三
「お前は美術館、行ったことあるか?」
徒歩の僕に合わせるために、海斗は自転車を押しながら進む。
「いや。小さい頃はこの中に住んでたんだけど多分ない。ぼんやり知ってるってぐらい」
「あ、住んでたんだ。じゃあレモン島ってわかるか?」
先ほどの通り、ここは中州である。地図で中州を見るとレモンのように見えるから通称レモン島。単に島と呼んだりもする。横向きに転がったレモンではなく立てたレモンの形をしている。つまり、南北に長い。この島の小学校に通う児童は、その頃に島という呼び名を知る。
「知ってるよ」
海斗は楽しそうに笑った。
「そうか! 通じると面白いよなこういうの。一緒の小学校だったりして」
「同級生に横山海斗って奴いなかったから、違うな」
僕は首を振る。島に小学校は二つ。だから隣の小学校。
「よく覚えてるなー」
「一応ね」
昔から、人の名前はよく覚える方だ。
「隣の小学校でもレモン島か」
島には二つの小学校しかないから海斗の言う通り隣だったんだろう。もし引越さなければ、一緒の中学だったわけだ。
「あれ、誰が言い出したんだろうね」
「結構昔っからあるっぽいよな」
「あ、それで僕、美術館が駅とは逆なのはなんとなく知ってるけど、それ以上のことは知らないからよろしく」
「おうおう任せとけ。チャリですぐだから、歩いたら十分くらい?」
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