Part4 空中戦!

 しかし――

 そうすると、〈ラプティック・ブレイブ〉の妙な低スペックが気になった。

 コンバット・テクターにもランクがあり、それは、


  攻撃力(一平方メートルに対する衝撃力の最大値)

  防御力(一平方メートルに対する耐久力の最大値)

  俊敏性(一〇〇メートル走の記録並びに縦横方向への跳躍力の最大値)

  経戦力(エネルギー消費効率並びに装着者の疲労度によって計測)

  特殊性(コンバット・テクター協会の定める基準値を超えた武装やOS)

  拡張性(市販されている武装との互換性)


 を、A~Eで評価し、その合計点数で表される。


 テクストロに於いてはこの点数の規定値があり、それをオーヴァーしないように微調整をする必要があった。


 例えば、俺の〈シャドー・ビート〉は、


  攻撃力 B

  防御力 B

  俊敏性 B

  経戦力 B

  特殊性 D

  拡張性 C

 

と、テクストロに出場するには、微妙な所だ。


 若し〈シャドー・ビート〉で出場する事を考えたら、俊敏性を二つ落として、攻撃力か防御力、経戦力に回したい。


 対して〈ラプティック・ブレイブ〉は、〈シャドー・ビート〉のAIのスキャンだと、


  攻撃力 D

  防御力 D

  俊敏性 D

  経戦力 ?

  特殊性 ?

  拡張性 ?


と、いう具合だ。


 E評価は、コンバット・テクターを着用しない場合の戦闘力という事になっており、警察や軍隊に入ろうと思ったら最低でもこれくらいの力を発揮出来なければいけないとされる基準だ。


 それよりもちょっとだけ上のD評価では、テクストロの予選を勝ち抜く事さえ難しそうだった。


 という事は……何か、見せていない手があるのだろう。


「君も、なかなか狡いな」

「んー?」

「君から仕掛けて来たんだぜ、全力で来いよ」

「やっぱり分かっちゃうかぁ。油断してくれないって、ちょっと困るな」


〈ラプティック・ブレイブ〉は頭を掻くような動作をすると、腰ベルトのサイドバックルから、新しいカプセルを取り出した。又、右腕のコンヴァータに、拡張性のあるスロットパーツを装着し、これにカプセルを装填する。


「着装! スカイブースター!」


 するとコンヴァータから赤色の金属粒子が噴射され、〈ラプティック・ブレイブ〉の背中にグライダーとエンジンユニットが装着された。


 これによって、攻撃力がBに、俊敏性がAに上昇したようであった。

 それと共に、不明とされていた拡張性がCとBの判定を彷徨っている。


 恐らくエンジンユニットと接続した事で、経戦力についても上昇が見られる筈だ。


 スカイブースターを装備した〈ラプティック・ブレイブ〉が、ふわりと浮かび上がる。


 背中から引き抜いた棒が伸長し、打撃用の杖となった。確か、インパルススティックとかいう名前だっただろうか。


「見下ろされるのは初めてな気がするぜ」

「でしょうね。折角、同じ目線になって上げようと思ったのになぁ」


〈アクセル〉は飛行能力を持つコンバット・テクターだ。だが、テクストロに出場する数が、感知サポートに次いで少ない高機動型では、滅多に空中戦というシチュエーションには出会えなかった。


「ま、これも一つの勉強だ。掛かって来いよ、相手してやるぜ」

「むぅっ! 人の事、莫迦にしくさって!」


〈ラプティック・ブレイブ〉はインパルススティックを構えて、俺に向かって落下して来た。


 俺は上空からの一閃を、左のライオットスライダーで受け止める。


 右のライオットスライダーをブレードモードに展開して突き上げるのだが、〈ラプティック・ブレイブ〉はその名の通り、身体を翻して上空へと舞い上がってしまった。


〈ラプティック・ブレイブ〉はスティックを右手に持ち替え、左手で取り出したインパクトマグナムを地上に向けて発射した。


 俺は回避したり、ライオットスライダーで受けたりしながら、前方に飛び込んで回転し、体勢を立て直すと共にデュアルショーターを引き抜いた。


 だが、連射は利くものの射程は短いデュアルショーターでは、スカイブースター装備の〈ラプティック・ブレイブ〉には不利である。


 どうにかして彼女を引き摺り下ろす方法はないものか……。

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