発現

「大きくなったら私はマサオちゃんのお嫁さんになる!」


「何勝手にマセた事ほざいてやがんだ。


生理もきてねークソガキのクセに。


だいたい俺みたいな人間のクズは結婚どころか遺伝子残さねーほうが良いに決まってるじゃねーか」俺と幼馴染の近所の女の子のやりとりを見ながら母親が心配そうに言う。


「・・・何でマサオはこんなに口が悪いのかしら?


誰から下品な言葉遣いを教えられたのかしら?」母親が首をひねる。


俺は前世で誰にも喋り方を習っていないし、人間のクズである父親の喋り方を真似たから口が悪くなったのだ。


しかしまともな親に育てられているせいか本当に上品に喋れるようになったと思う。


二言目には『うるせー』『黙れ』『殺されてーか』という親はもうどこにもいない。


それに殴られないようにコソコソと隠れて黙っている必要もないので、前世の子供時代と比べておしゃべりになったと思う。


「口は悪いけど優しい子だよ。


こないだも隣のお婆ちゃんに『おいババアまだ生きてんのかよ?


とっくにくたばったと思ったぜ。


草むしりしてんのかよ?


腰悪いのに無理してんじゃねーよ。


しょうがねーな、代わりに俺が草むしりやってやるから休んでおきな』って一日中草むしりしてたからね。


母親に向かって『オメーまだガキなんだからやりたい事我慢せずにもっと遊べ』って言うのは意味不明だけどね」父親は俺の良い部分を見ているようだ。


『親の贔屓目』なんて言うけど、俺に本当に良い部分なんてあるのかね?


クソ親父はガキだった俺を笑いながら殴って『生まれてすいません』って一発殴る度に言わせてたりしたけど。


まあ、シャブで体中ボロボロで中学校の頃には体力ではクソ親父に負けなくなって殴られなくなったけど。


俺は3歳になった。


ようやく自分の思う通り体が動かせるようになった。


しかしガキの体ってこんなにバランス悪かったっけ?


頭がデカいのか?足が短いのか?その両方かも知れない。


本当によく転ぶ。


俺が『魔法使いになりたい』と言ったら「もうそろそろ素質がある者は魔力が発現するよ」と父親は言った。


まあ魔力は発現するだろう。


神の折り紙付きだ。


別に本当は魔法使いになりたい訳ではないが『救世主になるには先ず魔力が発現しないと』神に言われたし『体を少しくらい鍛えても意味ない』と言われてしまうと魔力の発現を待つ以外する事はない。


その日は突然訪れた。


カナヅチだったヤツが水に浮くコツを覚える感覚と似ている。


今まで使って来なかった、使い方を知らなかった体の一部を使う感覚とでも言うのだろうか?


だいたい魔力はイスや机を子供が動かす事から始まる事から始まる・・・それは魔力が強い子供の場合だと言う。


魔力が発現した子供はその発現した魔力を育てていくという。


ロールプレイングゲームでの戦士は『魔力0』『MP0』だったりする。


そんな戦士はどれだけ成長しても『魔力0』は変わらない。


つまり「0は何倍しても0」なのだ。


発現さえしてしまえば成長曲線は様々だ。


早熟型で最初からある程度魔力があるが成長がすぐに止まってしまう者もいるし、最初は魔力が低くても後からグングン魔力が伸びる晩成型もいる。


また安定してずっと成長する持続型の者もいるという。


それを初めて聞いた時俺は「ダビスタみてーだな、やっぱり必要なのはスピード・スタミナ・勝負根性なのかな?」と思った。


俺の魔力の発現を一緒にいた母親は『局所的な嵐』と表現した。


魔力は俺と母親が近所の林まで薪になる枝を取りに行った時に発現した。


本当に家の中で発現しなくて良かった。


家は間違いなく壊れてたし、一緒に両親がいたら両親間違いなく死んでたと思う。


俺は魔力が発現した子供として、魔術の教育を受けに王城に通うことになるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る