みかじめ料
10歳まで屋台を出さなかったのは調味料、香辛料の研究のためだけではない。
むしろ「10歳になるまで屋台を出さず料理の研究をしよう」と思っていたのだ。
異世界で10歳で奉公に出て働いている者は珍しくない。
市場内で屋台で10歳の奉公人が働いていても別に目立たない。
俺は奉公人と思わせて市場内で働くつもりでいた。
俺は魔術学院の生徒だ。
市場内で働くのには奉公人のフリが出来る以外にも意味はあった。
市場が開く時間は朝4時から朝8時までと夕方5時から8時までだ。
つまり市場が開いている時間は学校のない時間なのだ。
なので学校に通うのと市場で働くのが両立出来る。
もう一つ10歳というのに理由がある。
10歳から国立の魔術学院は完全寄宿制になる。
夜8時以降まで、10歳の子供が働いていたら両親は心配するが、親元を離れれば両親に心配をかけなくて済む。
俺は屋台を引き市場に入って行った。
俺は市場の入り口にいる男に「どこが開いている場所か?」と聞いて屋台を設置する。
そこに屋台を設置するテナント代も支払う。
モンスターの肉を手に入れるためにモンスター達を倒した時のドロップアイテムを道具屋に売って小銭はある程度あるのだ。
商売を始めようとした時、ガラの悪い輩が俺に話しかけてきた。
「オメー金払ってねーだろ?」
「いや、テナント代ならもう払った。
ホラ、ここに証明書もある」
「わかってねーなー、そうじゃねーよ。
俺らの組にショバ代払ってねーだろ?」
「何でオメーに俺が金払わなきゃいけねーんだよ?
オメー物乞いするんならもう少し腰低いほうが良いんじゃねーの?
まあ人に施しをくれてやる程の持ち合せは俺にはねーけどな」
「俺の組に金払わなきゃいけないのは身の安全を守るために決まってるじゃねーか」
「別にテメーらに守ってもらおうとは思わねーし、金払おうとも思わねーよ。
つーかそんな話はどうでも良いんだよ。
どうせテメーらが何と言おうが金なんて払わねーんだから。
俺、金欠なんだよ。
オメーらの身の安全守ってやったらお前らから金もらえんの?」
「お前はヤクザから金取るつもりかよ!?」
「やっぱりヤー公かよ。
おいチンピラ、開店前の忙しい時に与太話しに来てるんじゃねーよ。
テメーみたいな人間のクズの相手、俺が優しくしてやってるうちに消えな」
「テメー本当に口悪いな!
そこまで舐めた口聞いときながら、五体満足でいれると思うなよ?」
「俺の口のききかたが気に食わなかったのか?
ソイツは申し訳ねーな。
元々口悪い上に、開店前のクソ忙しい時にくだらねー事で呼び止められて気が立ってんだよ」
「今更謝ってももう遅いぜ!
テメーは俺を怒らせた!」
「テメーはジョジョかよ。
それに俺は『じゃりんこチエ』のテツじゃねーからチンピラと遊ぶ趣味はねーんだよ。
・・・と今ふと思ったんだけど、もしかしてマサルってチエちゃんの事好きでちょっかい出してたんじゃねーの?
それにヒラメちゃんってもしかしたら大人になったら化粧映えする個性的美女になると思わねーか?
それとは全く関係ないが『個性的美女』って『ブス』の事だと思わねーか?
痩せてるブスは高確率で『個性的美女』って言われると思わねーか?」
「何サッパリわからねー事くっちゃべってんだよ!」
包茎チンピラAがあらわれた!
包茎チンピラAは仲間を呼んだ!
包茎チンピラBがあらわれた!
包茎チンピラCがあらわれた!
包茎チンピラDがあらわれた!
マサオはボーっとしている。
包茎チンピラAの攻撃!
ミス!マサオはダメージを受けない!
「何で反撃して来ねーんだよ!」
「七匹仲間を呼んで『キング包茎チンピラ』に合体変型するの待ってるんだよ」
「合体しねーよ!
する訳ないだろ!
つーか『包茎チンピラ』って何だよ!」
「何だよ合体しねーのかよ。
『包茎チンピラ』ってオメーらの事だよ。
包茎だろ?」
「オメーだって包茎だろうが!」
「当たり前だろうが。
10歳の子供がズルムケだったら逆に引くわ。
つーか自分の包茎否定しねーのな」
「うるせー!
いくぜ!オラ!」
6年間の試食のためのモンスター討伐で俺は後でステータスを見てもらったがレベル80くらいになっていたらしい。
そしてチンピラはレベルが高いヤツでレベル3だった。
魔力が高く、魔術を習っている俺はレベル1でも雑魚すぎてチンピラ達は相手にならない。
「おぼえてやがれー!」チンピラ達は走って逃げて行った。
デコピン以外何もしてねーだろうが。
つーか何だよその昭和のドラマに出てくる悪党みたいな捨てセリフは。
俺はようやく開店準備に取りかかった。
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