この花に

ひとひらの桜の花びらが僕の元に舞い降りてきた。

もう、桜花の季節は終わったはずなのに。

何処から舞い降りてきたのかわからない、この花びらをただ見つめていた。


自然と涙があふれ出てくる。


もう、一年になるのか……。

君が旅たってからもうそんなに時間が過ぎ去っていたのに、改めて僕は気づかされた。


「もう私の事なんか忘れて」


君が僕にあの時言った言葉。

その言葉の意味を僕は知らなかった。

僕らはずっとお互い、傍にいられるんだと思っていた。


そんな淡い僕の想いは、もろくも崩れ去った。


突然の別れ。

その日が来て、初めて僕はその真実を知った。


遅すぎた。


遅すぎたんだ。

僕の大切な人の姿は、もう誰も知らないところに旅立ってしまっていた。


どうして、あの時僕はこの真実を知ろうとしなかったんだろ。

部屋の片隅でずっと悔やんでいた。

悔やんでも悔やみきれないけど、そうすることで僕は自分を慰めていたのかもしれない。


この花が咲き始めるころ。

この季節がまたやってきた。君が僕の前から消えた季節が……。

まだ僕は立ち直れていない。

だけど、だけど、僕は前に進まなければいけない。

それを君は伝えたかったんだね。


この一片の花びらに、君の想いを込めて。

この花の季節が終わるころ、君が好きだった花の下で。

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