第3話 転機

 カフェを出ると、ルインは一つ大きく伸びをした。


「さて、次はどこに行こっか」

「なっ!まだどこかに行く気なの?さすがにダメだよ!」

「固い事言わないの」

「行くっつっても、どこに行くんだよ」

「そうだな~」


 ルインが人差し指を唇に当てうーんと唸っていると────。




「気持ちわりぃんだよ、クソが!」




 何者かの怒鳴り声が響いてきた。それを聞いた俺達はいち早くアイコンタクトを取ると、早足で現場に向かった。








 声の方へ走ると、そこにはちょっとした人だかりが出来ていた。


「てめぇ、さっきからなんなんだよ!」

「ああ、邪神様、邪神様…………!」

「それをやめろって言ってんだ!」


 見やれば、先程の邪神教徒の老婆がガラの悪いゴロツキに絡まれていた。それに颯爽と駆け出したルインのあとについで、俺達も走っていった。


「痛い目あわねぇとわかんねぇのか!」


 そう言って拳を振り上げるゴロツキの腕を、俺は素早く掴み取った。


「さすがにそれはやりすぎなんじゃねぇか?」

「な、なんだてめぇら!」

「騎士団として、悪事は見過ごせないな」

「こ、こいつ、第一騎士団団長のやつですよ!」


 ゴロツキの一人がそう言うと、そいつらは一歩二歩と後ずさった。


 その間に、ルインは老婆の元へ駆け寄る。


「大丈夫ですか?!」

「あ、ああ、邪神、様…………。お助けを…………」

「大丈夫です、助けはきっと来ます」


 そう言って、安心させるように、ルインは彼女の手を握った。





その刹那、ルインの手には、妙な青い発光が現れた────。





「え、何、これ…………?」


 誰もがその奇怪な光景に唖然としてる中、老婆は唐突に頭を深々と下げ、振り絞るように声を張り上げた。


「お、おお!!!巫女、巫女よ!我らが邪神の巫女よ!!探しましたぞ!」

「なっ…………」


 驚愕に、言葉が詰まる。しかし、ルインの手に現れているあのアザは───。


「…………っ!」


 それを確認したカナタは唐突に動き出し、いち早くルインの手を後ろ手に縛った。


「か、カナタ……?」

「な、何やってんだよカナタ!」

「ハガト、わかってくれ」

「は?何言って…………!」

「どうかしましたか、団長!」


 この騒ぎを聞きつけてか、騎士団の連中がぞろぞろと集結してきた。


「ああ、邪神の巫女を発見した」

「巫女って、王女殿下ではありませんか!」

「今はそんなことはどうでもいい。すぐに彼女をつれていってくれ」

「りょ、了解しました」


 騎士達はカナタごとルインを取り囲み、城の方へと連行しようとしていた。


「ちょ、待てよ!カナタ!」


 俺は騎士達を押しのけようとするが、逆に跳ね返されてしまった。


「くっ…………!」

「ハガト、また落ち着いたら話しをしよう」


 カナタはそう言い残し、去っていってしまった───。


 何が、どうなっているのか。頭が全く追いつかない。

 俺はただ、地面に拳を叩きつけることしか出来なかった。


「なんなんだよ、一体!」

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