ぎゅうぎゅうの満員電車
「嘘、なんで……」
電車の車内、押し寄せられてたどり着いた先に彼がいた。
ぎゅうぎゅうの満員電車。
ふ、触れている。私の身体が彼の身体に触れている。
彼の瞳に私の瞳が写し出されている。
サッとうつむいて目線をそらした。
顔が熱い!
それより何、このドキドキ感。
いつも遠くから眺めることしか出来なかったのに。
今その彼が目の前にいる。
私の唇と、彼の唇の距離。
目測で十五センチ?。
ちょっとまた押されたら重なり合いそう。
「えっ!」重なっちゃうの?
それって、キス、よね……。
また押されないかな。
今、期待した? 事故に見せかけて期待した?
「うん、期待した」
ああ、顔がまた熱くなっちゃった。
でもこんな時、眼鏡って正直、邪魔よね。
仮にまた押されて、彼の顔に近づいても、このメガネが先に触れちゃうんじゃない?
あ、でも大丈夫か。
だ、大丈夫じゃない!
眼鏡にキスされちゃう。
そ、それはあまりにも悲劇じゃないの?
私の唇は、もうちょい下なんだから。
ちょっと上目づかいで彼の顔を見てみた。
目があっちゃった。
「マジ!ほんとに。やばい」
私のこと見ている。
ああ、こんなことなら髪もっとちゃんとして来たかったなぁ。
三つ編みなんて、地味よね。それに眼鏡も……。
でもいつもこの姿。わざと地味に見せてる。
だって目立つの怖いんだもん。
「大丈夫?」
「嘘、私に話しかけてくれたの?」
うそ、嘘、うそ……。感激!
ドキドキしながら小さく頷いた。
だ、だめ、もうだめ。
私の心臓壊れそう。
このまま私の心臓壊れたらどうなっちゃうんだろう?
壊れてもいい?
ああ、なんだろう。この感じ。
このままずっと続かないかな。
ぎゅうぎゅうの満員電車。
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