第10話「謎の美少女」
「そこで何してるの?」
!?
振り返ってみると、少女が立っていた。
艶やかな黒の長髪を高めのポニーテールにし、純白のワンピースの裾には綺麗な花柄が舞散っている。
可愛いというより、綺麗という言葉が似合う少女は不思議そうに俺を見つめていた。
海のように蒼い瞳に思わず目を奪われてしまう。
「……では~~。」
!!
我に返る。
やばい。奥ではもうすぐお開きになる様子。
どうしようと慌てふためいていると、少女が俺の腕を掴む。
「…来て。」
俺は少女のままについていった。
そして、離れた所で息を潜めていると、タイミングよく扉が開き、中からはセヴェルと国王が出てきた。
やっぱり…あの2人だったんだ…。
そして、2人は暗闇へと消えていった。
恐らく、自分の部屋へと向かっていったのだろう。
『…行ったか。』
完全に消え去った事を確認し、ため息と共に呟く。
隣を見ると謎の少女はまだ俺の腕を掴んだまま震えていた。
『…もう、大丈夫だ。』
そう言うと少女は顔を上げ、俺の顔を不安げに見つめる。
『…君のおかげで助かった。ありがとう。』
「…!」
そう言うと少女は安心したかのように笑顔を見せる。
『…私はノース。…君は?』
「…わたしは…ノエル。」
『ノエルちゃんか。よろしくね』
ノエルは首を縦に頷き、微笑んだ。
『ノエルちゃんはどうしてここに?』
「…ここは…いては…いけないばしょ。」
悲しげに言う。
『…居ては…いけない?』
どういう事だ…?
『ノエルちゃんのお部屋はあるの?』
ノエルは首を横に振り、人差し指を立て数字の1を表した手をそのまま下方向に向ける。
…下…??
……もしかして………
『……地…下……??』
ノエルは頷いた。
前の俺と同じ場所に居るか、あるいはその類の場所に居るのだろう。
『…っっ…!!!!』
…そういえば…。
散々暴力を振られ、俺は心身共にズタズタにされて来たんだ。
どうして…忘れてたんだ…?
…待てよ?
俺は隣を見やる。
隣に居る、ノエルを。
…やっぱり…
この子も----俺と同じ目に。
『…ひとまず…お…私の部屋おいで。』
「?」
ノエルははてなマークを浮かべながら首を傾げる。
こんなに…純粋な優しい子を。
…流石に、許せねぇわ。
俺はノエルの手を引き、部屋へと向かった。
※※
ノースの部屋。
俺の帰りが遅いと心配した神様は扉が開くと同時に起き上がりこちらを見る。
俺の後について入ってきた少女を見ると鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
その顔が面白くてつい笑いそうになる。
『紹介するよ。この子はノエル。
んで、こいつは…』
ここで俺は初めて気づいた。
そういえばこのジジィの名前知らなかったわ。
どうしよう。今からつける?
えーでもなんか「うせやろお前。やめろよ」みたいな顔してるし…うーん。
『…こいつは……
ハウンド、だ。』
「ハウンドさん?」
『…ああ。』犬種である、アフガン・ハウンドから取ったわ。
我ながらいい名前だろうおい待てお前俺の足を噛むんじゃねぇ。そしてノエルちゃんに対してデレデレすんじゃねぇシバくぞ変態くそジジィ。
「ふふ…」
見ればノエルは肩を震わせて笑っている。
やっぱり『…笑ってる方がいいよ。』
「え?」
あ。…つい…声に…。
「…ありがとう、ノースさん」
…グハッ
なんだこの天使…。
召されそう。
神様仏様こんな可愛い美少女に会わせてくれてありがとうございます。俺幸せです。
「わん(もっと崇めよ)」
お前じゃねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます