この花に
ひとひらの桜の花びらが僕の元に舞い降りてきた。
もう、桜花の季節は終わったはずなのに。
何処から舞い降りてきたのかわからない、この花びらをただ見つめていた。
自然と涙があふれ出てくる。
もう、一年になるのか……。
君が旅たってからもうそんなに時間が過ぎ去っていたのに、改めて僕は気づかされた。
「もう私の事なんか忘れて」
君が僕にあの時言った言葉。
その言葉の意味を僕は知らなかった。
僕らはずっとお互い、傍にいられるんだと思っていた。
そんな淡い僕の想いは、もろくも崩れ去った。
突然の別れ。
その日が来て、初めて僕はその真実を知った。
遅すぎた。
遅すぎたんだ。
僕の大切な人の姿は、もう誰も知らないところに旅立ってしまっていた。
どうして、あの時僕はこの真実を知ろうとしなかったんだろ。
部屋の片隅でずっと悔やんでいた。
悔やんでも悔やみきれないけど、そうすることで僕は自分を慰めていたのかもしれない。
この花が咲き始めるころ。
この季節がまたやってきた。君が僕の前から消えた季節が……。
まだ僕は立ち直れていない。
だけど、だけど、僕は前に進まなければいけない。
それを君は伝えたかったんだね。
この一片の花びらに、君の想いを込めて。
この花の季節が終わるころ、君が好きだった花の下で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます