第11走者 喰らい行く者
11
水中で歩くだけ大した事ないと思っていた。そう5分間は最初の5分は全くといっていいほどしんどく無い、だが5分たち逆回転になった時この特訓が牙を向く。
先程の5分間で出来た水流が歩きの邪魔をするのだ、全身で歩こうとしないと気を抜いた瞬間水の中に入ってしまう。
どうにかコツを掴みかけているのだが何かが足りない気がする。
「30分経ったから一回上がって下さい。」
まだ30分か。
「はあはあ、この訓練舐めてかかったらいけませんね。」
「ほう、最初の30分で自分の伸ばすべき場所が分かったのですか?」
「いや、ただ何かは掴みかけてる気がするんだがそれが何か分からない。」
そう何か掴んでいるはずなんだ感じて入るだがそれが何かわからない。
「なるほど、では三木様逆回転になった時どう思いましたか?」
「この訓練の意味を知ったよ自分で作った水流はまるで追い風だそれを物ともしない力がいるという様な事を感じたよ。」
「なるほど、50点ですな。」
「半分だと?今の俺の答えになにが足りない?」
「そうですね、たしかに波に勝つこれは正解です。ですが、それにとらわれ過ぎています。そうですね、一度潜ってみてはどうですか?最初の30分でそこまで導けるというのは相当な推理力です、あなたはもっと賢くなれますよ。」
潜る?どう言う事だ、進むのではなく逃げると言うことか?いや、そんなことはないだろう。
矗さんは波に勝つのは正解と言っていた。つまり勝ち方と言うことだろうか?分からない。
「休憩はおしまいです。始めて下さい。」
10分の休憩中にプールの波は止まっていたのでさっきの通り最初は楽だ、5分後から勝負は始まる。
「5分です。逆回転して下さい。」
始まった。やはり強い、これをどう抜ければいいんだ?「一度潜ってみては?」さっきの言葉が脳裏に走る。
「これでなんも感じなかったら怒るからな。」
誰に向けているのかも分からない怒りをこの波にぶつけてやる。
ドブン。
(なんだよやっぱり潜ってもなにも感じないじゃないか。適当こきやがって。)
そう思い上がった刹那。
「うわあ。」
つい大きな声が出てしまった。何が起きたんだ?いや違うずっと起きていたんだ。ずっとこのプールの波は5分間回し続けた俺によってずっとまわっていたんだ。
だが何故そんなことに気づかなかったんだ?
まさか!
「水面と底では波の速度が違うのか!」
「ほう。」
何故こんな簡単なことに気づかなかったのだろう?そうかさっきうまく歩けなかったのは大して速くない底にある足で立とうとしたから流れの速い場所にある上半身は耐えきることができなかったのか。
つまり、俺の伸ばすべき能力は…
「上半身を鍛える事。」
「正解です。まさかあのヒントでそこまで辿りつとは、やはりあなたは賢くなれますよ。」
~
「蟻地獄と言う虫を知っていますか?」
「はい、あのトラップみたいなので蟻を捕まえる奴ですよね?」
「そうでございます。ではお二方にはこちらの塔の最上階に行ってもらいます。」
「塔というよりコロシアムみたいじゃね?」
「なるほど、猫垣様慧眼です。ですがこれは塔です。もっとも上からの景色は大して綺麗じゃありませんが。とりあえず入りましょう。」
中は何も無かった。厳密に言えば入り口から中心へ続くトンネルがありそこを出ると7段ほどの階段があり7段目にはクッションでできた入り口がありそれが塔の中心を囲うようにクッションで出来た柵で囲まれている。クッションといっても体操などで見る頑丈なものだし鉄の柵にそれを巻いているそんなものだった。
あとは蟻地獄のような坂以外何もない。
「まさかこれを?」
「その通りです。この蟻地獄塔を登りきって下さい。」
「手は使っちゃダメ?」
「そうですね。」
「まあでも簡単なんじゃねーの?確かに高さでいったらビル3階ってとこくらいあるけど、傾斜は大したことねーだろ。まあ、ウォームアップのつもりでのぼりますか。」
「英吾くん待ってよー。」
「なるほど直線に行きますか、ですがそれだと…」
「ヨユーヨユー。こんなん楽勝だよ。」
あと2割程その時だった。
「うわっ!」
ドンっ!!
「大丈夫ですか猫垣様?」
「イテテ。ああ大丈夫大丈夫。ちょっと足を滑らしただけだから。」
「おっとと。英吾くん大丈夫?」
「理科、僕なんか気にしないで登ってていいのに。そんなんだから記録伸びねんだぞ。」
「そうじゃないんだ。」
「え?」
「気づいているんだろう?足を滑らしただけじゃない事くらい。」
「ああ、最後の約2割程の地点から角度が上がった。ありゃ無理だ。でも登るしかねんだよ。」
「純粋な脚力なのかなあ?」
「え?」
「いや、矗さんが言ってただろう伸ばすべき能力って。それが純粋な脚力とは思えないんだ。」
「なんで?」
「脚力は僕らに必要だよでもここである必要がない。合宿に来て脚力を鍛えるだけなら砂浜で走った方が良いじゃないか。でも僕らはこの蟻地獄塔にいる。つまり別にあるんじゃないかな?」
(この中川様相当頭の切れる方ですな。常に裏を読む準備ができているそんな青年だ、だとこの簡単な問題は逆に解きずらいのでは?)
