年に1度、棚卸しがありますので是非、是非いらっしゃいませ

後日談といえば聞こえはいいが、正座させられながら説教とはいかがなものか?


目前にはヨボヨボのババア


奥ではレディが掃除に悪戦苦闘している


「部屋汚いぞクソ親父」


「俺の中じゃ綺麗」


「言い訳か?偉くなったなクソ親父」


「その語尾は最近身につけたのか?似合ってねえぞクソババア」


「オラァ!」


ゲンコツが狼耳の間、脳天に突き刺さる


「いってぇなババア!ふざけっ!」


「ババアじゃなかろうが!!」


再びゲンコツ、血が出ないのはティアのババアの得意属性『回復』と、ジョブの『拳闘士』による力加減があってこそで、普通は血が出るからやめようね!



「部屋は汚い、仕事で遅刻、いらんもんを産み出して『ハルバード』直属の参謀連中の仕事増やした挙句、弾薬は使い切り、教会は崩壊。わしゃそんな育て方しておらんぞ!」


「振り返ると色んなことあったなぁババア」


「昨日の事じゃろが!バカタレ!!」


本日3度目のゲンコツ、慣れた。

ババアで反応するのやめて欲しい


「弾の値段いくらか知っていてわざとやったじゃろ、依頼主から引かれるとはいえやりすぎじゃ!」


「本当、依頼主は心と懐が広いよな!頭上がんねぇよババア」


4度目のゲンコツ、”ババア”は禁句だな、さっきより痛いし、でも言う


「ったく!その”いらんもん”から連絡入ってたぞ」


「は?“破壊姫“って家とかどうしたんだアイツ」


「ふらついておった所を警戒偵察部隊に補導され、事情を聞いて捕まり、牢屋だ。手足は自由に出来るようにしておるが当分は出てこれんじゃろ」


「結局捕まるのかよ…てか、おいまじかよ、面接できねぇの?ババア」


5度目のゲンコツ、『回復』切りやがった。このババア


「面接は安全が確保されてからじゃろうな、ガワは少女じゃが中身は危険物じゃ」


「俺が行きゃ黙るだろ、勝ったの俺だし」


「その件での連絡じゃ」



『あの時クソデブ神父が邪魔しおったから、引いたんぞ?負けてないから、勘違いするなよ黒狼よ』



「あの女、負け犬の遠吠えにしては下手な鳴き声だな」


「お前も犬じゃろ」


「狼だよ。んで?それだけじゃねぇだろ?続きあるだろ」


「よぅ分かったな、続きはこうじゃ」


『町並みも変わっておったし、近々顔を出す』


「なぁ、あの牢屋簡単に出れないはずだろ」


「魔封陣もそうじゃが、sssランクの捕獲専門魔術師も揃っておったはずじゃ。戯言じゃろ」


「んじゃ、俺の耳に入ってくる昨日聞いた靴音は…気のせいなんだな?近々言うから次の日ってことはないんだな?」


「…まさかっ!」





シャッターの隣にある扉がノックもなしに開く


「来てやったぞ黒狼の、ご無沙汰しておったか?」


「昨日ぶりだな!んでババア!適当な事言ってんじゃーー」



6度目のゲンコツ、客人の前でも容赦ねぇ


「”破壊姫”よ、どうやって抜け出したかは聞かん。ここに来る意味は分かっておるな?」


「発信機が付いておるのは知っとる、それが何か?」


「問題じゃ!コイツと仲良く乳繰りあってるのがバレたら国王も黙っとらんぞ!」


「国王の面はチラと見たが、何も変わってなかったの、あやつ人間か?」


「ババア2人、人の事言えねえけどな」



7度目のゲンコツが来るのはわかるが鳩尾に衝撃波は如何なものか?


「「お前は黙ってろ」」


「うぐぇ…仲がよろしいようで…」


「して、黒狼。そちらの婆さんはなんじゃ?説明せんか」


「孤児院のマザー役」


「これ!そんな言い方があるもんかね!”破壊姫”よ、ワシは年老いてしもうたが、これなら思い出すはずじゃ」




ババアは立ち上がり、唱え、変身する


「年老いたババアが変身するとか、どの層狙ってんだよ」


変身中にも関わらず8度目のゲンコツ

変身中は光ってるから眩しい


光が終わり、姿が現れる


身長は俺と同じ170くらいか、腰まである金髪に、赤眼には龍と呼ばれる生物と同じ瞳


出るとこ出て、引っ込むところは引っ込むボディ


服装はババアの時と同じ、上は床を引きずるローブと白のワンピース、靴はブカブカだったが、変身したせいか、ピッタリになっており脛から太もも付け根まで、白い肌で露出している


全盛期のババア、”金龍師”ティアが姿を現す



「”金龍師”か、婆さん姿とは似ても似つかんぞ」


「訳あっての、まだこれでも1/10じゃ」


「特徴的な角が出てないの、そういう事か」


「なんだ知ってんのか?”破壊姫”は”異世界”出身なんだな。ババアもそうなんだよ」


9度目のゲンコツ、「バ」で反応し始めたぞおい


「妾は向こう出身じゃが、向こうじゃ噂程度でな。見るのはこちらに転移されてから3、4年後のアレ以来じゃな」


「ワシも”破壊姫”は噂程度じゃったよ、縁がなければ会うことすら叶わん世界じゃからの」


「ババア語で喋ると、どっちが喋ってるかわかんねぇ」


10度目のゲンコツと鳩尾に2発目の衝撃波。こいつら出会ってから仲良すぎだろ、あと変身した後だから強くなってるし


「そういや、今日来たのってアレだろ?六年前のこと話してくれるんだろ?」


「伝言でも言うたが、町並みが変わったから案内してもらおうと思って来たのじゃ」


「案内しながら話してもらうぞ。じゃ、ババア、事後処理のまとめは後でな!」


11度目のゲンコツを避ける。流石に見えてっから


「クソ親父!避けるな!こら待たんか!」


「待てと言われて待つやつが何処にいる!表で待つぞ破壊姫!あとレディに掃除ありがとう言っててくれ」


「やれやれ行動は早い奴だ、苦労するな金龍の」


「全くだ!あと自分で言わんか!」





扉を出て、雨上がりの水たまりを跳びよけ、スラム街方向にある隣のガレージに向かう。ボロだが雨風しのげれば問題は無い


シャッターが降りてるので上げる。日が入り、ホコリが宙を舞っているが構い無しに進み愛車を見やる


黒のローライダーだが屋根はない


4人乗りの茶色のシートに

バックミラーに釣り下がる1発の弾丸キーホルダー

ハンドルは左

マニュアル操作でシフトチェンジの先端がナインボール


タイヤはスラム街にも行くことがあるので、新大陸に住むワイバーン皮特注のパンクしないゴム製だ


飛んで乗り込み、エンジンをふかす

タバコを咥え、火をつける


「今日も調子良さそうだな」


アクセルを踏み、前進する


曲がって停め、”破壊姫”が乗り込むのにタバコ半分は減らなかった

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