第二章 地底と天空 BGM #02 ”dive to freedom”.《014》




 まず憧れがあった。


 かつて存在したその伝説的なチーム名を、コールドゲームと言う。


 どうしてそのような名がつけられたのかは、圧倒的なレコードが物語っている。


 どこにでもある撃ち合いで、少女は彼らに命と人生を救われた。


 だけど彼らはそんな少女をチームには迎えてくれなかった。


 あの時。


 彼らは何と言ったのだったか。


 そう……。






「……、」


 その瞬間、リリィキスカもまた脅威判定を行っていた。ガラステーブルには十字路の状況が表示されており、カナメの銃や道端に転がっているボンベの存在などもマーキングされていた。


 だが、


(撃たれても問題ない、ボンベは車の腹にくくりつけてゼロ距離で爆発したって防弾装甲が食い破られる事はない)


「ソフィア」


 冷酷に、彼女は告げた。


「抵抗するようならまとめて撥ね飛ばしなさい。蘇芳カナメらをフォールしてから財産を奪う形でも、『#豪雨.err』は取り返せるわ」


『あいさー、キスカ様』


 超重量の凶器がさらに速度を増す。今さらカナメ達が左右のどちらへ逃げたところで、マギステルスのソフィアがハンドルを軽く回せば確実に食い潰せる。ヤツらはもう死のラインから外れる事はできない。あの大仰な『#豪雨.err』を隠し持っているとは思えないし、この段階まで来れば持っていても関係ない。こちらのリムジンも甚大なダメージを受けるが、そのまま鉄塊がカナメ達を吹き飛ばしてフォールする。


 が、そこでリリィキスカはおかしなものを見た。


 ガラステーブルのウィンドウの中、大通りのど真ん中でツインテールの少女を抱き寄せたカナメが、片手一本で短距離狙撃銃をこちらに向けていたのだ。


 そんなものではリムジンは貫けない。


 だがカナメの目はまだ死んでいない。


(何が)


 疑問に答えを出すより早く。


 蘇芳カナメの弾丸が飛ぶ。


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