放たれた銃弾

その一発の銃弾は彼女の躰を突き抜けた。


僕が持つこの銃から放たれた弾丸は、迷うことなく彼女の躰を突き抜ける。

桜の花びらが舞い散るように赤い血が舞い上がった。

茫漠たるこの世界。

今僕が愛した人は、僕の手によってその命のともしびを消そうとしている。


これでよかったのか……?

まだ迷いが僕の脳裏を駆け巡る。

この世界を守るために僕は決断をしなければいけなかった。

彼女の命を絶たねばいけない。その決断を。


そっと彼女の躰を抱き寄せる。

あふれ出る血が僕を濡らす。

彼女は薄れゆく意識の中僕の名を呼んだ。


「これでよかったのかもしれないね」


その言葉を聞いたとき、僕は自分が行ったこの行為に罪悪感を持った。

彼女はすべてこうなることを予期していた。

そしてこうなるように仕組んだのではないのか?


心より愛した人を僕はこの手で撃った。


「どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」

「僕は、僕は……」

「これは私が選んだ未来。そして道。あなたに罪はないわ」

「やっぱり君はわざと」

微笑む彼女のその顔に、僕のあふれ出す涙がこぼれ落ちる。


暖かな日差しの中、そよ風が桜の花びらを舞い上がらせた。


何処でその願いは、すり替えられたのだろう。

本当の彼女の願いは。


果てしない時という世界の中に、飲み込まれてしまったのかもしれない。

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