第2話


 『校内トップの猫姫』


 学校の決定事項で、俺は4人部屋に男1人、女3人で暮らすことになった。

 間違いが起こりそうで、不安しかない。

 まあ、それは置いといて、俺は今4人で寮へ向かっている所だ。

 空は、少し暗闇を見せ、怪しい雰囲気を醸し出している。


「お前邪魔なんだよ!!」

「そんなこと、学年序列40位のお前に言われる筋合いないわ!!」


 突然、寮へ向かう道の先で怒号が聞こえた。

 喧騒の雰囲気がその場を包む。

 野次馬がたくさん集まってくる。それに続くように、俺たちも様子を見に行く。


「俺の前に立つなよ!!」

「それは、こっちのセリフだ!!」


 大きな道の真ん中には、2人の大男が言い争っていた。

 多分、見たことがない顔だから、2年生か3年生だな。

 俺が止めに入った所で、2対1になりそうだから、ここは傍観するか。


「ちょっと、あなたたち。3年生のくせに、何後輩の前で恥さらしてるの」


 ⁉

 この場の雰囲気で誰かが割り行った⁉


「これ以上続けるなら、実力行使でねじ伏せるよ」


 この声は、生徒会長⁉

 今日は入学式の片づけで忙しいはずなのに、何でここに?


「すいませんでした!!」

「許してくだせぇ!」


 2人の大男が、小柄な1人の女の子に頭を下げている光景が、ここにはあった。


「次問題起こしたら、どうなるか考えててね」


 笑いながら、怖いこと言うなぁ~。俺はあまり関わりたくないタイプだ。


「「失礼します!!」」


 2人の大男が走って去る姿は、滑稽なものであった。

 周りでは「生徒会長マジかっけぇ~」「同じ女として憧れる!」「生徒会長は、俺の女だぜ。ヒャッハッハー!!」などの声が上がっていた。


「生徒会長の戦い見たことないけど、さっきの見ただけでどれくらい強いのか予測できたよ」


 ジェリーが少し怯えながら、生徒会長を褒める。

 確かにさっきのやり取りからして、生徒会長はかなり強いな。


「あの~、古谷君知ってる人いますか?」


 ?

 これは、幻聴だよな。そうだ、これは幻聴だ。


「楓守、呼ばれてるよ」


 幻聴じゃなかったー!知ってた。知ってたよ。

 けど、人から現実を突きつけられるのって、けっこう悲しいものなんだよ。


「俺です」

「君が古谷君!いい顔してるねぇ。私より強いまであるなこれ。ミク先生が推してくる理由も分かる気がする」


 ビックリしたー!「俺です」って言った瞬間に目の前に来てるって、どんな化け物スピードだよ。

 さっきまで野次馬だった人たちが俺の方ガン見してくるんで、早く終わってー。


「すいません、俺に何か用ですか?」 

「ああ、ごめんごめん。特に用って訳じゃないんだけどさぁ、これから君とは関りが多くなりそうだから、顔だけでも見ておこうかと思って」


 どういう意味だ?

 まったく意味が分からん。


「どういうことですか?」

「それは、まだ言えないかな。私は仕事があるから、これで失礼。早く君の実力が見たいよ」


 何か言い残す形で去って行ったんだが。

 俺はちょっとプンプンだよ。プンプン、プンプン。

 周りからは「あのガキ、調子乗りやがって。生徒会長は渡さんぞ」「あいつの名前は覚えた。明日、絞めに行くか」などの声が聞こえたような、聞こえなかったような。

 もし、現実だったら俺は明日死にます。


「いつの間にあんなに仲良くなってたのかな?」


 ジェリーが怖い。

 また、顔は笑ってないけど口は笑ってる。


「さっきの話聞いてただろ。俺は初めて話した」

「そうだったね。私の勘違いだった」


 危ない危ない。入学初日で死ぬ所だった。

 それより、早く寮に行きたい。

 今日はもう疲れた。寝たい。


「早く寮に行きましょう。荷物の用意もしないといけないですし」


 ナイス!シビー!

