーンに映し出して見てもらうイベントだな」


「アホの極みだなマジ」


「税の無駄じゃ、辞めさせんか」


「二人が止めてくれ。国のトップに立つ人間の、その下で働く兵士達が意見なんて言えるわけないだろう」


「俺は一般市民だから無理だな」


「一般市民が国王と対話するなんてあるものかのぅ?」


「知るかんなモン」


「ということで、増援の期待はしないでくれ」


「分かったのじゃ」


「了解だ」




「敵の情報は、知っていると思うがまとめさせてもらうぞ」


「五姉妹連中の仲の悪さが、俺は知らなかったがな」


「それもあるが、襲撃する数を予想だが算出した。襲撃にはポーンが100、ナイトが10、してクイーンが5となる。一人1ルート分散してくるとして」


「20、2、1か」


「そうなるな。今までの監視結果として、特徴的な服装だが、ポーンやナイトは一般市民と変わらんがクイーンは五姉妹全員ブラックドレスに黒のパンプスと、“タバコ屋“が前に見た服装と変わっていない」


「クイーンの年齢や背丈は前に会った時とは変わってるよな?流石に」


「一番上から22歳、19歳、18歳、15歳、12歳となって背丈も伸びていたが、教育機関が未熟か、一番上と二番目を除く3人は未だ世情に疎い」


「まぁガキの頃ってのはワガママ言いたいからのう。クソ親父、お前もそうだったのじゃぞ?」


「うるせぇ、2年前の話はやめろ」


「あの頃はお茶目で可愛げもあったのに、こんなクソになりおって…親の顔が見てみたいわ」


「テメェだがなクソババア」



二発目のゲンコツはそら慣れても痛い



「ワシの股ぐらからクソ親父みたいなのが出てきたら、仲間達に合わせる顔がないわ!」


「育てることも否定しろよ」



「そこまでだ、仲睦まじいのは構わないが…ゲンコツの下りで話を止めるのはダメだ。」


「へいへい」


「分かった。じゃが、姿形が少女集団と言えどクラスはクイーン。ビショップやルークを飛んでの強さじゃ、生半可で挑めば待つのは死じゃ」


「まぁ俺がいる。討伐連中にクイーンが見えたら“城“に上げろ。俺がもてなしてやる」


「“タバコ屋“、度々済まないな」


「謝んな、『謝罪の重みが軽くなるぞ』だったな?」


「それほど謝ってはいないはずだが…ふっ、自分に返ってくるとは」





「ではまた襲撃する日に会おうぞ」


「宜しく頼む、変更点あればまた報告に来る」





そう言って“黒の捕縛師“エルファスンは、部屋から出ていった

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