あと何度

この公園で見る桜の花は、今年が最後になるのでしょうか?

ゆっくりと歩く桜並木の中、ときおり舞い落ちる花びらが私の躰に優しく触れる。

目を閉じれば、楽しかったあの頃の思い出が蘇る。

もうじき、私はこの桜たちと別れを告げなければいけない。

それはもう二度と、この桜たちに出会うことが出来ない、私のこれからの時間のこと。

あと、どれくらい私はこの桜たちと一緒にいられるんだろう。


春のほんのいっときのあいだしか咲き誇らないこの花たち。

散るためにその花をつけ、消えゆくために咲き誇る淡き花。

淡きその色はまるで、私自身を映し出しているかのようだ。

今まで耐えしのぎ、こらえ、その瞬間をずっと待ち焦がれていたように、一斉に殻を破り咲き始める。

命を芽吹くその力を今私はこの躰全身で感じている。


もう後戻りは出来ない。

この花を見るのは今年が最後。

多分来年はこの花たちを私は見ることは出来ないだろう。

誰が決めたわけでも無い。

私自身そう決めたわけでも無い。

でも、現実は必ずその決まりを私に突きつけるだろう。

だから、これが最後の出会いになる。


私はあなたと出会えて本当に良かったと思う。

もし、出会うことが出来なければ今の私はいなかったんだから。

最後にあなたに出会えて本当に良かった。

優しくて、ちょっぴり意地っ張りなあなた。

いつも、私の前では笑顔でいてくれた。

でも私は知っているんだよ。あなたはとても泣き虫だって言うこと。

だからあなたの笑顔は私には、とても悲しく見えた。

毎年この桜の花を、二人で眺めながら手を繋いでいたね。

いつも私のそばにはあなたがいてくれた。

そばに居てくれたから私は今までここに居れたんだと思う。

その私の手を握るあなたの暖かい手のぬくもりはもう今はなくなったけど、その思いはまだ私の心の中でしっかりと生きているんだよ。

思い出だけを残し、あなたは私の前から消えた。

いいえ、私があなたの前から消えたんだ。

だから、この桜は来年はもう見ることが出来ないんだ。


私も、あなたと同じ。

ここから旅立たないといけなくなったから。


千本桜の並木は、咲き誇る花に包まれ白く輝いていた。

多分、来年も。

この桜並木には、たくさんの花が。「うん」絶対に咲いている。


たとえ、私がいなくても。

桜の木々はずっと、ずっと見守ってくれているはずだから。


もし、また来年もこの花を見ることが出来たなら、私は、あと何度この花の森へ訪れることができるんだろうか?


また見ることが出来ますか? 

できることなら何度でも、この目にあなたの桜を見ていたい。

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