終末と僕らの旅路

I田㊙/あいだまるひ

プロローグ 時計の逆回りは止まらない

 ――僕たち情報を受け取る側の人間がそれに気づけた時にはもう始まっていて、気づかないうちに広がったそれは、もう止めようがなかった。


 そのがまず行ったことは、大人を殺すこと。

どうやら目安の年齢は18歳だったようだというのが、SNSの更新状況で分かった。

 大人たちは気づいたら砂になってしまっていて、残された子供たちは大人になると自分も死ぬのだと大人がいなくなって察した。

 力のない小さな子供たちは泣き叫んだ。

 そして、それが起こった1日後の9月2日に抑止力を失った血気盛んな青少年たちは、どうやらタガを外して好き放題しようとしたが、その彼らも砂へかえった。

 その数日後に大人の力を借りられないと生きられない子どもたちは、砂になった母や父、祖父母などに寄り添って死んだ。


 そして残ったのは、そのウイルスに人畜無害であると認定されたらしき少年と少女たちだった。


 はたしてそれが、本当にウイルスだったのかは分からない。

 けれど、どうやら人類を繁栄させる種子を持つ者は淘汰されて、性欲を持たない男だけが生き残ったようだという話が残った者たちの中で同時多発的に駆け巡った。まだ生きていたSNSがいくつかあり、その中の情報だった。

 結局ただ、確実に生きている少年少女は子供を残せず死ぬのだという事実だけが残った。


 日本の人口の内、生き残った550万人前後の少数の少年と大多数の少女たちは、それでもまだ18歳になるまではどうにかすれば生きられるのだという希望を持っていた。


 しかし彼らの命が一ヶ月なのだと分かったのは、全ての時計の針が逆に動きだし、カウントダウンしているようだと気づいたことからだった。

 日付がわかる時計を持っている女の子の、『なんか時計おかしいんだけど笑』という写真付きの投稿がきっかけだった。

 その時計は10月31日から、少しずつ日にちを減らしていっているようで、その数字が本当の日付とのは10月1日。

 大人たちが砂になったその日から一ヶ月後だった。


 なんの前触れもなく大人が死に大多数の少年が死んで、時計の逆回転に何の意味もないと思える者はいなかった。もちろん、『みんなが元に戻る日では?』というポジティブな解釈をする者も少なからずいたが、絶望の方がまさっていた。


 そうして、彼らは絶望の中を一ヶ月泳ぐことになった。

 泳いだ先には、結局砂になる未来しか待っていないと知っていても。

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