第4話
『危険思想』
俺は、午前中の授業でやらかしてしまったので、昼食は抜きにされた。
絶対に後でイチゴタルト食いに行く。
午前中のチーム対抗練習試合は、あまり成果を得られなかった。
チームのみんなには、本当に申し訳ないと思っている。
それはそれで置いておいて、午後はアグロ・キュートの映像を見ることができる。俺たちⅤPがこれから戦うことになる重要な敵だ。
俺は、午後の授業が始まるまで教室で静かにしていた。
「古谷、そんなに落ち込むなよ。お前が先生の姉の弟子なのが、悪いんだ」
今、教室には先生と俺しかいない。
なので、今俺がメイの弟子だということを先生が言っても、俺は怒らない。
「みんなの前では、言わないでくださいよ」
「分かっているよ。お前が今実力を全て出したらどうなるか見たいけどな」
「どうなるか知っててそれ言ってますよね。俺は、まだ学校生活続けたいです」
俺の今の心情を、正直に語る。
「いざとなったら、分かっているな」
ミク先生が、威圧的な表情で俺に尋ねる。
「分かってます。本気で相手を叩きます」
「それでいいんだ。お前は先生より強い。頼りにしてるぞ」
そうなの?
けど、立場上それは言ったらいけないでしょ。
「ありがとうございます」
「10分後に授業を始める。席に着いておけ」
「分かりました」
やっぱり喋りにくいんだよなー。
メイにはタメ口で話してるせいかな。
俺は、そんなことを考えながら、席に着く。
「楓守、来てあげたよ」
「随分と早いな」
「楓守が寂しそうにしてそうだから、ジェリーが早く昼食を済ませて教室に行こうって言うから、早く来た」
「ちょ、それは・・・。恥ずかしい。鬱で死にそう」
ジェリーが俯いてしまう。
恥ずかしいことじゃないだろ。
「ありがとう、ジェリー」
「私たちは、チームだからね!」
気持ちの切り替え早いな。
まあ、元気になったみたいでなによりだ。
「⁉、兄貴!こんにちは!」
⁉
こっちがビックリしたわ。
「おう」
「おい、お前ら!兄貴に挨拶忘れてるぞ!」
「すいません!楓守兄貴、こんにちは!」
えぇ~、これでチーム「ギルティー」の4人に兄貴って呼ばれるようになったんですけど。
色々と、めんどくさいから止めて~。
おっと、もう5分前か。
授業開始の5分前になると、クラスのみんなが一斉に集まってくる。
まあ、先生を怒らしたら良いことないからな。
「キーンコーンカーンコーン」
「全員揃っているな。午後の授業は、朝のSTで言った通りアグロ・キュートの映像を見てもらう。この前は、イラストしか見れなかったが、今回は奴らの動きを見ることができる。では、始めるぞ」
教室前の、デジタル液晶に1人の人間の姿が映る。
白髪のおじさん?誰だ?
「彼は、ジュノーの最高責任者、佐川寺氏だ」
この人が、俺たちを創ったのか。
「危険思想とは、常識を実行に移そうとする思想である」
何か、格言みたいなこと言ったな。
「次の映像から、アグロ・キュートだ」
液晶に、街が映し出される。しかし、その街に人の住んでいる気配はしない。つまり、ゴーストタウンだ。
「アグロ・キュートは、このような人が住みつかなくなった所、人の住んでいない所を住みかとしている」
⁉
これは、かなりエグイな。
今、液晶にはアグロ・キュートが、食料である動物やもはや何なのかも分からなくなったものを、食べている映像が映されている。
クラスのみんなの反応は「こんな気持ち悪いのと、戦うのかよ」「昼食の後だから、止めてくれよ。吐いちまう」など、マイナスの言葉が多い。
「奴らの食料は、見ての通り動物なら何でも食う。当然、人間も食われる」
先生の言葉に、クラスの大半がビビりあがる。
「この程度で怖気付いていたら、まともに戦えないぞ」
その通りだ。
いざ、正面に向かい合って対峙したときに動揺しない肝をつくっとかないと。
「次は、実際のアグロ・キュートとの戦闘映像だ。しっかり見ておけ」
液晶が切り替わり、映像が映し出される。
そこには、アグロ・キュートのステージ2と、ⅤPと思われる3人の人たちが映っていた。
「足止めしてくれ!」
リーダー格の1人の男が、仲間の女に指示を出す。
「了解!」
女が、両腕をアグロ・キュートに向けて、泥のようなものを放った。
すると、アグロ・キュートは動こうとするが、かなり動きにくそうだ。
泥にネバネバの液体が、混ざっているのか。かなり、特殊な能力だな。
「これで、どうだっ!」
リーダー格の男が、大きなハンマーを振り上げて、アグロ・キュートの頭にヒットさせる。
あれは、能力「筋力強化」かな。オーソドックスな能力だな。
しかし、これはいいダメージが入ったんじゃないか?
えっ、マジか⁉
あれを受けて、倒れない⁉
リーダー格の男は、アグロ・キュートに大きく跳ね飛ばされる。
ステージ2でも、侮れないな。
すると、さっきまで動いていなかった女が、リーダーの方に走って行った。
何をしに行ったんだ?
女は、男に手を当て始めた。
手先に、緑の温かい光が輝く。
珍しい能力だな。これは「治癒」で間違いないな。
「もう1度行ける?」
治癒をした女が尋ねる。
「ここで俺たちが食い止めないと、街に被害が行く。ここで、俺たちが倒す!」
さすがだ。肝が据わっている。
「次は、あいつの急所を狙う!」
アグロ・キュートに急所あるのかよ。
「アグロ・キュートの急所は、腹の真ん中だ。奴らは、四つん這いで行動するから、普通に狙うのはかなり難しいだろう」
説明ありがとう、先生。
「すまない、囮になってくれるか?」
「当然だよ。しっかり決めてね」
ネバネバの泥の人は、男を完全に信用している。
すごい団結力だ。
「1撃で決める!」
女が、アグロ・キュートの方めがけて一直線に走って行く。
それに続き、男も後ろを走る。
「おーい、おーいこっちだよ」
ギロッ。
アグロ・キュートが女に、足を大きく振り上げる。
「ガラガラだ!」
作戦通り、男がアグロ・キュートの懐に入り込み、ハンマーを薙ぎ払った。
「バキッ!!」
何かの甲羅が割れたような、音が鳴る。
その後、アグロキュートはゆっくりと大きな体を、床に倒した。
そこで、映像は終わった。
「映像は、以上だ。見ての通り、奴らを倒すにはチームワークと、個人個人の実力が必要になってくる。今後の学校生活で役立てるように」
ステージ2が、あの強さ。なら、ステージ4はどんな化け物なんだ。
先が思いやられる。
その後の授業は、プリントが配られそれを読んで勉強するだけだったので、あまり面白くはなかった。
「明日についてだが、明日はA組との合同練習が基本になる。喧嘩はするなよ」
明日は、体力が持たなそうだ。
つづく
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