第7話


 ~きっと、このまま暮らしていたら、今日より明日の僕は狂っているだろう~


『実践』



「楓守も、メイの弟子⁉」


 こっちが驚きだわ!


「あれ?言ってなかったっけ?」


 殴るぞ、おい。

 そのわざとらしい喋り方止めろ。

 シズも俺と同様怒っている。やっぱり、メイの性格には苦労するわな。


「楓守(君)、どういうこと(ですか)?」


 あっ、ヤバい。

 チームのみんなにメイの弟子だってこと、バレた・・・。

 冷汗が、ゆっくりと首筋を通る。


「そのままだよ。楓守とシズは、私の弟子だってことだよ(ニヤッ)」


 この状況で俺とシズが、大声出せないこと分かっててやってるな、あれ。

(シズ、後で絞めるか?)

(当たり前)

 これで共闘成立!

 今日がメイの命日だ!


「これは、本人に聞いた方がよさそう(です)ね!」


 あっ、ごめんなさい・・・。

 今日が命日なのは、俺の方でした。

 この惨事の後、俺は大量の謝罪と、言い訳を5人にした。

 あれ?

 何か人数多いような・・・。

 おい!シズ!いつの間にそっち側に行ったんだ。

 どっちかと言えば、シズはこっち側だろ! 



「各チームごとに、ゴーストタウンに向かってください。ただし、21時までにはこの学校に戻ってきてください。それでは、解散」


 メイの指示で、全チームが一斉に動き出す。

 俺の出る幕はあるのか?


「さあ、みんな行くよ!」


 総指揮してるときは敬語で話してるのに、俺たちの方に戻ってきたらすぐにタメ口になるって、どんな奴だよ。

 メイに連れられて、歩くこと30分。先に、頽廃した街が見えてくる。

 これが、ゴーストタウン・・・。


「さあ、こっから気を引き締めてね!」


 そう言っている本人が、気を引き締めていない件について。


「私から一つ提案いい?」


 何だね、メイよ。


「まだ2人を除く、みんなの実力が全然分かってないから、アグロ・キュートに遭遇したら、初めに攻撃してくれないかな」


 確かにそれは1理ある。


「そんなの死んじゃいます!」


 が、それも1理ある。


「そこは安心して。もしもの時は、私が責任をもって助けるから」


 さすが隊長、頼もしい。


「確かにそれは安心ですね。よろしくお願いします」


 これで決まりだな。

 初撃はジェリー、紗綾、シビーがすることになった。

 さあ、ここからスタートだ!


 とりあえず、ゴーストタウンの中心部に移動してみる。

 これは、メイからの提案で、街の中心部は広い場所が多いから、初めての戦闘には向いているらしい。

 しかし、その代わり奴らも拠点にしていることが多いらしい。

 周りには壊れた車や、信号、消火栓などがゴロゴロと転がっている。

 夜になると、電気が通ってないから、かなり危険になりそうだな。


「⁉、ステージ1のアグロ・キュートが1体来るぞ!」


 さすがベテランハンター。

 気配だけで、ステージと、何体来るのかが分かる。


「3人で行け!」

「はい!」


 建物の影から黒い胴体が見える。

 やっぱりステージ3とは違って、大分小さいな。


「ガグーー!!」


 威嚇の叫びが、波のように街へ響く。


「シビーはサポートよろしく!紗綾、行くよ!」

「了解!」

「いい仲間じゃないか」

「そうだね。俺は幸せだよ」


 てかそんなこと言ってる暇じゃない。

 今は、3人をしっかりと見守らないと。


「私がハイドで急所を狙うから、紗綾はアクセルで相手を誘導して」

「分かった!」


 アグロ・キュートの急所は、腹部の1部分だ。その所は、黄色く光っているので分かりやすい。ただし、奴らは四つん這いで歩いているので、狙うのは難しい。

 ジェリーの姿が忽然と消える。

 それを確認した紗綾は、サポート役のシビーが隆起を当てやすそうな場所に、得意のアクセルでアグロ・キュートを誘導していく。


「シビー、今っ!」

「ハッ!」


 紗綾の掛け声に合わせて、シビーが地面に両手をつき、能力「隆起」を発動させる。


「ゴゴグー!!」


 すると、地面が勢いよく隆起して急所にダメージを与えたうえ、アグロ・キュートの巨体を空中に持ち上げて、ジェリーに攻撃のチャンスをつくった。


「ジェリー!」

「ここだ!」


 シビーの声で、ジェリーがハイドを解き、隙だらけのアグロ・キュートの急所に渾身の蹴りを放つ。


「ガーーーー!!!ガギ・・・・・」


 ドサッ。


「やった~!!」

「わーい、わーい!!」

「完璧です!」


 あっという間に倒してしまったな。

 あっぱれと言うしかないな。すごかった。

 3人が、とても嬉しそうな表情でこちらに戻ってくる。


「3人とも素晴らしかったぞ。洗練されたチームワーク、個人の能力ごとの役割分担。いやぁ~、さすがだな!これでみんなの実力は分かった。今からは、状況に応じて対応していくようにしようか」


 3人ともメイに褒められて嬉しそうだ。

 まあ、傍から見たら日本VP序列2位の大物だからな。


「シズはどう見た?」

「・・・・。早く戦いたい」


 そうかそうか。我が妹は、そんなに戦いたいのか。

 次は、トップに走らせてあげるか。

 実力も見ものだしな。


「・・・・駆逐する」

                   

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