第5話 正義
俺達はそれから牢獄を脱出した。
しかし───。
「いたぞ!逃がすな!」
既に異常に気づいていた騎士達が集っており、俺達を猛勢のままに捕らえようとしてくる。
「ちっ、こっちだ!」
「う、うん」
「待て!」
「追え!追え!」
それから、俺達は街のあらゆる道を走り抜けた。途中から市民にも見つかり大騒ぎとなり、そいつらにまで追いかけ回される羽目になった。
「まて!巫女よ!」
「信じてたのに!」
「早く死んじまえ、バケモンが!」
様々な罵倒が飛び、それを背中で一身に受ける。俺は振り返ることなく、ルインの手を強く握り、ただひたすらに走った───。
「はあ、はあ…………!」
「クソっ、北も西も東も門が閉まっちまってるみてぇだ」
「なら…………」
「ああ、南門に行くぞ!」
「うん!」
そうして、俺達は街の人間の目を欺きながら、決死の覚悟で走り抜けた。
まさに四面楚歌。まるで、世界中が敵に回ったような錯覚に陥る。いや、その通りなのかもしれない。けど、それでも俺は、こいつを守りたい。
その誓いを胸に、遂に南門に着いた。しかし、そこには────。
「やっぱり来たね、ここに」
「…………っ!カナタ…………」
そこには、今までの穏やかさの欠けらも無い、冷徹な表情を貼り付けたカナタが立っていた。
「わざとここだけ、門を開けといたからね」
「御丁寧にありがとよ。なら、そこをどいてくれねぇか?」
「それは出来ない相談、だ!」
カナタは言い切ると同時に抜剣し、俺に刃を振り下ろした。それを俺は間一髪で剣ではじき返す。
「カナタ、やっぱ俺達に協力する気はねぇんだな。
「当然だよ。僕は悪を討つ者。君の前に立ちはだかるのは必然だろう?」
「なんで、なんでだ、カナタ!俺達はいつも三人一緒だっただろ!俺達は親友だっただろ!なんでそのお前が、ルインを見捨てるんだ!」
「彼女の存在は、ひどく危うい。いつ邪神を復活させてしまうかも分からない」
「そんなこと関係ねぇ!ルインは今まで国の人の為を思って動いて来たんだぞ?それにこの仕打ちはねぇだろ!何より、俺達の関係はそんなんで崩れちまうもんなのかよ!」
「一人の犠牲で、世界が救われるんだ!それは、仕方の無いことなんだ」
「てめぇ、本気で言ってんのか!」
「…………全く、本当に上手いこと言ったものだよ。君は、
「───もう、無駄なんだな。こうして言い合っても」
「さあ、来い!」
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