「じゃあ、回るか。」
「ちょっとまってよ、蟻地獄だから回るだなんてそんな簡単なわけないだろう。」
(やはりこうなりますか、ここでどれだけ猫垣様が中川様を説得できるかでしょうね。)
「お前100m何秒?」
「え?今そんな事関係ないだろ。」
「いいから、15秒67」
「じゃあ、200mは?」
「測った事ないからわかんないけど31秒くらいじゃない?」
「それどうしてそう思う?」
「そんなの決まってるだろ100で15秒67なんだから2倍したんだよ。」
「そうだよな、でも誓ってやるもっと遅い。」
「何?悪口?真剣に考えないなら僕だって怒るよ。」
「何故遅くなるか教えてやろう、それは…」
「おい!怒るって言ったよなぁ。」
「まあ待てむっつりスケベそう急くな人の話はちゃんと聞けいいか遅くなる理由それは、減速するからだ。」
「は?体力がないとでも言いたいのか?お前は全くそりゃ体力の関係でみんな減速するんだよだから2倍にはならない常識じゃないか。」
「いや、もう一つあるんだよ。大事なものが。」
(猫垣様は察しは良いが話すのが苦手なのですかね?)
「なんだよ。」
「全くここまで言ってわからんかったか。はあ、コーナーだよ。」
「そうか!カーブ。200mには100mにはないカーブがあるのか、つまりこれはカーブするときに減速しないようにする能力の獲得のための物っていうわけか。」
「直線でも割とある上にそれを回転しながらな上に駄目押しの角度のアップこれ相当きついぞ。」
「じゃあやめる?」
「アホか、やめねーよ。」
「うん、知ってた。」
(口論の時は仲が悪いのかとも思ったが違ったか。それほどに信頼できるということかな?)
~
「ではお二方には、ビーチフラッグをしていただきます。」
「はい。」
「…はい。」
「他のチームは、何が目的かわかりずらいですが、このチームは単純明確瞬発力です。」
「あれ?忠臣さん言っちゃっていいの?」
「はい。瞬発力は数をこなすしかありませんからね。目的を持ってするのと知らないのでは、練習の価値が違います。」
「…なるほど。」
「では、早速始めますよ。」
ビーチフラッグ:旗を立てそれに対して反対にうつ伏せになり合図とともに立ち上がり旗を先にとった方が勝者となるもの。
国見と社の速さはあまり変わらないのでどれだけ早く合図に反応できるかの勝負となる。
(しかし、坊っちゃまは悪いお方だ。あの国見様の速さは同じくらいと聞いていおります。それでは絶対に勝てない。この宇宙ノ光ノ軌跡 忠臣元軍人故に体力勝負や速さ冷静さ知能では坊ちゃま負けたことがありませんが唯一ビーチフラッグでは勝ったことがない。)
「では参ります。よーい…」
「まあ、気楽にいこうぜ。」
「…はい。」
「ドン。」
決して国見の反応が悪かったわけではない。ゲームセンターで見せた超反応で社より早く動いていた。だが、国見が走り出した頃にはすでに社は3歩程距離にして6m先を走っていた。
そのあと何回何十回としたが国見が午前のうちに旗に触れることは無かった。
~
流石にずっとプールに入ったのは寒かったな。まあ、風呂を入れてくれたから良いけど。超気持ちいい。
上半身で立つそんなイメージだが、なにぶん生まれてからしたことの無い事だったので慣れなかったが最後の5分は感覚が掴めたので逆回転してすぐに動き出すことができた。
午後は違うことをすると言っていたが、もう少し上半身の感覚を掴みたかったんだがなあ。
まあ、できないのなら仕方がない。さーて、早く飯食いに行こ。
風呂か出ると食堂からいい匂いがしてきた。
つーかもういいけど家の中に食堂があるとか意味がわからん。本当に医者だけなのか?やべえ物捌いたりしてるんじゃねえの?
「あっ!三木先輩遅いですよー。」
「ああわりわり。昼飯って何?」
「ビュッフェです。」
びゅっふぇ?なんだろ?あれかな?牛肉かなんかの料理かな?
