ギンヤと太郎

勝利だギューちゃん

第1話

ヤゴ

トンボの幼虫で、池などの水中で生活をしている。

肉食性で、折りたたまれた下あごを伸ばして、

獲物をとらえて捕食する・・・


生きた餌しか食べない・・・かなり獰猛・・・


ヤゴの期間は短い物で数カ月。(アキアカネなど)

普通は、1~2年。(ギンヤンマなど)

長い物は、7年を要するものもある。(オニヤンマなど)


飼うのはとても、難しい・・・

環境も大事だが、餌の確保も大事・・・

共食いもするので、1匹で飼うのが理想だろう・・・


そんなわけで、ギンヤンマのヤゴを捕まえてきたのだが・・・


ヤゴ「おい」

俺「なんだ?」

ヤゴ「お前、名前は何だ?」

俺「先にそっちが名乗れ」

ヤゴ「俺は、ギンヤだ」

俺「まんまだな」

ギンヤ「ほっとけ!で、お前は?」

俺「俺は、太郎だ」

ギンヤ「古いな」

太郎「親に言え」

何でヤゴと会話が出来るのかは、言うまい・・・


ギンヤ「太郎」

太郎「何だ?」

ギンヤ「たまには、いいもん食わせろ」

太郎「贅沢言うな」

ギンヤ「捕まえてきたんだから、責任もて」

太郎「天敵がいないんだからいいだろ?」

ギンヤ「話が違う」

太郎「タガメか、ゲンゴロウでも、入れようか?」

ギンヤ「今のままで、いいです」

物分かり?のいいヤゴで助かった・・・


基本、メダカやオタマジャクシを入れている。

(気の毒だけど・・・)


ただ、良くも悪くも騙されやすい・・・

寿司のネタの、トロやイカも、目の前でピンセットで動かせば、

「生きている」と勘違いして、食べてくれる・・・

ありがたい・・・


そんなこんなで、数か月したのだか・・・


ギンヤ「なあ、太郎」

太郎「何だ」

ギンヤ「俺、そろそろなんだが・・・」

そっか、羽化の時期か・・・


太郎「分かった」

俺は羽化に最適な某を、太郎の住む水槽に差した。

しっかりと、固定をした・・・


ギンヤ「すまないな。」

太郎「いいって」

ギンヤ「なあ、太郎」

太郎「今度は何だ?」

ギンヤ「夜中になるが、見届けてくれないか?」

ギンヤの言うことは、すぐに分かった。


そして、その時がきた・・・


ギンヤ「はじめるな」

太郎「ああ」

ギンヤの体から、新しい体が出てきた。

いよいよトンボ・・・いいや、大人になるのか・・・


羽化には時間がかかる。

野生は安全を確認しても、突然の雨や暴風により、失敗に終わることもある。

もし失敗すれば、そこでジ・エンド。


やり直しはきかない・・・


ギンヤの体が、だんだんと大人になっていく・・・

最初は白かったのが、色づき始めた・・・


そして、完全にギンヤンマになったころ、羽が開いた。

これで、テイクオフだ・・・


ギンヤ「太郎」

太郎「ん?」

ギンヤ「世話になったな。ありがとう」

太郎「こちらこそ、捕まえてきて悪かったな」

ギンヤ「いいって、こうして大人になれたんだから、感謝してるぜ」

太郎「元気でな。早く奥さん見つけろ」

ギンヤ「お前も彼女見つけろよ」

これでお別れか・・・何だか寂しいな・・・


ギンヤ「じゃあ、そろそろ行くわ。玄関開けてくれ」

太郎「了解」

玄関のドアを開けた・・・


太郎「ギンヤ、最後にいいか」

ギンヤ「何だ?」

太郎「お前、クロスジだったんだな・・・」

ギンヤ「分からなかったのか?」

太郎「ああ」

まあ、ギンヤンマでも、クロスジギンヤンマでも、どうでもいい・・・

楽しい夏の思い出だ・・・


ギンヤは旅立っていった・・・

成虫になれば、寿命は一カ月・・・


幸せを祈ろう・・・

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ギンヤと太郎 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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