今こそ、合体の時!
「我が名はマモン。妖魔の王の一人にして強欲を司るものなり」
2人が崩れかけの教会から外に出ると、待ち構えていたかのように妖魔が念波で語りかけてきた。
「なんだか強そうだよ?」
「驚いている場合か、魔法で攻撃くらいしろっ!」
「わ、わかったよ……原初の炎よ、その一部を持って、ここに示さん……リアマ・ペロータ」
巨大な炎の球が出現し、妖魔に向かって飛んでゆく。
しかし、妖魔が両翼を羽ばたかせて起こした風に消滅させられてしまった。
「やっぱりダメか……妖魔王クラスには僕の魔法通用しないんだよね……あ、ハルトっ」
ルインの魔法に対して妖魔が迎撃したそのふいをついて、ハルトがティソーナを抜き放ち、横なぐりに切りつけていた。
しかし、切りつけた当人のハルトも驚いたことに、妖魔はその嘴で彼の剣を受け止めた。そして、首を振るうと、バランスを崩したハルトは吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
ルインは、剣を杖がわりに体を起こす彼の元に駆けつけると、大防御の魔法を唱える。これで、しばらくはもつだろう。
「大丈夫?ハルトっ」
「問題無い。問題無いが、ここはもうアレをするしかなさそうだな」
「ええっ!?ここでっ!」
周囲を見回す。
騒ぎに、流石に近くに人はいないようではあるが、ちらちらと、建屋の窓から見ている人影は感じられる。
「見てる人絶対いるよーハルト~」
「面倒くさいやつだな、お前は。早くしないと妖魔のヤツも痺れをきらして全力攻撃してくるかもしれないだろうが!」
「えーでも~~~」
「男同士だから問題ない!」
「えーでも~~~」
「減るもんじゃないだろう……いいから、するぞ、合体!」
「えー……む、むううううううふぐぐう」
なおも嫌だというルインに痺れを切らしていたのはハルトだったのだろう。
彼は、自分の唇を、ルインの唇に強く押しつけて、そして強く抱きしめてきた。
「ちょっと待ってよ。抱きしめられる必要はないんじゃなかった?」と思いつつも、その強引なまでのやり方に口を塞がれたルインはもう何も言えず。
目をつむり、どこからか湧き出てくる心地よい感覚に今は身を任せていた……。
2人の体から光が溢れる。
目映いばかりの閃光は2人の体を包み、2人の体の境目がその形と共に曖昧になる。そして、1つの形をとった。
そうこれが、ハルトの言う合体である
そこに現れた者こそが……。
「聖騎士ルイン=ハルト、ここに見参」
黄金に輝く鎧を身に纏い、右手には太陽の剣ティソーナ、左手には月の剣コラーダを持ち、不敵な笑みをたたえる男。
そう彼こそが妖魔の首領バニョラスを倒した男。
無敵を誇る二刀の聖騎士である。
「何と、バニョラス様を倒した男、生きておったのか?」
「やつの呪いのせいで、面倒な体になっちまったがな。ということですまないが時間も無い、サクッと決めさせてもらうぞ」
「ほざけ~~~~」
妖魔は、先ほどの教会の時と同様、2つの口から火炎を吐いた。
ルイン=ハルトはこともなげに、両の手の剣を振るうと、それを消滅させる。
そしてキッと妖魔の方を睨むと、両手の剣を逆手に構え、念を込める。
「地獄に落ちろ!ラピド・エスパーダ」
両手を交差させる。
次の瞬間には、真空の刃が妖魔の両翼を切り落としていた。
妖魔は唖然としていたが、時間差で放たれた次の刃で2つの首を落とされると、断末魔の声をあげて、やがて消滅していった。
「時間だな……」
ルイン=ハルトは両手の剣をシュッと振るい仕舞いながら呟いた。
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