 俺の言いたいこと、言ってくれた。


「そうね。早く行きましょう」

「そうだね」


 ジェリーも紗綾も納得してくれたようだ。

 ようやく、寮への出発をきった俺たちであった。


『男1人はきついです』


 寮は、1分程歩いたらすぐに着いた。

 校内の敷地面積が広いから、遠いのかと思ってたけど、以外と近くて助かった。

 部屋番号は、103。

 寮の部屋前に来て、先生から貰った鍵を取り出す。

 先生に鍵を貰った時に、何か変なことを言われたような気がするが、それは無視しよう。

 早く開けよう。


「ガチャ」

「ホテルみたいな部屋だね」


 鍵を使い部屋を開けて、一番に声を上げたのは、紗綾だった。

 確かに俺も同意見だ。さすが、幼馴染。

 部屋の中は、簡単にいうと手前にバスルーム。奥に2段ベッドが2つ。その間に、丸いテーブルが1つ置いてあるという感じだった。

 まあ、案外広いんじゃないか。


「まずは、個人で荷物の整理をしましょ。けど、私は試合の汗を流したいから、先にお風呂頂くね」


 ⁉

 お風呂、だと⁉

 そこまで考えが回っていなかった。これは、問題が起こりそうだ。


「ジェリーが入るんだったら、私も入りたい」

「私も一緒に入りたいです」


 ぬ⁉

 3人でお風呂に入るのか⁉

 3人で入ったら、押しくらまんじゅうになって、ジェリーのたわわな胸が・・・・・。


「楓守」

「はいっ!」


 頓狂な声出しちゃった。

 はぅ・・・。恥ずかしい。


「先入るけど、覗いたらダメだよ」


 そんなこと、そんなこと・・・・。


「しないよ!」

「私たちが出たら、楓守も早く入ってね」

「おう」


 3人は、バスルームに姿を消す。

 ふぅ~~。心臓のバクバクが止まらない。

 荷物の整理早くしないと。

 これがこっちで、これがあそこに置いておくか。

 よしっ!大体の整理は終わった。けど、暇だー。

 お風呂からは、楽しそうな声が聞こえてくるし。

 俺も行きたいなぁ~なんて思ったり。

 ダメだ!!それは、犯罪だ!

 とりあえず、今日1日の重要点をまとめるか。

 アグロ・キュートはステージ1から4まであり、人間に悪影響を及ぼしている。俺たちは、4人で1つのチームを作って、アグロ・キュートに向かい打つ。

 まだ、戦ったこともないし不安しかない。けど、俺たちの努力で報われる人が居るんだったら、俺は全力で戦いたいと思う。

 そんなことを考えている内に、10分が経過した。


「楓馬(君)」


 ?

 女子隊の3人が、バスルームの入り口から顔だけ出している。

 3人ともどうしたんだ?


「タオル取って~」


 はぁ?

 何で取ってないんだよ。しかも、3人とも。

 まあ、別にいいけどさぁ。


「どこにあるんだ?」

「荷物の中」

「絶対にタオル以外見ちゃだめだよ!」


 そんな芸、俺にはありません。


「そんなの取れないぞ」

「と・る・の!」


 これは、頑張って取るしかなさそうだ。


「分かったから、ちょっと待って」


 俺は、3人の荷物の中から頑張って手探りでタオルを掘り当てた。

 堅いものに手が当たったのは、気のせいだと俺は思う。

 そして、手渡ししに行こうとバスルームに歩いて行ったら、


「こっち来ちゃダメ!!」


 怒られました。シクシク。

 結局は、タオルを投げて、それを取ってもらった。

 取り損ねて、醜態を晒しそうになった人が約1人いるが、それは気にしてはいけない。


「上がったわ。楓守入っていいわよ」

「おう」


 のうのうと上がってきやがって。

 俺はお怒りですよ。プンプンプンプン。

 俺は、シャワーを軽く浴びてすぐに風呂を終えた。


「上がったよー。って何してるの?」


 女子隊は、丸テーブルを囲んで何かを話し合っていた。


「何してるのって、明日のことだよ」


 紗綾が説明してくれたのは、まあ良いんだが、説明が抽象的だな。

 混ざってみないと分からないので、とりあえず話に混ざってみる。


「皆さん、明日からは4人での行動が多くなり、戦闘練習も入ってきます。私は、皆さんのサポートを徹したいと思います」

「そうだね。この中でサポート能力があるっていったら、シビーくらいだもんね。攻撃能力が多いのか、このチームは。


 よく考えるとそうだな。ジェリーは考察力があるな。


「けど、楓守は何でもできるマルチタイプだから、問題はないんじゃない」


 紗綾君、なにを言っているのかな?

 話がややこしくなるから止めてくれ。


「確かにそうですね。今日の決勝戦を見たところ、防御も攻撃もすごかったです」


 べた褒めありがとう、シビー。


「あっ、やばい!もう消灯時間だよ!」

「本当だ、みんなお休み~」

「お休み」


 この学校の消灯時間は、11時だ。

 俺たちは、世界を背負っている身だ。これくらいは、当然か。


 明日からは、忙しくなりそうだ。


                                           つづく

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