取り放題の方だった。
「ホテルの朝食かよ。」
もう驚く物もないかと思ったが…はあ。よくあんだろと思っている奴らがいたら言ってやりたい。現実に起きたら怖いんだよ。
「しかし全部美味そうだな。見た目も綺麗だし。」
「それは有難うございます。」
「ん?ああシェフの人ですか。いやいやこちらこそありがとうございます。」
流石にシェフは想定内なので驚きません。
「三木様、何故そんな他人行儀なのですか?さっきはそのような感じではありませんでしたが?」
「え?あ!」
執事でシェフ、これは驚くよね。
ひと通り取ると端の方におにぎりが置いてあった。
「なんだこりゃ?なんだか形も歪だしもう置く場所ないしいっか。」
「おい。数人、てめーは結局金か?見た目か?あん?」
「あれ?小森コーチきてたんすか。なんでそんな怒ってんですか?」
「あれを見てみろ。」
そう言って指差した方向を見た。
「私のおにぎり誰も取ってくれない。頑張ったのに…数くんも取ってくれなかった。」
なんということだ、あれは保険ちゃんが作った物だったのか。今にも泣きそうだ、俺に出来ることはあの泣きそうな保険ちゃんを笑顔にすることだ!ロリコンでも構わない。
「理科!お前体が細いから遅いんだ!俺の分も食っとけ!」
「えっ!これでも無理した方なんですけど。これ以上は無理ですよ!」
「知るか!少しでも残したら例の件お前は抜きだ!」
例の件についてはまた後で。
「えー!そんなの無いですよ。」
「だったら食え。」
「先輩がたべてくださいよ!」
「俺にはそんなの食いたく無い!」
「三木様の口に合わなかったのでしょうか?さらなる改良の為何がダメだった言ってくれませんか?」
ごめん。執事。一口も食ってないからわからん。だが、一つ言える。
「愛が足りん!」
愛である。
「保険ちゃん俺間違ってたよ、目の前のことに囚われて一番大事なことを見失ってた。ごめん。ここにあるおにぎり全部もらうね。」
アニメの主人公が闇落ちしそうになったのを助けたヒロインに対して言うような言葉を吐いて、皿ごと全てのおにぎりを持ち帰った。
「約25個…余裕だぜ。」
おかか、おかか、ツナ、おかか、おかか、梅、おかか、おかか、おかか、たぬき
10個食べたけど、おかか多くない?
「保険ちゃんお茶ちょうだい。あとおかか多くない?」
「はい、お茶ですね。すみません数くんおかか好きだからいっぱい作っちゃって。」
おかかしかいらんわ。どんだけ可愛いんだよ。
ツナ、ツナ、ツナ、ツナ、ツナ
5連ツナ。
「お茶です。」
「ツナも多くない?」
「数くんツナ好きって言ってたから…ごめんなさい。まさか一人で食べるとは思わなくて…」
それはごめん。
残り10個ここに俺の残りの胃を全て捧げる。
おかか、ツナ、おかか、ツナ、おかか、おかか、たぬき、たぬき、鮭
まさか鮭と梅が一個ずつとは思わなかった。しかもたまに来るたぬきが少し胃に来る。だが、あと一個胃が破れてでもねじり込む(食べる)。
塩握り。
「何故最後外れ?まあいいやこれで保険ちゃんの笑顔は守れてただろう。」
「おい、外れで悪かったな。」
「え?」
「24個だったから5の倍数にするために私が握ったのだが?貴様はそれを外れと言うのか?」
小森コーチかよ!たしかにちょっと今までと比べると米の密度すごいなとは思ったけど。
「貴様を腹パンの刑に処す。」
いやいやいやいやいや、この状態でそんなことされたら保険ちゃんの愛が溢れ出ちまう。
「ちょっと部屋で休んできまーす。」
DASHした。
そして、ベットへDIVE。
「ああ、食い過ぎた。胃薬持ってきたらよかったな。」
コンコン。
ビクッ!
本当に体が震えた。おいおい教師が生徒殴るために来るってどうよ?
「数くーん私ですよ。開けてください。」
「なんだ保険ちゃんか。はいはいちょっとまってね。」
ガチャ。
いた、悪魔が。
「すいませんでしたー。だから殴らないでください。」
土下座。
「殴るわけないだろ。私は教師だぞ。来たのは集合時間を言いに来たんだ1時間後の2時スタートだから遅れんなよだとさ。んじゃ。」
助かったのか?奇跡だ。
全く保険ちゃんを使うとは汚い(何もされていない)。
そういえば、保険ちゃんはどこ行ったんだろ?
とか考えながら、ベットに再DIVEした。
「うぎゃ。」
「ん?」
腹のあたりにへんな感触があった。
「重いですよ数くん降りて下さい。」
保険ちゃんがいた。なんで人のベットで寝転がってんの?
「全く確認してからDIVEして下さい。」
「ごめんごめん。で、何しに来たの?」
「はい、これを持ってきたんですよ。胃薬です。」
なんと有能な事だろう。
「さっきは有難うございました。私の為に食べてくれたんですよね?」
「馬鹿者そんなんじゃねーよ。一個食ったら美味かったから25個食べただけだ。」
「作った側としてはとても嬉しいですが、食べ過ぎはダメです。いいですか?」
こう言う時の上から目線の保険ちゃんが一番可愛い。
「ああ、気をつけるよ。」
「よろしいです。」
訂正やっぱ笑顔が一番。
午後凄い頑張れそうだぜ。
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