第8話「雨」
ここは…何処だ?
また
でも、
それに、前は一面真っ白だったが今はただただ暗闇が広がっているだけだ。
『考えてもわかんねぇや。』
取り敢えず進んでけば分かるやろ。
そんな軽い気持ちで一歩踏み出した。
…すると、なんということでしょう。(ナントカ風)
暗闇の中から一筋の光がそれはそれは道のように照らされていくではありませんか。
なにこれ、むっちゃ綺麗。
『成程な。この光の道を辿ってきゃ出られるっつーわけか。』
思わず口角を吊り上がる。
この先にどんなもんが待っとんのやろ。
淡い期待を込め、俺は走り出した。
着いた先は
『…住宅街?』
家々が建ち並ぶ閑静な住宅街へと出てきたようだ。周辺を見回すも土砂降りの雨で視界が暗く、あまりよく分からない。
一先ずどこか雨宿り出来そうな場所を探そうと目を凝らしてみる。
『此処は…』
知っている。
この道は…
俺の…家がある……場所。
思わず歩を進める。
まっすぐ俺の家のある方向へと歩いていく。
どうやらまだ俺の足は覚えてたみたいだ。
俺は…元の場所へと戻ってきたのか…?
だが、こんな事って…
そして、心に
『…懐かしいな。』
なんも、変わってねぇな。
安心感と寂寥感の入り交じった気持ちのまま、ドアノブに手をかける。
そこで気づく。
『…』
自分の両手をまじまじと見る。
…小さい。
まるで子どものような手。
改めて前を見ると、自分の目線よりずっとずっと高い扉。
『…ははっ…そういう事かよ。』
思わず失笑が漏れる。なんで今まで気づかなかったんだろう。
これは…夢だ。
心の蟠りが解けたのを確認し、ドアノブを捻りドアを開ける。
『ただいまー!!!』
自分の声が家中…いや、街中に響くように、張り上げる。
とある情報によると、これが空き巣とか強盗とかの対策になるんだってな。「家の人が居るからこの家は狙わんでおこう」みたいになるんだってよ。知らんけど。
…しかし、いつもなら聞こえるはずの声は聞こえず、代わりに聞こえたのは、激しい雨が屋根や窓に打ち付けるような「ザーッ」という音だけ。
そもそも、家が暗い。
まだ帰ってきてないのか?
それとも、聞こえてないのか…?
『ただいま…?』
もう一度問いかけた。
『おかあしゃん…?おとしゃん…?』
舌っ足らずな発音で何度も、何度も、居るはずの名前を呼びかける。
…やはり、返って来ない。
『まだ…かえってきてないの?』
靴を脱ぎ捨て、中へと入る。
リビングのドアを勢いよく開ける。
『おかあさん?』
返って来たのは「あら、おかえり」でも「なんだ帰ってきてたの」でもなく。
変な臭いだった。
…俺、
“この臭い知ってる”。
『っ…ぅぐっ…!?』
唐突に嘔吐を催すもなんとか必死に堪え、暗闇の中手探りでスイッチを探し、なんとか電気をつけた。
明るさで目の前がよく見えるようになった。
辺りを見渡してみる。
1番に目の前に飛び込んできたのは、
--母が首を吊って死んでいる姿だった。
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